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サムライモード 感想

 

*pnish* vol.15 『サムライモード』

期間:9月24日~27日(東京)、10月1・2日(神戸)

劇場:サンシャイン劇場新神戸オリエンタル劇場

あらすじ(公式サイトより):

いつかの戦国の世。
「伊那家」が「羽生家」によって滅ぼされ、
伊那家を支える二将、シスイとサイガが野に散って行くところから、全ては始まった。

この二人を捕らえるよう命を受けたのが、
羽生家の次男、謀反の気があると噂されている凌明。

任務を遂行し、当主である兄からの疑いを晴らそうと意気込む凌明は、
先の戦いで捕らわれていたシスイの従者、ガラクシャに近付くが…。

 

 

さて感想です。

サムライモードと言えば、*pnish*の代表作といっても過言ではないのではないだろうか。14作品ある本公演の中でもサムライモードがいちばん好きという声はよく聞くし、私もストーリーの完成度で言うと一、二を争う作品だと思う。

*pnish*の持ち味であるわかりやすいギャグやどたばた活劇を上手く男っぽい熱で包みこみ、ドラマ性を高くしたサムライモードは、2008年の初演から絶大な人気を誇る。この作品を15周年という節目に再演するという選択をした*pnish*と、そんな彼らのこの15年の演劇界での歩みをサムライたちの生き様と重ね合わせたという今回演出を手がけた鈴木勝秀さん。そして個性豊かな客演陣を迎え、新しく生まれ変わったサムライモードがそこにはあった。

遠い未来。過去のどこかに似た、遠い未来。私たちは、突如としてそんなふわふわと曖昧な世界に放り込まれる。え?サムライモードって時代劇でしょう?ゲネプロの写真を見たときから飛んでいたハテナマークが、佐藤永典くん演じる凌明の叫びによって回収されていく。

がんがん容赦なく鳴り響く爆音、刀を振り回す侍たちにはそぐわない、けれどこのパラレルワールドに生きる『サムライ』たちには不思議なほどぴったりと嵌る洋楽と、恐ろしく美しい照明。あやふやな情報しか与えられていないフィールドなのに確かにびしっと芯が通っているのは、登場人物たちの持つ信念が揺らがないから。

この世界に、余計なものなんてひとつもない。ぜんぶ削ぎ落として、苦しくなるくらいの取捨選択をして、それで初めて、みんながそこに立っている。

シンプルで、まっすぐ。私はこの作品を、美しい、と思いました。

 

 

■サイガ様に見る愛と希望

サイガ様に愛とか希望とかそんなチープな言葉を遣うのは憚られるのだけど、このぺらっぺらに使い古されて軽そうに見えるくせにしっかり光を届けちゃう感じがちょっと私の思うサイガ様のイメージと被る、ような気もする。

まず、サイガ様を語る上で欠かせないツイートがある。

 

演出のスズカツさんによる、初日前日のツイート。

この引用されている2枚の絵は、イギリスの覆面芸術家・Banksyによって描かれた壁画だ。反戦の意味が込められたイラスト。「愛こそ答えだ」という文言と、火薬瓶の代わりに花束を投げようとするギャング。

サイガ様は、銃に花を仕込む。それを発砲し、花が出てきたことに理解が追いついていない相手に「笑えるだろ?」と問いかける。常に飄々としていて余裕を崩さないサイガ様の揺るがない信念がそこにはあるのだろう。

初日、いちばん印象に残った台詞は、ガラクシャがサイガ様に向けた「あなたは人を撃たない!」だった。トラジを人質にとったサイガ様がシスイ様の解放を迫るシーン、初演では「あなたはそういう人だ」と言われていた。無益な殺しを避ける、というサイガ様のアイデンティティは変わらないが、それが今回は強調されていたように感じる。稽古の最初の段階では「あなたは人を撃てない」だったこの台詞が、ガラクシャを演じる土屋さんの判断で「撃たない」に変わったそうで、この一文字の改変がサイガ様の根幹を作ったのではないか、と私は勝手に思っている。

サイガ様は、撃てないんじゃない、撃たないのだ。できないから選ばないんじゃなくて、絶やさない笑顔の裏側にひとつ貫いているサイガ様なりの武士道が、人を殺さないという選択を常にしている。

タンバの台詞で「シスイサイガのふたりといいお前といい、もっと楽に生きられんのか」っていうのがあったんだけど、私はここでサイガ様が並んだのがちょっと驚きで。単純に羽生家に歯向かうなんていうバカみたいな真似をしてるのがタンバには「難儀な生き方だなあ」と思わせてるんだろうけど、なんていうか、シスイ様を不器用な男だって思ってるサイガ様も、器用なひとではないんじゃないかなぁなんて思ったりした。人生を常に楽しく捉えようとするサイガ様だから生きづらさは感じてないだろうけど。

「人を殺すことはしない、だけど戦場に身を置く」ってはたから見るとものすごくつらそうだし、やめちゃいなよって言いたくなるんだけど、たぶんそうじゃないんだよね。サイガ様は「人を殺したくない」じゃなくて「人を殺さない」だし、ここにネガティブな要素はきっとひとつもない。人を殺すのは「面白くない」からっていう、シンプルな考えなのかなって思う。

ただ、どうしても戦場って人を傷つけて傷つけられる場所だからそういう暗さが付きまといがちで、そんな場で手品みたいに花束を次々と出して「どうだ~!」なんて両手広げて笑うサイガ様は、希望のひとなんじゃないかなぁと思う。本当にチープなんだけど、この作品に関しては、こういう良い意味で軽くて明るい単語を遣ってみたい気がする。綺麗事だ、くだらないって切り捨てそうになるものを掬いあげてくれるのが、*pnish*だったりWBBのお芝居だなあ、と私は常々思っています。

実は、初演の映像を観たとき、サイガ様って冷たいひとなんじゃないかと思った。自分にとっての利益で動くひとというか。なんでそう感じたのかは覚えてないんだけど、フラットに見えて付け入る隙を与えないひとだ、と思っていた。

それが、今回のサイガ様を観たらがらっとイメージが変わってしまった。サイガ様は頭がいいひとだから伊那家の上様の心が弱すぎて戦国の世を渡っていけないこともきっと早くから悟っていたし、賢明の策略によって遠ざけられていくシスイ様をすぐ近くで見ていて。口ぶりからして上様ひいては伊那家への情や忠誠心ってあまり高くないような気がするし争いの無益さだって知ってるはずのサイガ様がどうして一揆を起こすんだろうって不思議だったんだけど、自分にはない忠義心と圧倒的な強さを持つシスイ様のそばがいちばん「面白い」って判断したからなのかなぁ。たぶん、シスイ様の強さを誰よりも信じてるのってサイガ様なんだよなぁ。「こいつは強いよ、たぶんこの世でいちばん強いと思うけど大丈夫?」っていう台詞、いろんなものを疑ったり小さな引っかかりさえも逃さないサイガ様が、いちばんだって断言してるのが好き。

このふたりの関係性を表すシーンといえば、「どう思う? 我らがやっていることだ」ってシスイ様が尋ねるところだと思う。どんなに兵力を膨らませたって一揆軍で羽生を打ち滅ぼすなんて到底無理で、それでも何回も何回も繰り返し戦を起こす、その無益さなんて百も承知のシスイ様が、サイガ様にだけ答えを求める。サムライとしての揺るぎなき信念を持って多くの人々に憧れの対象として崇拝されて、実際剣の腕だけじゃなく精神的にもおそろしく強いひとなんだろうけど、強いからって傷つかないわけじゃないんだよね。心の弱かった上様を「だが、お優しい方であった」って謀反を疑われて遠ざけられてもなおそう言えるシスイ様は、きちんと傷つくことのできる、悲しむことのできる、心のやわらかいひとだったのかなぁって思う。そんなシスイ様の矛盾だったり葛藤をきっと知っていて、サイガ様はそこに面白さを見出して受け入れて後押ししてるっていうのが、このふたりの確かな信頼だったり、甘ったるさのない情なのかなぁ。

