日々是好日

死ぬまでハッピー!

懲悪バスターズ 感想

 

期間:5月19日~22日(東京)、28・29日(神戸)

劇場:東京芸術劇場プレイハウス、新神戸オリエンタル劇場

あらすじ(公式サイトより):

思わずクスッと笑っちゃう悪霊たちの騒動記―――。
間もなく真夏を迎える大都会の片隅で、今日も今日とて悲鳴が響く。
毎夜毎夜続く悲鳴の正体は、悪霊たちによるイタズラのせいだった・・・!?
そんな中、悪霊退治に立ち上がったのは、ある一人の天才科学者!
――人間(天才)vs悪霊(落ちこぼれ)――
悪霊(落ちこぼれ)たちが巻き起こす、なんちゃってポルターガイストに人間達の背筋が凍る・・・のか!?
悪霊も天才も踊り狂う!サイエンス×ホラー×アクション活劇!!

 

 

さて感想です。

まず、場内アナウンスから悪霊(という名の大樹っちゃんと土屋さん)がしゃべりだすというまるでホーンテッドマンションみたいな演出。プレイハウスは赤い座席とレンガ造りの壁がおどろおどろしい雰囲気とマッチしていて、本当にアトラクションに乗り込んだみたい。

幕が開けば、色鮮やかな光とポップでかっこいい音楽が彩る楽しい世界がそこにはありました。

子どもが観てもわかりやすくて楽しい舞台、それに加えて、大人が観ると子どもに戻れる舞台だなあとも思いました。あれこれ考えるのではなくて、ただ楽しむことだけに集中できる。でも観終わったあとに何も残らないわけじゃない。

テーマパークで遊んだあとみたいな充足感に包まれて、悪霊や人間やロボットの記憶が私たちの日常を支えてくれる。

懲悪バスターズはそんな舞台です。

 

 

この舞台に出てくる悪霊はだめなやつばっかりで、息を止めてる間しか電気を消せないし鍵かけは遅いし憑依できるくらい有能なのに不思議くんだしエリートぶってるのにできることは地味だし。だけど、だからこそ愛おしい!

悪霊だからもう死んでるはずなんだけど、彼らがいちばん必死に生きていた気がする。笑ったり怒ったり悲しんだり悔しがったり、表情が豊か。試験に落ちたくない!ってその一心で試行錯誤するけれど、結局仲間は見捨てられないし自分のことより他人を優先しちゃう。だから落ちこぼれなんだろうけど、優しさを強さに変えることができる悪霊たちがチャーミングで大好きです。

教官はいちいち面白くてとてもずるい。こんにちはー!って叫ぶところ、わかってるのに毎回笑っちゃう。指導者としての愛が根底にあるしすぐ機嫌が態度に出ちゃう教官だからいいんすよ!!!(ここのアミットが好き)

レイヴンは底抜けにポジティブでやさしくて、落ちこぼれ揃いの悪霊免停組の中でもとびっきりの変わり者。ダンスをふわふわ~っと笑いながら踊るのもおっとりしてるレイヴンらしい。だけど情が厚くて、意志は固くて、他人の悪意に流されないのが強さだなあと思います。個人的にアミットに自撮りかどうかを見極める術を教えてるときのアヒル口が好きです。濃い黄色のツナギにもふもふの手と耳がかわいい。モチーフは狼なのかな、と思ったけど、ツナギに入ってる黒のラインが虎みたいに見えるときもある。

アミットは終始動きがぐにゃぐにゃしてて落ち着きがないし捲し立てるみたいに話すのに、すべてきっちり聞き取れるのは演じている勝吾くんの力量なんだろうなあ。オープニングで出てくる瞬間から歩き方ひとつお辞儀の仕方ひとつとってもめちゃめちゃ優雅。赤の高貴な衣装がぴったり。白塗りの顔で口角釣り上げてるのがめっちゃ怖いんですけど、お調子者なアミットが好きです。思ってることをぶわーっと口に出すし試験と友達を天秤にかけて悩むしある意味「ふつう」の感性と正直さを持ってるんだけど、なんだかんだレイヴンに付き合っちゃうからアミットもお人よしなんだろうと思う。時折しっぽを持って歩いてるのがかわいいです。

モイモンは細かい動きが多くてぼそっと話す言葉が抜群に面白いししぐさがとても可愛い・・・。茶色のミトンみたいな手で口もとを押さえたり、肩を縮こまらせてたり、アミットの手の動きを真似てみたり。でもダンスシーンになれば誰よりも大胆に手足を広げていて、そのギャップにやられてしまう。オープニングでセンターに滑り込んでくるモイモンは何度見てもぞくっとします。役者さんとはまた違った方法で空間を支配することのできる方なんだなあと思う。扉が開いて教官を先頭に悪霊たちが出てくる演出だいすき。あの瞬間、もう観客はみんな舞台の世界に捕まる気がします。モイモンは人間観察が好きなだけあって他人のことをよく見ているし、自由気ままだけどちゃんと舘合とレイヴンの仲違いを心配してる。必死に言葉にしてくれる。レイヴンとアミットといる場所はモイモンにとってすごく大事なのかな、と思いました。

ススス・ムシュフシュは常に片足重心で立ってキメポーズしてるのが腹立つくらいにかっこいい!衣装も王子様みたいできらびやか。プライドが高いのに小心者で長いものに巻かれるタイプだしアミットとは違った意味で調子がいいんだけど、恋塚さんの部下たちにレイヴンたちが襲われてるときは自分が差し向けたにも関わらず「えっそこまでやっちゃうの?あっどうしようどうしよう・・・」って止めることもできずおろおろしてるのが、ムシュフシュの優しくて可愛いところだなあと思います。客席降りのシーンで遊んじゃうのもご愛嬌、で済まされそうなのもまた彼の強いところだよなあ。演出家さんは大変だと思いますが・・・・・・。

こんな悪霊たちと出会って心を通わせていくことになるのが、この物語の主人公でもある天才科学者・舘合。

舘合は知ることに貪欲だし未知こそ恐怖だと言いながらも、わからないことこそ面白いっていうタイプだよなあと思う。「楽しい」と「面白い/興味がある」の違いもきちんとあって、悪霊たちとダンスしたあとは「面白いじゃないか!最高だ!」だけど所長に誘われたときは「それも楽しそうですね」なんだよね。

あいつは俺たちと見てる世界が違う、って評される孤高の天才は、変わり者だって言われすぎてそこへの興味は絶ってしまったのだろうなあと思う。悪霊というオプションが強いにしろ、レイヴンは「変わり者だね」と言いながらも関わることをやめないし、悪霊たちにとって舘合の頭脳はどうでもよくて、「天才科学者」として見なかったことが信頼の第一歩だったのかなと思う。舘合はひとりで生きてきたから、誰かに守られたり信じられたり信じてほしいって思ったこともなかったんだろうな。だからレイヴンたちの存在はきっと革命だったし、終始むすっとしてる舘合が最後自然に笑顔を浮かべてる姿が嬉しかった。

でも!私は!高坂を!応援しています!

舘合さぁん、と頼りないけれど、ひとりでやっていける(と思われるであろう)舘合から離れず、研究を金に変えてしまおうとする所長を身を張って止めようとする強さも持ち合わせているのが高坂だと思う。ただ予想外の言動をするわけではないから、舘合の興味をそそる存在にはなり得なかったのかな。でも、最後に「お前はなぜついてくるんだ?」って聞いた舘合が「助手だからですよ」ってあっさり答えた高坂に対して、今までの認識を少し改めてくれたなら救われる。舘合は自身の研究以外には無関心な反面知ることの大切さは知っている(のか、レイヴンたちと出会って気づいたのか?)から、自分を助けよう守ろうとしている高坂の存在にもきちんと向き合ってほしいです。舘合さんの相棒ポジションは高坂派です。悪霊組に見せる笑顔を高坂にも向けてくれる日が来るといいな。