で、サイガ様を取り巻くひとといえば忘れちゃいけないのがナミキヨ。客席降りでの日替わりシーンが毎回毎回過激すぎて、尊敬の念をこめてナミキヨ先輩って呼んでました。公演期間中、ずっとツイッターのプロフィール欄を「♡三度の飯よりサイガ様♡」にしていたんですが、これもナミキヨを演じていた崎山つばささんがDeviewのインタビューで答えていたコメントから引用させていただいたものです。このフレーズ性の高さ、声に出して読みたい日本語すぎる。

「我が主サイガ様も、シスイ様に負けず劣らずのお方・・・!」と宙に手を伸ばしてみたり、サイガ様の銃から飛び出した花に嬉しそうな顔をしたり、覆面剣士とシスイ様が戦っているときも刀を抜いてサイガ様を守っていたり、頭をなでられてへにゃっと笑ったり、サイガ様へのあふれんばかりの愛と忠義心を持っていたナミキヨ。でも自分の慕うサイガ様に恥ずかしくないよう体力づくりしたり鍛錬を積んでる様子が見てとれて好感が持てました・・・ゴールデンレトリーバーみたいでとっても可愛いのに、ガラクシャと戦ってるときは手のひらに唾吐いて「死ね!!」って叫んだり、ワイルドな面も見せてくれるギャップにときめいたなぁ。そんなナミキヨが自分の指示を受けて走っていく後ろ姿にふっと笑みをこぼすサイガ様も、あー大切だし信頼してるんだなぁって感じられてよかった。とても明るくて、わかりやすくて、でも強い敬愛で繋がってる主従コンビだなぁと思いました。日替わりの客席降り、私は肘としりとりが好きでした!レポはこちら!

 ナミキヨ先輩と居酒屋オールナイトで語りたいし「サイガ様のすてきなところ」っていうお題で古今東西山手線ゲームしたいです!!!!!

長々と語ってしまったけれど、サイガ様の存在は希望ってことです。私はやっぱりサイガ様がいちばん、めちゃめちゃに好きなので、これから羽生家に仕えるっていう選択をしたその先の未来が明るいものであればいいなぁとおもう。おどけて笑ったり、部下にやさしい表情を向けたり、ぎらぎら目を輝かせて駆け出したり、戦友の生きていく道を何も言わず受け止めたり。そんなサイガ様のこれからが、ずうっとずうっと面白いものであればいいなーなんて思ってるし、きっとこの人なら自分の手で日常を彩っていくんだろうと信じてもいる。

思いがけず、本当に入れ込んでしまった。サイガ様に出会えてよかったです。

 

 

 ■凌明とガラクシャが持つ天秤

シスイ様とサイガ様を捕らえるため行動を共にすることになったこのふたりは、どちらも天秤を持っていたように思える。しかも、最初からどちらを切り捨てるか決まっている天秤だ。それぞれの守らなくてはならないものと、お互いの存在。

ガラクシャにとっては主であるシスイ様が何より大切にすべき存在、というか自分の根幹にあるひとで、そのひとの復讐を終わらせるために凌明を裏切る覚悟をする。でもやっぱり心のどこかで凌明を大切に思ってしまって、一度は「お前とは戦いたくねえ」ってぶつかることを放棄しようとする。このときの「ガラクシャ!」って呼ぶ凌明の声が切なかったなあ。この時点でまだガラクシャは凌明を下に見てるっていうか、ただの人のいい甘ったれ、腑抜けだっていう意識が少なからずあると思ってて、でもそれが「戦いてえ」って思うまでに変化するって革命的だったんじゃないかなあ。ずっとシスイ様につき従ってきたガラクシャが、頂点に立つサムライと同等の立場で戦う未来を選ぶってよっぽどだし、この選択を掴ませたのは凌明なわけで。無理やり自分のいるフィールドまでガラクシャを引き上げたみたいな感じすらある。

凌明は強かで、狡猾で、でもすごくまっすぐ前を見る、潔いサムライだったなあと思います。前半はワインを両手で抱えながら走ってきたり「あれほどの武人が自ら名前を汚してるっていうのに平気なんだ・・・?」って悲しそうな声を出したりハイパー可愛くてキーホルダーにして持ち歩きたいくらいだったのに、後半では凌明が吼えるたび空気がびりびり震えてびっくりした。これはもうさとちゃん凄いとしか言えない。個人的には、プライベートで仲の良い大樹っちゃんとさとちゃんがサイガ様と凌明として腹の探り合いをしてる場面を観られたことに胸が熱くなりました。

最初からぜんぶ凌明が仕組んでいたことで、それはそうなんだけど、「お前らと一緒にいると蕎麦食うのも一苦労だな」って呆れ顔のガラクシャに「でも楽しいでしょ?」って笑ったのは嘘じゃないって思いたいし、この会話してるふたりはただの友達みたいですごく好きだったんだよなあ。これはただの妄想というか願望なんだけど、タンバの寺から捜索に出て夜更けにトラジに農民たちの話を聞かされるまで、凌明も心のどこかでちょっとだけ、このままサイガ様とシスイ様が見つからなくてもいいかもって思ってたんじゃないかなあ・・・。そうしたら凌明はガラクシャと友達のまま、日常は変わらないまま。いつか兄上もわかってくれるかも、なんて。でものっぴきならない現状を聞いて、それじゃだめだって覚悟を決めたのかなーと思う。この話の直後に意を決したみたいな顔でガラクシャに「隠してることを教えてくれよ」って迫るのが印象的でした。大切なものをどちらも手放さずにいることなんてできない、どうしても叶えたい夢があるなら何かを切り捨てなきゃいけない。「言っただろう!国を治めるためには、ときには非情さも必要だって」 っていうガラクシャに向けた叫びは、自分自身にも言い聞かせてたのかなあ。

ずっと討つ機会を狙っていた兄が目の前で自害の道を選んだとき、凌明はどんな気持ちだったんだろう。「兄上!!」って叫んだあの声からは喜びなんか一切感じられなくて、兄弟間で玉座を争うご時世ではあってもきちんと情が流れていたんじゃないかなって信じたくなる。賢明は凌明について「まるっきりの馬鹿であればよかったものを!」って言ってたけど、私は賢明こそ馬鹿だったらよかったのにって思った。ただ威張り散らすだけの、自分と弟の力の差すらわからないようなだめな殿様。そしたら、こんな風に怯えて虚勢を張ることも、自分のいちばんの部下すら疑うこともなかったんじゃないかなあ。周りの評価も、父上からの目も、ほしくてたまらない功績も、ぜんぶ軽々と持っていく弟に、賢明はどれほど苦しめられていたんだろう。最期「地獄で見ておるぞ」って笑ったのを見て、ああこのひとはやっと解放されたんだって思った。あんな顔で笑えるし、部下のために戦えるし、根っこはやさしいひとなんじゃないかな。ただ劣等感で目隠しされていて、遠回りが多かったけど。もうそれは取り返しのつかないことだったけど。賢明さまが幸せになれる世界線に行きたいです。