そして人間サイドと言えば恋塚さん。当て書きかな!?と思うくらい土屋さんの魅力全開の濃ゆいキャラクターで、終盤では恋塚さんが出てくるだけで笑いがこみ上げてきました。紫のコートに金ぴかの靴。このどぎつい衣装をここまでスマートに着こなせるひとが土屋さん以外にいるでしょうか。長いコートの裾を払って歩く姿が気持ち悪くて(褒めてる)、いちいちポーズをキメるのがおかしくて(とても褒めてる)、恋塚さん最高でした。自分では何もできないいわゆる小物キャラなのに、存在感がすごい。100分の間で恋塚さんがなぜあんなにも部下を従えることができるのかというカリスマ性を見せつけられた気がします。しかも舘合の発明を見つけたからオーメンを廃棄してしまうのかなと思ったのに、たとえハイコストでもお払い箱にはしないところに愛を感じました。まあ、ただトドメを刺せるのはオーメンだけだからという理由なのかもしれないけど。部下を「愛くるしい奴らよ」と言ったり、手駒以上に思える情があるひとなのかも。電源が落ちてしまったオーメンの頭を叩くシーンや「オーメンの吐息がすごくて!」ではメタ的な楽しませ方もしてくださって、現実とフィクションの狭間でにやにやしてしまいます。この方に関してはどろどろとした思惑も裏切りも何もなくてただただ金儲けのために突き進んでるさまが清々しくて観ていて気持ちがよかったです。恋塚さんの部下たちも最初から最後までずーっと舞台上で動いていて、いろいろ不憫な目にも合うのに社長のご指示通りにひたすら頑張っているのが和んでしまいました・・・悪者ポジションであるはずの恋塚さんが憎たらしくないのはこの4人組がいたからかも。この舞台のスパイスでもあるし優しさの骨組みを作ってくれてる存在でもあるなぁと思います。

さてオーメン。個人的に、ダークホースでした。こんなに好きになるなんて思っていなかった。演じる大樹っちゃんが作演を務めていることもあり、あまり出番はないのかなと思っていたし、ダンスも少しあれば嬉しいなと期待していたくらいだった、のに!暗転が明けたらそこにいるし、ダンスもがっつり最初から最後までするし、アクションはクライマックスにあるし。オーメンには感情がないから感情移入も何もないのだけど、応援してしまう自分がいました。毎回毎回、今日こそはオーメンが勝つんじゃないかな?と思ってしまう。ロボットであるオーメンは恋塚さんの命令だけがすべてで、それを遂行することを躊躇わないし結果どうなるかなんてことも考えない。だから薬を奪えって言われたら部下を引っぺがしてでも手に入れて恋塚さんに差し出すし倒れても起き上がる。オーメンが壊れてしまいましたーって私も恋塚さんと一緒に泣きたい。登場人物のなかで唯一「モノ」であり、当たり前だけど誰からも情を向けられないオーメンがとても切ない。完璧に強いだけじゃなくて、忠実でプログラミングによって動いているがゆえに少し抜けているところもあるオーメンだからこそ、こんなに愛おしく思えてしまうんだろうか。動きがひとつひとつ大きくて直線的なのが迫力あってかっこいいです。

 

ダンスシーンの話。

大樹っちゃんの書く丁寧な物語運びにダンスシーンがアクセントとして嵌っていて、違和感も何もなくすんなりと観ることができた気がします。

舘合と高坂のダンスはきらきらさわやかで、最初の舘合のソロダンスはかっこよすぎて私の中の高坂が「舘合さーん!!」と叫ばすにはいられませんでした。スカした顔で踊っているのがかっこいい。さすが舘合さん。悪霊たちのコミカルなダンスと恋塚さんたちのダークなかっこいいダンスは対照的で、オープニングから価値観をひっくり返される。