演説の熱っぽさと、そのあとのガラクシャに向ける声の底冷えするような平淡さのギャップが凌明の貫録を引き立てていたように思う。「やるじゃねえか、りょうのすけ!」って言うガラクシャに「私の名は凌明だ」 って訂正するシーン、サムライモードの劇中で一、二を争うくらい好きだったかも。こうやって言うことで、凌明はもう二度と団子屋の三男坊には戻れなくなったんだよね。自分でその道を完全に断った瞬間というか。でも、ガラクシャはそのあとも「俺は、りょうのすけと戦いてえ」って言う。凌明が切り捨てたものを、拾ってしまう。こうやって呼ぶことで、ガラクシャと凌明・・・りょうのすけが一緒にいた時間は嘘じゃなくなったというか。このふたりは同じように天秤を持って出会って、凌明が片方を掴むために片方を捨てたのに対して、ガラクシャは一度捨てかけたものを凌明の分まで掬い上げて、再会のときまで抱え続ける選択をしたんだなあって思う。あのあと橘からガラクシャのことを聞いた凌明は、「ガラクシャらしい」って笑うんだろうか。

 

 

■4人でのラストシーン

初演と大きく変わった点といえば、あのラストシーンだろう。

トラジとナミキヨの後処理はされず、橘がガラクシャについていくという設定も消えていた。桜の花びらが落ちる舞台上には、ガラクシャ、橘、シスイ様、サイガ様という、*pnish*の4人のみ。*pnish*が思いっきり目立つ!という作品ではない今作だが、それでもはっきりと、この舞台は*pnish*という演劇ユニットの、15周年の本公演なのだと思い知らされる。私はそれがなんだか嬉しかった。ゲストの俳優さんたちのファンの方々がどう思ったかはわからないけれど、そういう選択をしてくれたこと、4人だけの終わり方をスズカツさんが示してくれたことを、彼らのファンとしてとても嬉しく思った。私はこの劇場に、*pnish*を観に来た。彼らが責任を背負う舞台を観に来たんだって実感できて、意味がわからないくらい感動した。

春は雪溶けの季節だけれど、あの桜が降り注ぐなかで、彼らの凝り固まった心がほぐれていたらいいなぁと思った。死を覚悟していたのに響いたのは間抜けな音で、ぽかんと驚いていたサイガ様やガラクシャが愛おしかったし、無表情を少し崩して「なぜ助けた・・・!」って悔しそうにするシスイ様は誇り高くて、涼しげな顔をする橘は最高にかっこよかった。薄紅色の花びらが舞い降りる様子を見つめるサイガ様がめちゃめちゃに美しくてこの瞬間を今すぐ切り取りたいって毎回願っていたんだけど、その悲願が10月31日までアニメイトAKIBAガールズステーションさんで叶っているので皆さん行ったほうがいいです!!!!宣伝です!!!!!!あのパネル売ってほしい!!!!!!!!!!!!

ラストシーンといえば、シスイ様とガラクシャだなぁ。「長い間放っておいてすまなかった、辛かっただろう」って語りかけたあの言葉は、謀反を疑われて上様に遠ざけられてしまった自分とガラクシャを重ね合わせたのかなあと少し思った。それまでの切羽詰まったみたいな厳しさがすっかり溶けてやわらかくなった表情と声が本当にきれいで、がくんと膝を折るガラクシャの姿に涙が出た。シスイ様を信じて、救いたくてここまで戦ってきて、最後の最後にあんなふうに声をかけてもらって、この数秒でガラクシャのこれまでは報われたし、この一言がこれからのガラクシャを生かすんだ、と思った。シスイ様とガラクシャは言葉こそあまり交わさないし同じ空間にいる時間もほかの主従に比べて少ないんだけど、それでもどこにも負けないくらいの繋がりの深さを見せつけられた気がする。相手の存在を常に感じているというか。もしサムライモードの続編があるなら、シスイ様の愛刀・童子切安綱がガラクシャの手に渡ってほしいな。鬼みたいに強い男が鬼斬りの刀を振るうところが見たい。

サイガ様と橘が下手、シスイ様が上手、ガラクシャが中央にばらばらに散っていくのがいいなぁと思う。羽生家に仕えてまた戦や政治と隣り合わせの道を選んだサイガ様と、これまで通り凌明に従う橘、タンバとともに仏門に入ってもう戦とは関わらないことを決めたシスイ様、そして、誰かのそばを選ばずにひとりっきりで駆けていったガラクシャ。サイガ様がシスイ様の仏門に入る旨を聞いてるときにそっと背中を向けるのが印象的だったな、そのあと橘についていくときもシスイ様はサイガ様を目で追うのに一瞥もくれなかったり。でもそれはシスイ様への興味を失ったわけじゃなくて、サイガ様なりの別離の仕方なんだなって思えた。サイガ様はシスイ様に「やっと憑き物が落ちたか」って言うけど、おだやかな表情で戦友の選択を受け入れるサイガ様も、何か楽になったのかもしれない。そうだといいな。

オープニングとエンディング、同じ曲の同じ盛り上がりで同じようにガラクシャが一歩踏み出すんだけど、敵に捕まることを受け入れて座り込むオープニングに対して、エンディングではそのままなにかを決意したように観客に背を向けて走り出すのが最高だったなあ。不自由と自由、その対比。もうひとつ、「命尽きるまで戦い抜きます!」っていう台詞、冒頭では討ち死にすることを目的に戦うんだけど、最後は生きるために戦うんだよね。同じ言葉なのに響き方がぜんぜん違う。隣にいるシスイ様とサイガ様の死への意識もまるっと違うから余計にガラクシャの台詞が胸を打つ。私はサイガ様が死ぬほど好きなんだけど、それでも、この話はガラクシャの物語だ、と思う。みんなみんな、ガラクシャによって救われてる。ガラクシャを演じたのが土屋さんでよかったなぁ。

 

 

 

最後に。

サムライモードは、この15年間、演劇界を生きてきた*pnish*の面々の生き様と被るところがあると、神戸1日目ソワレ公演のアフタートークでスズカツさんがおっしゃっていた。自分なりの正義を持って、それを貫き通すためにひたすら走って、その道を信じて、突き進んで、誰かを笑顔にするためだったりなにかを守るためだったり。男らしさと笑いとかっこよさと、一本芯のとおった骨太なこの作品は、確かに、私が*pnish*の魅力として数え上げたいものがぜんぶ詰まっているような気がする。

私は、この先もずっとずっと、全力で舞台上を生きていくであろう*pnish*をこの目で観ていきたい。森山栄治さんと、鷲尾昇さんと、土屋佑壱さんと、佐野大樹さんが大好きだ。そう改めて思わせてくれた今回の本公演が、とても大切です。

改めまして、*pnish*15周年おめでとうございます。これからもたくさんのひとに愛されて、たくさんのひとを楽しませて、4人で顔を見合わせて笑ってくれますように。

*pnish*の未来が明るいものであることを、信じて、祈っています。

 

 

リバースヒストリカ2016 感想

 

期間:7月27日~31日

劇場:品川プリンスホテル クラブeX

あらすじ(公式サイトより):

戦国時代を舞台にした自主制作映画を撮影すべく集まったスタッフ・出演者たち。
お祓いに現れたのは祈祷師…ではなく霊媒師??
ひょんなことから明智光秀を現世に降臨させてしまい、事態は思わぬ展開に・・・。
光秀に立ち向かうべく、撮影クルーが取った行動が戦国事変に拍車をかける!!