オープニングでむすっと無表情で踊ってる舘合が、悪霊たちとの気合い入れダンスではにんまりと笑みを浮かべているのが、この人実はとてもわかりやすくて正直なのではないかと思わされました。何を考えているのかわからない、見ている世界が違う、なんて言われてるけど、興味を持ったら一直線だし自分の行動に嘘はつかないし面白いときはきちんと笑う。それを開放させてくれたのが悪霊たちなのかなぁと思います。この気合い入れダンス、何回観ても元気になるしこっちまで笑ってしまう。楽しそうな人たちを見るとそれが伝染するものなんだよなあ。色とりどりの照明がパーティーみたいで好き。

モイモンとムシュフシュによるセッションは毎回ライブかな!?ってくらいの盛り上がりで、拍手も歓声も起こっちゃうし、目まぐるしく展開していくアクションが本当に気持ちいい!この演出考えたひと天才だな!だれだ!→大樹っちゃんだ~~~!っていう茶番をよくやります。ムシュフシュがエアギターをぶっ壊しながら部下たちを威嚇するシーン何度見ても笑うし、ヘドバンしてノってるの最高だなと思う・・・強い・・・。このシーンのきっかけにもなる床をひっかくところで得意げな顔して笑ってるのも好きです。モイモンの単発的にしか使えない憑依の技をこうも上手く使ってくるか~!と感心してしまうシーン。照明も緑と黄色できれい。個人的ポイントとして、最後の方の花塚くんの飛び上がりながら棒を振りかざすところが大好きでいつも見ちゃいます。

エンディングダンスでは、恋塚とオーメンダンスでいつも胸が熱くなってしまう。恋塚さんに操られるみたいにしてオーメンが仰け反るところが大好きで、オープニングだとそのままステージ後方に消えてくオーメンの後ろ姿にどきまぎするんだけど、エンディングはふたりで踊りだすから*pnish*好きとしても恋塚オーメンコンビ好きとしてもわくわくします。踊りだすときに互いに指をさし合うところ、一瞬だけオーメンの口もとに感情が宿る気がして、人間なのロボットなのってどきどきする!こういうカーテンコールの、キャラクターと役者さんが混じってる感じが好き。でもアミットはずっとアミットで、それも好き。

 

 

長々と綴ってしまいましたが、もうとにかくめちゃめちゃ楽しかったんです。今まで生きてきていちばん楽しい4日間だったのではと本気で思ってます。

私は大樹っちゃんが描く世界の派手さとか、優しさとか、丁寧さとか、でも甘ったるくないところが好きで、懲悪バスターズには「楽しい」がいっぱいいっぱい詰まっていて、また今回も、というか今まで以上に大好きな作品だって心から思えていることがたまらなく嬉しい。

大樹っちゃんが先頭で走りながらたくさんの人と一緒に作り上げてきた舞台を観て、紙吹雪が舞うステージの上に立つ姿を観て、なんて誇らしいんだろうと胸が震えました。こんな気持ちを今まで知りませんでした。また好きになっちゃったなぁと頭を抱えています。とても幸せです。

懲悪バスターズに出会えてよかった!

 

神戸公演ではまたどんな風に観えるのか、とても楽しみです。

引き続き、大成功しますように!

 

 

懲悪バスターズ 前夜祭

 

2015年6月30日、ネバー×ヒーロー東京千秋楽。

ネバー×ヒーローはとても楽しく、楽しすぎて劇中に何回か泣いたし、終演後は周りの女の子たちが「久々にこんな楽しい舞台観たかも」と囁きあう、そんな作品だった。

その日、私は客席で4回目の観劇を終え、充足感に浸っていた。それはカーテンコールでの発表だった。

 

「WBB vol.10が決まりました! 次回もここ東京芸術劇場で、しかもいつもより大きなホールでやります!」

 

大劇場でやってるかもしれませんよー、それはないか!なんて笑っていた声を今でも思い出せる。

私の懲悪バスターズは、あの日あの瞬間から始まった。

 

 