天下を獲らんと暴れる武将!
立ち向かうは撮影クルー!?
敵味方入り乱れる騒乱の行く末は・・・!?

 

 

さて感想です。

まず、このリバヒスは何回も再演されてる作品で私も3種類くらい(映像ですが)観ているので、比較しつつ語っていくのが常套かと思います。でも、公演期間を終えてみて、今回は独立したものとして扱いたいなという気持ちが芽生えました。

ということで、過去のリバヒスとの相違点などは特に語りません!

 

このお話って、観るひとの思想とか好みとか気持ちのタイミングによって感じ方がころころ変わる作品なんじゃないかなぁと思う。

主人公は中島なんだけど、その中島が戦国武将たちにどきどきしながらカメラを構えてこの様子を撮影してる、ちょっと俯瞰的な、観客サイドの人間だからかな。信長が「猿が上か、余の技量が上か・・・楽しみにしておるぞ!」って去っていくシーン、中島が小さく「かっけー・・・」って呟くんだけど、毎回めっちゃわかるって思ってたし、なんなら「あれ?私の心の声が口に出た?」って一瞬びびってた。

 

で、私にとっては、秀吉の物語でした。信長を恐れ憧れて、天下人としてのプライドと虚しさを持ち、お調子者でへらへら笑ってると思ったらふと苦しそうに顔をゆがめる、最高にかっこいいおじいちゃん。

私はもともと秀吉を演じてる佐野大樹さんのファンなんですけど、もし知らなかったとしてもこの作品でファンになってたと思う。それくらい大好きで心揺さぶられる役でした。

秀吉の好きなところは、自分が天下を獲るために光秀を騙したって自覚がきちんとあるところ。その上で、それが最善策だったって思ってるところ。光秀や朋希に責められても信長をただ討つだけじゃだめだったんだって語って「それが戦国の世じゃ」ってぴしゃりと言い放って、でも朋希に「あんたを少しでも凄いやつだって思った俺がバカみたいだよ」って言われたら少し驚いた顔をしたり、中島に擁護されても「事はそう単純ではないわい」ってその場から去ったり、どうしようもなく人間らしい矛盾や心の揺れがあるところ。

百姓に生まれつきながらも戦国時代を生き抜いて天下を獲るために策略をぐるぐると巡らして、複雑な想いをたくさん抱えた秀吉が、相手を良い人か悪い人かっていうシンプルな分け方をする朋希に出会って、その若くて力強くてまっすぐな言葉や姿勢に触れることで、少しでも心がほぐれてたらいいなぁ。秀吉と朋希の関係を、10個も年の離れた大樹っちゃんと高崎くんで観られてよかったなと思う。若い撮影クルー組の中に大樹っちゃんがいる今回のリバヒス、とてもしっくりきた。

「露と落ち露に消えにし~」って辞世の句を秀吉が詠むシーンがいちばん切なかった。儚い栄華であったなぁ、って意味のこの句を、憑依というかたちではあるけどこの世に舞い戻ってきた秀吉が信長相手に詠むのが苦しい。後一歩のところで天下を逃していまだに執着している信長よりも、光秀を騙してまで天下を獲ったのにその夢の儚さを知ってしまった秀吉の方が、もう1度蘇ってしまったという点では不幸というか、抱える苦しみがいっぱいあるんじゃないかなぁ。このシーンでのこの句は天下人になった自分だけではなくて、現代で天下を獲ろうとしてる信長にも向けているのかな。悟ってしまう、ってどんなに絶望するものだろう。

自分のしたことを肯定しながら、でも光秀に対して罪悪感や謝罪の気持ちも持ちながら、そんな秀吉が、「自分の意思でございます」って信長に訴える光秀の声を聞くのはどんな気持ちだったんだろう。信長の力に圧倒されていろんなもの背負って戦って苦しそうに俯いて、でも、本能寺のときも秀吉に騙されたんじゃなくて自分の意思で上様を討ったのだという言葉にハッと顔を上げた秀吉の表情を今でも思い出せる。

「おぬしに泣き顔は似合わん、いつでも笑っておれ」っていう光秀の言葉の厳しさと声の優しさが好きだったし、そこで初日は笑ってたと思うんだけど後半になるにつれて泣いてるみたいな呻き声を漏らしたり顔を伏せる秀吉がすごくすごく愛おしくて。秀吉は救われたんだろうか。許すとか許さないとかそういう話ではないけど、光秀と秀吉の双方の心の奥底にあったわだかまりが、少しでもほぐれていればいいな、と思う。

ラストシーンで信長に地面に叩きつけられて「さて、何とするのだ!」って吠えられた秀吉が「お供致します!!」って叫び返すの、最高としか言えない。天下を獲ったことを朋希にばらされて焦って笑いながらぺこぺこしたり、睨まれて縮こまったり、でも信長の体が虚弱であることを知ってがんがん攻撃仕掛ける強かさも見せつつ、最後はやっぱり「上様の家臣」になっちゃうんだよね。いま書いてて思ったけど、あの中で天下人は秀吉しかいないし、「天下人」の顔と「家臣」の顔を両方兼ねてるのも秀吉だけなんだなぁ。信長への呼び名が3種類くらいあって、その中でも「上様」は日本でたったひとりいちばん偉い人にしか使わないんだって話がアフタートークで出ていたけど、秀吉は自身が天下人になって死んだあとも、信長に会えば彼を「上様」とためらいなく呼ぶんだなって刷り込まれた上下関係を感じた。

こんな感じで秀吉に対してはシリアスな面に心掴まれたんですけど、これだけ複雑でかっこよくて苦しいのに自動車に乗りたがって駄々をこねたり見慣れない洋服や靴に目をきらきらさせたり中島の言うこと信じて褒美を取らせようとしたり可愛いところもいっぱいあって、かと思えばまた軽やかに飛び跳ねたりでんぐり返しで受身とったりするからずるいなあと思います! 秀吉おじいちゃん、ずっと背中丸めてるのに光秀と本能寺のときの話するときはグッと背すじを伸ばしててときめきました!

 

 

秀吉だけでめちゃめちゃ語ってしまったんですけど、他の登場人物もみんな大好きなのでひとりひとりコメントしていきます。

 

まず、中島。

小笠原さん、ハマり役だったな~! 秀吉に無礼な態度をとる朋希を必死に庇うのにぜんぜん言うこと聞いてくれなくて「お前、もうっ庇いきれんぞっ・・・切腹しろ!腹を切れ!しねっ!」ってごろごろのたうち回るところと、蘭丸の美しさ伝説を聞くくだりの「だから向こうで座って聞くっつってんだろ!やっちまうぞ!」が好きです。緩急の付け方が上手すぎて何回聞いても笑ってしまう。ツボ。すべてにおいて楽観的だし適当だしなんだか可哀想なんだけど、武将が出てくるたびにテンション上がっちゃうのが可愛いなあと思った。中島が舞台上にいるとほっとする。

信長・大塚。

大塚のときの小動物のような愛らしさから一変、信長めっちゃ怖かった。浜崎(光秀)捜索中に木刀を構えた大塚が肩を固くしてきょときょと周りを窺ってたのと同じ場所で、信長がスッと立ちながら確認するみたいにゆっくり手を握ったり開いたりしてて、数分前とのギャップに目を奪われてしまった・・・。大塚、浜崎に憧れてるというか懐いてる感じがして可愛い。信長も、光秀や秀吉とはまた違った意味でかわいそうで悲しいなぁと思った。たくさんの人に慕われて実力もあってカリスマで天才なのに、部下に「上様から見れば、みな愚か者でございましょう・・・!」って突き放される。必要のないものは壊してきた信長が、律儀さを利用して縛ってきた光秀にそうやって面と向かって歯向かわれるってどんな気持ちだったんだろう。我らの出番はありません、って言われたんだよなあ、この世界に自分は必要ないんだって突きつけられたわけだよなあ。苦しいけど、強くて恐ろしいひとが絶望する状況はとても美しいなあ。「地獄で待っておるぞ」っていう最後の言葉、「あの世」じゃなくて「地獄」なのがいい。

 光秀・浜崎。

秀吉には騙されるし信長には謝り倒しだし勝家には嫌味言われるしひたすら可哀想だなあと思っていたんだけど、蘇ってからは「秀吉に騙された可哀想な家臣」として信長のもとにいたわけで、結構ずるいところもあるのかもしれないな、って友達と話してて気づいた。でも光秀は自分で自分を「可哀想で愚かな騙された男」から脱却させたんだよなあ。自分を殺した農民の生まれ変わり(ってことでいいのかな?)であるところの朋希とまた出会って同じ言葉を投げかけられることで因縁を断ち切る、これも秀吉の言葉を借りれば「果てしなく続く因果」なんだろうなあ。そしてその因果を気づかせるのはいつも朋希なんだな。あと所作の話だけど、腰に差してた刀をすっと抜いてかしずくしぐさが綺麗すぎてまじまじと見てしまった。浜崎のときとは声からして違っていたから、佐川さんすごいなあと思いました!!

勝家・高杉。

ギャップ大王だった!!! 眼鏡かけた神経質っぽい可愛い子だと思ってたら鬼柴田を見事に荒々しく演じていて目を剥きました!!! 勝家と言えばやっぱりひとりでの剣舞(って言っていいのかな)のシーンと幸村との殺陣ですよね。腕とかめちゃめちゃ細いのに一撃の重みが感じられて強そうだった。赤い照明をひとりじめしながら刀を地面にドンッて突き立てるところかっこよすぎて鳥肌立ったなあ。いちいち声も動きも大きいのが豪胆で、でもお顔はハイパーキュートだから、たびたび「んん?」って首を傾げるのが可愛らしくて高低差で耳がキーンとなりました。勝家が最初に名乗るシーンが好き。

 蘭丸・幸田。

蘭丸めっっっちゃ可愛かった。目線の高さに気づいて悲鳴あげるところもそうだし、「蘭丸にはこの着物、ふんっ。好みに合いません」の「ふんっ」が可愛かった。幸田のときはチャラくてだるそうで今時の甘やかされた若者って感じなのに、蘭丸が降臨すると涼しげな美人さんになるからどきどきしました。ブスじゃない蘭丸も楽しいなあ。信長・光秀のちっちゃいものクラブと並んだときの蘭丸さんの細長さ、好きです。どんなに落ち込んでいても信長に声をかけられたら一気に笑顔になるのも素直でかわいかったなあ。

幸村・津田と、川上。

名コンビだった~!!ふたりの温度差が絶妙!! 川上が出てくるだけでみんな笑っちゃうからずるいよね。川上に振り回されながらもひたむきについて行く津田が可愛かったし、ハハーッのキレの良さにびっくりした。津田はどこか抜けてて報われないけど、一生懸命でいい子だ。そんな津田を「津田くん」って友達みたいに呼ぶ高根くんもいい子なんだろうなあと思いました。幸村の殺陣も凛として静かでかっこよかったなあ。

由井野さんと師匠。

由井野さんの小ネタはぜんぶ面白いしゴーストバスターズのTシャツが出オチすぎて笑ったし途中「あれ?なるさんの一人芝居観にきたんだっけ?」って混乱するくらい存在感も何もかも濃くて楽しかったなあ。師匠は野生的になりつつも人間としての尊厳を忘れていないのがよかった!!毛布を前掛けにするシーン大好きだった!!あと木の枝から実?を取って食べるお芝居が上手すぎて見つめてしまいました。

そして、朋希!

根が優しくて、素直で、まっすぐで、正直で、とてもシンプルに物事を考えられる朋希だからこそ、秀吉とああいう関係を築くことができたし、光秀にも真正面から立ち向かうことができたんだよなあ。今回、殺陣や所作に力を入れてるだけあって武将たちはみんな動きひとつひとつに無駄がなくて洗練されてる感じだったんだけど、朋希だけ刀を持つ姿がへっぴり腰で慣れてなくて弱そうなのが目立っててよかった~!そんな朋希が「怖いなあ」って言いながらも刀を手放さないのがぐっときた。他人に「あんたのやってることは間違ってる!」ってきちんと言えるのは優しさだし強さだよなあ。「俺の首、はねなくてよかったの?」っていたずらっぽく笑うのがすごく好きだったし、「あんたが悪い人間じゃないってわかってよかったよ」って朋希が言う秀吉を、私も、善人とは言えなくても悪人じゃないって思いたいなあ。私の気持ちの関係もあるんだろうけど、千秋楽が近づくにつれてどんどん朋希の言葉や表情に熱が増していってる感じがしてぞくぞくした。ついに我慢できなくなって最終日にブロマイド買っちゃったもんね・・・。あと、話にはぜんぜん関係ないけど、売れっ子若手俳優の朋希は、正直者すぎるゆえに事務所からツイッター禁止されててインスタだけやってるか、もしくはツイッターやっててたびたびプチ炎上起こすけどそこに悪気は一切ないからファンもその都度許してそうだなあってゆるゆるっと思いました。

 

 

まとめ。

リバヒス、すっごく面白かった~!! 円形劇場だったから位置によって見えるものや感じるものも少しずつ違ってて、新鮮に楽しめました。

このお話はとても演劇的だなあ、と思う。戦国武将(役)が体に降りてきて、特性や普段の性格とはまったく違う自分になるっていうのが。因果とか因縁とかそういう「繋がり」が話の肝となるこの作品が再演を繰り返して、たくさんの役者さんの体を借りて縁や歴史や役をつないでいくっていうのがとてもしっくりくる。これからもいろんなかたちのリバヒスが生まれるといいなあ。

最後に個人的なことを言うと、WBBの前回作品である懲悪バスターズが面白すぎて「今年もうこの感動やわくわくの気持ちを越えるものがなかったらどうしよう」とか勝手に心配だったり不安だったりしたんだけど、本当に杞憂でした。何度でも言うけどリバヒスめちゃめちゃ楽しかった。最高!って思える作品が増えた幸せを噛み締めてます。大好きな役者さんが作るお芝居が面白いっていちばんの幸せですよね。ありがとうございます、これからも大樹っちゃんについて行きます。

この劇場で、このキャストさんで、この配役で、この2016年に最高のリバヒスを観れてよかった!