D-roomの初日にタイトルと日程と大樹っちゃんが作演を務めることが発表され、リビング初日にキャスト第一弾が発表され、追加キャストに土屋さんがいて驚き、そうやって少しずつ、このお祭りは目に見えるかたちとして私たちの前にちらちらと現れてきた。

お祭り。公式からもさんざん言われていることだが、今回はWBBの10回目記念公演でありド派手なお祭りなのである。

そんなお祭りの、プロデューサー兼脚本家兼演出家という肩書きを一手に引き受けているのが私の大好きな役者さんだ。

初めての脚本作品でもあるアヤカシ奇譚で、最初は主人公を務めるつもりのなかった大樹っちゃんがそのとき演出を担っていたきだつよしさんに勧められ「そこまで責任を負わなきゃだめだよな」と思い安曇優を演じた、というエピソードがとても好きなのだが、それをふと思い出した。

今回の経緯はわからないが、背負うことにしたんだなぁ、と思った。いま大樹っちゃんの肩にかかっている責任はどれほど重たいのだろう。

 

ロンドンブーツ1号2号田村亮さんがご出演する影響か、製作発表があったり雑誌や新聞やワイドショーに取り上げられたりいろいろな媒体で取材を組まれたりと驚くこともたくさんあった。

特にスッキリに大樹っちゃんと瑞樹さんと亮さんが出たときは信じられなさすぎて夢かと思った。日ごろ私から大樹っちゃんの知識を植えつけられている友達が数名、テレビ画面の写真とともにLINEをくれたりした。まさか「天の声さん!」という台詞を聞くとは。今後ともスッキリを贔屓して生きていこうと思う。

新聞に載ることやテレビに映ること、それ自体も当たり前に嬉しいのだが、それよりももっと、大樹っちゃんの作っている舞台がたくさん期待されていろんな人の目に触れるんだと実感できたことが嬉しかった。

それはとても怖いことでもあるのだけど、ネガティブな私にしては珍しくわくわくした。さまざまな層の人たちがそれぞれの期待を胸に観る舞台、その先頭に立ってキャストさんやスタッフさん、そして私たち観客を引っ張ってくれる存在が大樹っちゃん。この場面で熱くならない方が無理だ。

 

たくさんの人が、大樹っちゃんが頑張っていると言う。私もそう思う。けれど、口にするとこんなにも簡単な「頑張る」がどれだけ大変で、どれだけすごいかということを、私はいつもつい見失いそうになってしまうのだ。

周りに「あの人は頑張っているなあ」と評される働きは、その内側に驚くほどの苦労を伴う。

だから、頑張れるひとはすごい。すごくて強い。どこへでも行けるし、たくさんの人が助けてくれるからひとりじゃできないようなこともなんでもできる。

努力すれば必ず報われるなんて嘘だけれど、努力しないと報われない。そういえば、「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし成功した者はすべからく努力しておる!」が大樹っちゃんの座右の銘だ。

私は大樹っちゃんの「努力の天才」なところを尊敬しているし、ひたすら前を向こうとする姿勢がいつだって眩しい。眩しくて目が痛いのに見ていたいのだから、やっぱり好きなんだろうなと思う。


 

懲悪バスターズを明日に控えたいま、私は感謝の気持ちでいっぱいだ。

10回目記念公演で、お祭りでたくさん盛り上げてくれて、大きな劇場でWBBを観せてくれて、期待させてくれて、わくわくさせてくれて、舞台が開幕する前からこんなに幸せな気持ちにさせてくれて。

もう、たくさんのひとにお礼を言いたい。なんなら関係者だけじゃなくて世界中のひとにありがとうを言って回りたいし優しくしてあげたい。

この舞台は、大樹っちゃんの覚悟だとか熱だとかこだわりが詰まった、勝負の作品なのかなと思う。この1年は勝負の年だとお誕生日にブログで書いていたが、懲悪バスターズはその中でも大きな意味を持つ作品なのだろう。