 

 

舞台俳優応援スタンス

a2oo879k.hatenablog.jp

 

こちらのブログ記事でこのトピックについて知ったのですが、面白そうなので私も流行りに乗って書いてみます。

項目など参考にさせていただきました。

 


 

■基本情報
・関東在住、実家暮らし

・都内の大学に通ってる

バイトは2つ掛け持ちで週4~6くらい?長期休み中は連勤しがち。あと短期バイトをたまにやったり。



■推し
佐野大樹さん。

演劇ユニット*pnish*のリーダーで、実のお兄さんでありジャニーズの佐野瑞樹さんとのユニットWBBも兼任。

滑舌が悪くて音痴でいっぱいいっぱい、みたいなキャラクターが強い気がするけど、私が生で観てきた限り台詞が聞き取れなかったことはないし、リズムはさておき歌声も好きです。

あと、矢崎広さんを応援してます。最近、玉置玲央さんを応援し始めました。




■好きになる基準
・ハングリー精神が強い

・楽しそうにお芝居をしている

・負の表情が上手い

・ストイック

芝居もっと上手くなりたい!とか、いろんなこと挑戦したい!とか、そういう熱のある役者さんが好きです。全力でやってるのがこちらに伝わりやすいというか。ど真ん中が似合うひとに惹かれます、本人がそこにいることを望んでいるかどうかは置いておいて。

お芝居楽しいーって伝わってくると安心します。応援していいんだなって思う。

耐えるとか怒るとか悲しむとか絶望するとか、そういう暗くて激しくて尖った感情を上手にお芝居として表に出せるひとが好きです。あと、私自身が自分に厳しくあらねばならぬっていう修行僧みたいな感じなので、好きになる役者さんもシビアに物事を見つめていたり自分や他人に厳しくあったり妥協しないひとのような気がします。



■雑誌を買う基準
載ってたら買います。って言ってもぜんぜん載らないのできちんと発売したときに買えたのは1冊だけなんですけど!懲悪の製作発表があったときは新聞もとりあえずコンビニにあったやつは一通り。

あと過去に載ってた雑誌はちょいちょいバックナンバーで集めてます。


■映像を買う基準
とりあえず買う。過去作品もお金に余裕ができたら買う。

ブルーレイが出れば迷わずそっちを買うんだけど、舞台界隈にはまだそんなに浸透していない感じなのでジャニーズのコンサートブルーレイに慣れた目でDVDを観ています。


■現場に行く基準、遠征に行く基準

推しが出てればゲストでもなんでもとりあえず行きます。演出や脚本のお仕事も、仮に出演がなかったとしても関わってるなら行く。

出演舞台は、基本的に全日入ります。土日はマチネに入ったり入らなかったり。初日と千秋楽はマスト。

って感じだったんだけど、懲悪で全通してみたら、土曜マチネの時間帯にバイトしながらそわそわしたり当日券で入ろうか頭抱えたりしなくてもいいのがとても楽だったので、今後はなるべくぜんぶ入ろうかなって思ってます。遠征も楽しいからします。夜行バスは眠れないタイプなのできついけど。社会人になったら新幹線で遠征するのが夢です。

私がいなくても当たり前に舞台は始まって終わるし私が入らなくてもその席には誰かが座るんだろうと思ってるので義務感とかはないんだけど、ただ今は推しを1分1秒でも長く多く観ていたいなあという気持ちが強いのでチケットを買います。今の推しも今の私も、この瞬間この場にしか存在してないので。

今年は年間公演数の8割行ければいいなって目標を勝手に立ててます。

余談ですが、矢崎さんに関しては1舞台1公演を目安に入ってます。矢崎さんのお芝居を観るのは気持ちよくてとても楽しいのでなるべく行きたいんですけど、いかんせんチケット単価の高いものが多いのでお財布と相談しつつ追いかけてます。玉置さんもそんな感じで追いかけたいんですけど柿フェス3回増やしたしイヌの日も2、3回行ってしまいそうだし年末の本公演はどうなるかわかりません怖い!


■グッズ/写真を買う基準
パンフレットはどんなものでも絶対買うけど、客演で出た舞台のランチバッグとかは買わなかったな・・・。パンフは写真のビジュアルよりもテキストが良いと嬉しい。まあだいたいビジュアルもめちゃめちゃいいんですけど(真剣)

WBBの缶バッヂは記念に買うし、pnishの物販で出るものも基本的にぜんぶ買います。

写真は個人のものだとD-roomで販売されるくらいなので買います。いつか客演とかで個人ブロマイドが出ないかなぁって夢見てるけど、どうかな・・・。佐野大樹さんのブロマイドくださいって言ってみたいです。



■プレゼント/手紙について

お手紙は基本的には1日1通。夜に書くとテンションがおかしくなりそうで怖いので、土日はマチソワ間に書いたり。1通1通の文章量はそんなに多くないです。

はじめて書いたときからずっと同じ封筒と同じ便箋なのでなんだか愛着があります。もともと言葉を書くのが好きだし伝えたいことがいっぱいあるので、何通書いても飽きない。最終的には同じことを言っちゃってるのかもしれないけど。アンケートも毎公演出すようにしてるので、よくもまぁこれだけ感想が出てくるなとは自分でも思う。

プレゼントは1公演1つか、期間が長いと2、3つくらい。選んでる時間とラッピングしてる時間が楽しい。



■同厨
関係ないけど私の周りでは「厨」ってワードを使うひとがいないから「同厨」の響きが新鮮だ。

推しが同じでもそうじゃなくても特に気にならないです。好きなひとは好きだしそうじゃないひとはそうじゃない。私にやさしいひとはみんな好きです。

みんな心の中に理想の推しを抱えているから、まぁぶつかることもあるよね、とは思います。



■総合的な応援スタンス

私はゆるやかに長く追い続けるよりも、全力の今を重ねた結果である未来に尊さを感じるタイプなので、とりあえず先のことは考えずがむしゃらにファンをやっていきたいなぁと思ってます。

どんな風に応援しても後悔するときはするし、でもそれを少しでも減らすために日々模索しながら、悩みながら迷いながら、ファンをしています。次のお仕事が決まっている/決まっていないに関わらず、常にこの現場が最後かもしれないって祈るみたいに観に行ってる。どうかまた舞台の上に立つ姿を観れますようにと願って、その姿を観るためにできることをぜんぶしようと思って、やってます。だから結局推しを観たい自分のために頑張ってるだけなのかも。頑張ってるって言葉を遣うのもおかしいけど。

たくさんたくさんくれる元気や幸せや感動のお返しをしたいのにいつも貰いすぎてしまうから、せめてひとかけらでも返せたらいいんだけど、私にできることって舞台を観に行くとかお手紙を書くとかそれくらいしかないんですよね! だからそれをやるしかないんですよね!

今日もハッピーに推しのファンをしてます。ぴーす。

 

柿フェス/いまさらキスシーン 感想

期間:6月2日~26日

劇場:花まる学習会王子小劇場

あらすじ(公式サイトより):

部活!勉強!そして恋愛!あらゆるものに心奪われながら

天才女子高生は今日もひとり、国道4号線をひた走る!

稀代の名優・玉置玲央が魂を捧げる爆走系青春喜悲劇!

 

 

さて感想です。

玉置玲央さんは怪物か何かか??????????

すごかった。すごかったです。追加公演に入ったらまさかの最前列だったのですが、近距離で玉置さん、というか三御堂島ひよりちゃんのミニスカートから覗く黒Tバックとショッキングピンクのセットを上下左右端から端まで駆け回って這い上がる驚異の身体能力を目の当たりにし、開演1分の時点で「やべえ空間にきてしまった」と思いました。

恐ろしいほどに濃密な、ひとりっきりの、特異な空間。まさか30分間で人生が変えられるとは思いませんでした。もうひよりちゃんに会っていなかった頃の自分には戻れない!最高!!