でっかい勝負を仕掛ける大樹っちゃんの、なんとかっこいいことか。そしてそれに携わることができる私たちファンの、なんと幸福なことか。

私はまだまだ新参者で、大樹っちゃんが積み上げてきた歴史を、誰かの言葉や映像によって作られた記録として観たり読んだり聞いたりすることしかできない。実際に体験することは不可能だ。

だけど、明日から始まるこの懲悪バスターズという舞台を、大樹っちゃんが「これが今の自分です」と記す舞台を、劇場に足を運んで観ることはできる。明日抱く感想は私だけのもので、誰の情報や意見にも左右されない。

ほんとうに、いま、佐野大樹さんのファンでいられることがしあわせだと思う。明日、1/800になれる幸せを私はきっと一生忘れない。



WBB10回目記念公演、おめでとうございます。

懲悪バスターズが多くの人の目に触れて、たくさんたくさん愛されますように。

この舞台を構成する全員が、楽しい!って笑えますように。

大大大成功、しますように!

 

舞台『リビング』 感想

期間:3月2日~7日

劇場:赤坂レッドシアター

公式サイトに載っているあらすじはこんな感じ。

主人公・マタロウは、会社を辞めて家に引き籠っている。
不動産屋の営業をしていた彼は、客のクレームに耐えきれず現場から逃げ出したのだ。
しかし、彼が逃げ込んだ筈の家の中も、様々な問題に溢れていた。

無職で呑んだくれの父親、長年付き合っていた恋人、出て行った母、そしてその愛人、 職場復帰を説得しに来た不動産屋の二代目、 クレーマーだった客までやってきて…混乱の極みに達した家族の問題を解決するのは誰か。
喧騒の中で、家族の愛が燦然と輝き始める……かも知れない。 

 

さて、感想です。

作演が荻田浩一さんということで、私の中では「ニジンスキー」のイメージが頭を占めていました。耽美!性!愛!美!みたいな。

でも幕が開けてみると、そんなことはなかった。薄暗い感じはあるし悲壮感漂ってるし視覚的に楽しめる美しいシーンも盛りだくさんだけど、コメディかって言われれば首を傾げたくもなるけれど、私の持つイメージは壊されたかな、と思います。

主人公のマタロウは2階にも上がれず現実から目を背けてリビングで生きているわけだけど、それこそマタロウの生を止めていることになってて。だからその場所を出ることが、時を進めることになる。

このテーマって先日観たポンコツバロンの「回転する夜」にも通ずるものなんだけど、向こうのノボルが「俺の部屋」を出たことによってきちんと生きていく道を選べたエンディングに比べて、このマタロウがリビングを出るってことは結構残酷で、でもまたリビングにいるマタロウを見れるってところで救いを見出せた気がしました。

 

マタロウも、ミヨさんも、ミツオも、あの家族はたぶんみんな逃げる人ばっかりだったんだろうな。と思う。

夢見がちというか、みんな現実から逃げて見たくないものから目を背ける。それで何かを失っても、失ったことさえ認めたくなくて、また逃げる。

でも放っておけない魅力がそれぞれにあるから、ショーちゃんもシズカちゃんもあの家に通ってしまうんだろうなあ。

私はこの話を愛がテーマの話だとは思わなかったけれど、結局は愛に支えられてる話なんだろうな、と思った。行動する原因のまんなかに愛があって、「しょうがないじゃない、愛してるんだから」って言われてる気がした。

愛してるから守る、愛してるから何も言わない、愛してるから隠蔽する。それがどんなに不道徳でも、愛が理由ならそれをやめさせることはできなくて。でもやっぱり、それを正す理由もまた、愛なんだよね。

 

この家族のリビングに入ってくる4人もキャラが濃かった!