 

せ、す、じ、を、ピン!と伸ばして国道4号線を走るひよりちゃんは、まっすぐで、そりゃもうまっすぐすぎる女子高生。華奢な体型をしているわけでもない31歳の男性が演じているのに、ふとしたしぐさや表情がめちゃめちゃに可愛くて本当に女子高生に見える瞬間がある。

特に男前田先輩とぶつかって恋に落ちるシーンのひよりちゃんがもう可愛くて可愛くてたまらなかった。「・・・よい!かっこよい!」のところ。男前田先輩はなんだかさわやかすぎてむしろ胡散臭いくらいに感じたのだけど、ひよりちゃんの個性が抜群に強いからそれくらいの方が釣り合いが取れているのかも。

終始パワーが強くてエネルギーに満ちあふれたひよりちゃんなのに、先輩の前ではしおらしい声を出すのがほんとうに可愛い。好きなひとの前では全力で可愛くありたいんだよなあ。先輩が受験に落ちちゃったって知ったときの「え?ということは先輩はまだこの辺りに生息している?」って手で口もと抑えるの可愛かった。目をきょときょとさせるのも可愛かった。

ひよりちゃんは真面目な女の子なんだろうなあと思う。ひとつのことに全力投球してしまう。部活に勉強に恋愛に体当たりで、でもだからこそどれを選ぶこともできない。ぜんぶを同時進行することもできない。とんでもなく不器用な女の子は、ひとりっきり。100人超の観客が周りにいるのに、なんにもできない。ただただ、彼女がまっすぐに歪んだ青春を駆けていく姿を観ているだけ。

途中から、拳をぎゅうっと固めて観ていた。正直もうやめてくれって願いながら、それでも目が離せなかった。離したらいけないと思った。大好きになってしまった女の子がバットで殴られて、服脱がされて、ひどいことされてくのを、目撃していた。先輩たちに何をされたのか、考えたくなくて震えているところに「これはレイプだ」って声がしたとき、ドキッとした。さっきの行為を指した言葉ではなかったけれど、もしかして、やっぱり、と絶望が胸に広がっていくようだった。

それでもひよりちゃんは走る。背筋をピンと伸ばして走る。いつもどおり。先輩に会いたくて。てかキスしてください、と呟く声がか細くて、ばかみたいに切なかった。おでこにキスで済ませた先輩は、それでもキスしてくれたんだから優しいのかもしれないけど、私が代わりに殴ってやりたかった。

もう背筋をピンと伸ばさなくていいよ、と言いたいような、そうしないとひよりちゃんは立っていられないのかもしれないと応援したいような、不思議でやりきれない気持ちになった。ひよりちゃんはとても強くて、強いからかなしかった。あの滴る汗がぜんぶ涙だったらもっと救われたのに。どんなに現実が打ちのめそうとしてきてもひよりちゃんは泣かない。いつだって前を向こうとする。

ひよりちゃんの青春は間違っていたんだろうか。痛くて、世間的に見ればきっと失敗だらけで、でも私は、私たちは、ひよりちゃんがどんなに一生懸命に青春を過ごしてきたかを知っている。国道4号線をひたすら走ったひよりちゃんがどんなに美しかったかを知っている。

たったの30分間で、私は三御堂島ひよりちゃんを愛したのだと思う。

 

終演後、ゆびが震えてアンケートを書くのに手間取った。からっぽの舞台にどきどきして、上手く呼吸ができなかった。初めての体験だった。

カーテンコールで深くお辞儀をしながら倒れ込んだひよりちゃんには、もう会えないのだろう。いまさらキスシーン自体はあと2公演あるけれど、私が出会ったあのひよりちゃんはきっともういない。どこにもいない。

こんなに祈るようにお芝居を観たのははじめてだ。色濃い絶望に噎せ返りそうになりながらも、その中に差す微かな希望が泣きたいほど美しかった。

 

そんな本編を終えてアフタートークで出てきた玉置さんは大きな口を開けて笑っていたり緊張している福井さんを気遣ったりお客さんの前で正座したりととても誠実でかっこよくてかっこよくてかっこよかったのがずるかったです。降参。

 

 

本当に、本当に、観に行ってよかったです。ひよりちゃん、またいつか会おうね。

さあ、玉置玲央さんのファンになった人生こんにちは!!!!!!!!!!!イヌの日のチケット取りました超たのしみ!!!!!!!!!!!!!!!

 

懲悪バスターズ 感想

 

期間:5月19日~22日(東京)、28・29日(神戸)

劇場:東京芸術劇場プレイハウス、新神戸オリエンタル劇場

あらすじ(公式サイトより):

思わずクスッと笑っちゃう悪霊たちの騒動記―――。
間もなく真夏を迎える大都会の片隅で、今日も今日とて悲鳴が響く。
毎夜毎夜続く悲鳴の正体は、悪霊たちによるイタズラのせいだった・・・!?
そんな中、悪霊退治に立ち上がったのは、ある一人の天才科学者!
――人間(天才)vs悪霊(落ちこぼれ)――
悪霊(落ちこぼれ)たちが巻き起こす、なんちゃってポルターガイストに人間達の背筋が凍る・・・のか!?
悪霊も天才も踊り狂う!サイエンス×ホラー×アクション活劇!!

 

 

さて感想です。

まず、場内アナウンスから悪霊(という名の大樹っちゃんと土屋さん)がしゃべりだすというまるでホーンテッドマンションみたいな演出。プレイハウスは赤い座席とレンガ造りの壁がおどろおどろしい雰囲気とマッチしていて、本当にアトラクションに乗り込んだみたい。

幕が開けば、色鮮やかな光とポップでかっこいい音楽が彩る楽しい世界がそこにはありました。

子どもが観てもわかりやすくて楽しい舞台、それに加えて、大人が観ると子どもに戻れる舞台だなあとも思いました。あれこれ考えるのではなくて、ただ楽しむことだけに集中できる。でも観終わったあとに何も残らないわけじゃない。

テーマパークで遊んだあとみたいな充足感に包まれて、悪霊や人間やロボットの記憶が私たちの日常を支えてくれる。

懲悪バスターズはそんな舞台です。

 

 

この舞台に出てくる悪霊はだめなやつばっかりで、息を止めてる間しか電気を消せないし鍵かけは遅いし憑依できるくらい有能なのに不思議くんだしエリートぶってるのにできることは地味だし。だけど、だからこそ愛おしい!

悪霊だからもう死んでるはずなんだけど、彼らがいちばん必死に生きていた気がする。笑ったり怒ったり悲しんだり悔しがったり、表情が豊か。試験に落ちたくない!ってその一心で試行錯誤するけれど、結局仲間は見捨てられないし自分のことより他人を優先しちゃう。だから落ちこぼれなんだろうけど、優しさを強さに変えることができる悪霊たちがチャーミングで大好きです。

教官はいちいち面白くてとてもずるい。こんにちはー!って叫ぶところ、わかってるのに毎回笑っちゃう。指導者としての愛が根底にあるしすぐ機嫌が態度に出ちゃう教官だからいいんすよ!!!(ここのアミットが好き)

レイヴンは底抜けにポジティブでやさしくて、落ちこぼれ揃いの悪霊免停組の中でもとびっきりの変わり者。ダンスをふわふわ~っと笑いながら踊るのもおっとりしてるレイヴンらしい。だけど情が厚くて、意志は固くて、他人の悪意に流されないのが強さだなあと思います。個人的にアミットに自撮りかどうかを見極める術を教えてるときのアヒル口が好きです。濃い黄色のツナギにもふもふの手と耳がかわいい。モチーフは狼なのかな、と思ったけど、ツナギに入ってる黒のラインが虎みたいに見えるときもある。