ショーちゃんはミヨさんの愛人でミヨさんを愛してるけどそれを通して息子のマタロウにもたぶん愛情を向けていて、これは演じてる大野さんが透けてるのかもしれないけど、所作がひとつひとつ流れるようにしなやかで綺麗。ふと左耳のピアス?を指でなぞるしぐさがセクシーだったなあ。お人好しで、愛することを怯えないひと。最後のタンゴではミヨさんやシズカちゃんを相手にしているときももちろんだけど、存在しない相手を見つめながらひとりで踊ってる姿が美しかった。舞台上でたくさん笑うし場を明るくもするのに、どこかずっと切なくて悲しいひと。白シャツに黒ズボンが大正解すぎた。

シズカちゃんはパワフルでキュート!まさか荻田さんの舞台で聞くとは思っていなかった単語をたくさん聞けて面白かったなあ。セーラー服は丈が短くてどきどきしてしまった。心の中で何回も「かわいい!」って叫んでました。足さばきや体の使い方がダイナミックで見ていて気持ちよかった。そんな大胆で自分に正直なシズカちゃんだけど、マタロウには可愛い100パーセントで接さないのが逆に可愛い・・・。マタロウを救った愛はシズカちゃんのものが強かったんだろうなあ。

ハットリさんは、ずるすぎた!さすがの飛び道具だった!声が大きすぎてびっくりした!神経質で典型的なオタクで見ていて気まずくなる感じが心地よかったです。恐ろしく順応力が高いし、するっとリビングの内側に入っていて驚く。でもそれがたぶん空気を読まないハットリさんの特性で、あの舞台の色を鮮やかにしていたのはハットリさんなんだろうなあ。ノビさんと一緒に中盤から登場して動きを加える、まさにスパイス的存在でした。

そして、ノビさん。やっぱり目で追ってしまったし、意識的に「この人はどんな人かな」と観察してしまったんだけど。なんというか、この7人の登場人物のなかでいちばん「外」の人だなあと思いました。ご近所さんだし元上司だしマタロウとシズカちゃんの元家庭教師でもあるのに、たぶんあの中でいちばん場に順応してなくて状況を理解してない。だから、そういう意味ではいちばん観客に近いんじゃないのかなあ。ノビさんの表情を追ってるとほんとうに隙がなく困惑してて、ずっと楽しいです。ツッコミしてたり巻き込まれたりミツオさんに叩かれたりショーちゃんに叩かれたりわりと散々で、でもすごく良いポジション! でも、ノビさんはドラえもんで言うところの「のび太」だから「しずかちゃん」に恋をしてるんだけど、この舞台において主人公はのび太じゃなくてマタロウだから結ばれることはないんだよね。それをノビさんもわかってて、シズカちゃんに気づかれるような素振りも見せないし、諦めてる。だってあのふたりお似合いじゃん、って笑うことができる。これも理由はきっと愛なんだよなあ。この愛はシズカちゃんへ向けてるものだけじゃなくて、元教え子で部下でもあるマタロウへの愛もあって。マタロウからシズカちゃんを奪えない臆病な人なんじゃなくて、自分の気持ちよりも好きなひとの幸せを優先できる強いひとだ、と思いたいです。

 

長々と綴ってしまったけれど、これからの観劇で感想が変わりそうな気もする。そしたら加筆します。

舞台『リビング』、たくさん考えさせられるしたくさんの感情をもらうことができました。

またひとつ、すてきな舞台に出会えて嬉しいです。

 

D-room9に寄せて

1月21日から24日までの4日間、全11公演。ザムザ阿佐谷にて、佐野大樹さんのバースデーイベント・D-room9が行なわれた。

このイベントはタイトルについている通り今年で9回目で、私が参加するのは2回目だった。

コンセプトは、「お友達である大樹っちゃんのお部屋に遊びに行く」。だからお部屋に入るときは靴も脱ぐし、大樹っちゃんもかなりフレンドリーに接してくれるし、お見送りまである。今年は初日限定で手作りブレスレットのプレゼントもあった。

お友達の秘密は守らないとだめ、ということで詳しくは書けないけれど、思ったことをぽつぽつと記していきたい。

 

まず、初めて全通というものをした。

本当にずっと阿佐ヶ谷にいた。1日3公演だと間隔も狭いから、近くにあるケーキ屋さんに4回くらい行った。

背もたれがないから腰は痛くなったけど、本当に楽しくて楽しくて、最中はまったく気にならなかった。

こんなに短期間でたくさん、しかも濃密に大樹っちゃんを観続けたのは初めてで、ずっとどきどきしていたし、ふわふわしていたし、なんだか幸せだった。

知っていたはずなのに、こんなに好きだったんだなあって不思議な気分になったりもした。大樹っちゃんが笑えば私も嬉しかったし、そうじゃなければ私も勝手に切なくなったりした。

今まで断片的に「こうかな?」と思って集めていたイメージが、パズルのピースみたいにひとつひとつ嵌っていく感覚があった。

まだまだ新参者な私は、初めて知る一面にびっくりしたり、やっぱり好きだなと思ったりした。思えば、本格的にのめり込んだ4月から、舞台以外の場所で大樹っちゃんの人柄に触れる機会はこれが初めてだったような気がする。

 

大樹っちゃんは、強い人だと思っていた。

今の私とそんなに変わらない年齢で演劇ユニットを作って、舞台に立って、役者のお仕事をして。それだけで尊敬してしまう。

滑舌が悪いとか、*pnish*のなかでお芝居が上手くないとか、そんな風に言われて、本人もそう言っていて、私はそんなことを思ったことはなかったからよくわからなくて、聞くたびに少し悲しい気持ちになっていた。

正直、今もよくわからない。私は大樹っちゃんのお芝居が世界でいちばんだと思っている。

だけど、大樹っちゃんの言う「芝居が上手くない」は、そこで終わりじゃないんだなあって気づくことができた。

芝居が上手くない、から、もっと上手くなろう。他の武器も磨こう。っていう意思を受け取って、飲み込めるようになった。

ファンをやってきて、大樹っちゃんが頑張ってくれる人なのは知ってたし、だから信じてついて行けるし、常に前を見てるところが好きなんだな、と改めて感じた。

4日間で見てきた大樹っちゃんは、ファン想いで、あったかいひとだった。

本当に1秒の隙もなくずーっと、このひとのファンでなんて幸せなんだろうと思っていた。

笑ってる顔を見ながら、目の前に立つ姿に緊張しながら、小芝居で懐かしの役たちに出会いながら、ゲストさんとのお話に笑いながら、ピアノを聴きながら。何度も思った。幸せだった。

私は常々、大樹っちゃんに元気とか感動とか、たくさんの明るい感情をもらっている。どう返したらいいかもわからない。舞台は観に行くけど、応援するけど、そうすればまた何倍にもなって「楽しい」が返ってくるから、結局いつも私が貰いすぎる。

感謝したいのも、恩返ししたいのも、いつもこっちの方だ。ありがとうは私の台詞だ。でも、そうやって言葉にしてくれる大樹っちゃんだから、こんなに好きなんだろうな、とも思う。

 

個人イベントは、すごい。

ゲストさん目当てのお客さんももちろんいるけど、会によっては本当に大樹っちゃんのファンしかいない。みんなが大樹っちゃんを好きで集まってる。

それが嬉しくて、やっぱり大樹っちゃんは愛されるひとなんだなあって再認識させられた。

私は私が大樹っちゃんを好きなことが何よりの自慢だから、世界中のひとにこんなにすてきな人なんですよって教えたくてたまらない。

これから先もずっと、ずっと、たくさんの愛と、幸福に恵まれていてほしい。

 

3月にはリビング、トラベルモードと続いて、5月にはWBBで脚本と演出のお仕事が控えている。ハピパニや*pnish*の本公演もある。

この1年、昨年以上にたくさんたくさん活躍を見られそうで今から楽しみだ。

きっとそのたびに、「今がいちばん大樹っちゃんのこと好き!」と思うんだろうなと予想している。たぶん当たる。

 

最後に。すてきな4日間をありがとうございました。

37歳の大樹っちゃんが、どうか幸せでありますように。

大樹っちゃんのファンでよかった!




2016.01.26

2016.02.21 加筆