アミットは終始動きがぐにゃぐにゃしてて落ち着きがないし捲し立てるみたいに話すのに、すべてきっちり聞き取れるのは演じている勝吾くんの力量なんだろうなあ。オープニングで出てくる瞬間から歩き方ひとつお辞儀の仕方ひとつとってもめちゃめちゃ優雅。赤の高貴な衣装がぴったり。白塗りの顔で口角釣り上げてるのがめっちゃ怖いんですけど、お調子者なアミットが好きです。思ってることをぶわーっと口に出すし試験と友達を天秤にかけて悩むしある意味「ふつう」の感性と正直さを持ってるんだけど、なんだかんだレイヴンに付き合っちゃうからアミットもお人よしなんだろうと思う。時折しっぽを持って歩いてるのがかわいいです。

モイモンは細かい動きが多くてぼそっと話す言葉が抜群に面白いししぐさがとても可愛い・・・。茶色のミトンみたいな手で口もとを押さえたり、肩を縮こまらせてたり、アミットの手の動きを真似てみたり。でもダンスシーンになれば誰よりも大胆に手足を広げていて、そのギャップにやられてしまう。オープニングでセンターに滑り込んでくるモイモンは何度見てもぞくっとします。役者さんとはまた違った方法で空間を支配することのできる方なんだなあと思う。扉が開いて教官を先頭に悪霊たちが出てくる演出だいすき。あの瞬間、もう観客はみんな舞台の世界に捕まる気がします。モイモンは人間観察が好きなだけあって他人のことをよく見ているし、自由気ままだけどちゃんと舘合とレイヴンの仲違いを心配してる。必死に言葉にしてくれる。レイヴンとアミットといる場所はモイモンにとってすごく大事なのかな、と思いました。

ススス・ムシュフシュは常に片足重心で立ってキメポーズしてるのが腹立つくらいにかっこいい!衣装も王子様みたいできらびやか。プライドが高いのに小心者で長いものに巻かれるタイプだしアミットとは違った意味で調子がいいんだけど、恋塚さんの部下たちにレイヴンたちが襲われてるときは自分が差し向けたにも関わらず「えっそこまでやっちゃうの?あっどうしようどうしよう・・・」って止めることもできずおろおろしてるのが、ムシュフシュの優しくて可愛いところだなあと思います。客席降りのシーンで遊んじゃうのもご愛嬌、で済まされそうなのもまた彼の強いところだよなあ。演出家さんは大変だと思いますが・・・・・・。

こんな悪霊たちと出会って心を通わせていくことになるのが、この物語の主人公でもある天才科学者・舘合。

舘合は知ることに貪欲だし未知こそ恐怖だと言いながらも、わからないことこそ面白いっていうタイプだよなあと思う。「楽しい」と「面白い/興味がある」の違いもきちんとあって、悪霊たちとダンスしたあとは「面白いじゃないか!最高だ!」だけど所長に誘われたときは「それも楽しそうですね」なんだよね。

あいつは俺たちと見てる世界が違う、って評される孤高の天才は、変わり者だって言われすぎてそこへの興味は絶ってしまったのだろうなあと思う。悪霊というオプションが強いにしろ、レイヴンは「変わり者だね」と言いながらも関わることをやめないし、悪霊たちにとって舘合の頭脳はどうでもよくて、「天才科学者」として見なかったことが信頼の第一歩だったのかなと思う。舘合はひとりで生きてきたから、誰かに守られたり信じられたり信じてほしいって思ったこともなかったんだろうな。だからレイヴンたちの存在はきっと革命だったし、終始むすっとしてる舘合が最後自然に笑顔を浮かべてる姿が嬉しかった。

でも!私は!高坂を!応援しています!

舘合さぁん、と頼りないけれど、ひとりでやっていける(と思われるであろう)舘合から離れず、研究を金に変えてしまおうとする所長を身を張って止めようとする強さも持ち合わせているのが高坂だと思う。ただ予想外の言動をするわけではないから、舘合の興味をそそる存在にはなり得なかったのかな。でも、最後に「お前はなぜついてくるんだ?」って聞いた舘合が「助手だからですよ」ってあっさり答えた高坂に対して、今までの認識を少し改めてくれたなら救われる。舘合は自身の研究以外には無関心な反面知ることの大切さは知っている(のか、レイヴンたちと出会って気づいたのか?)から、自分を助けよう守ろうとしている高坂の存在にもきちんと向き合ってほしいです。舘合さんの相棒ポジションは高坂派です。悪霊組に見せる笑顔を高坂にも向けてくれる日が来るといいな。

そして人間サイドと言えば恋塚さん。当て書きかな!?と思うくらい土屋さんの魅力全開の濃ゆいキャラクターで、終盤では恋塚さんが出てくるだけで笑いがこみ上げてきました。紫のコートに金ぴかの靴。このどぎつい衣装をここまでスマートに着こなせるひとが土屋さん以外にいるでしょうか。長いコートの裾を払って歩く姿が気持ち悪くて(褒めてる)、いちいちポーズをキメるのがおかしくて(とても褒めてる)、恋塚さん最高でした。自分では何もできないいわゆる小物キャラなのに、存在感がすごい。100分の間で恋塚さんがなぜあんなにも部下を従えることができるのかというカリスマ性を見せつけられた気がします。しかも舘合の発明を見つけたからオーメンを廃棄してしまうのかなと思ったのに、たとえハイコストでもお払い箱にはしないところに愛を感じました。まあ、ただトドメを刺せるのはオーメンだけだからという理由なのかもしれないけど。部下を「愛くるしい奴らよ」と言ったり、手駒以上に思える情があるひとなのかも。電源が落ちてしまったオーメンの頭を叩くシーンや「オーメンの吐息がすごくて!」ではメタ的な楽しませ方もしてくださって、現実とフィクションの狭間でにやにやしてしまいます。この方に関してはどろどろとした思惑も裏切りも何もなくてただただ金儲けのために突き進んでるさまが清々しくて観ていて気持ちがよかったです。恋塚さんの部下たちも最初から最後までずーっと舞台上で動いていて、いろいろ不憫な目にも合うのに社長のご指示通りにひたすら頑張っているのが和んでしまいました・・・悪者ポジションであるはずの恋塚さんが憎たらしくないのはこの4人組がいたからかも。この舞台のスパイスでもあるし優しさの骨組みを作ってくれてる存在でもあるなぁと思います。

さてオーメン。個人的に、ダークホースでした。こんなに好きになるなんて思っていなかった。演じる大樹っちゃんが作演を務めていることもあり、あまり出番はないのかなと思っていたし、ダンスも少しあれば嬉しいなと期待していたくらいだった、のに!暗転が明けたらそこにいるし、ダンスもがっつり最初から最後までするし、アクションはクライマックスにあるし。オーメンには感情がないから感情移入も何もないのだけど、応援してしまう自分がいました。毎回毎回、今日こそはオーメンが勝つんじゃないかな?と思ってしまう。ロボットであるオーメンは恋塚さんの命令だけがすべてで、それを遂行することを躊躇わないし結果どうなるかなんてことも考えない。だから薬を奪えって言われたら部下を引っぺがしてでも手に入れて恋塚さんに差し出すし倒れても起き上がる。オーメンが壊れてしまいましたーって私も恋塚さんと一緒に泣きたい。登場人物のなかで唯一「モノ」であり、当たり前だけど誰からも情を向けられないオーメンがとても切ない。完璧に強いだけじゃなくて、忠実でプログラミングによって動いているがゆえに少し抜けているところもあるオーメンだからこそ、こんなに愛おしく思えてしまうんだろうか。動きがひとつひとつ大きくて直線的なのが迫力あってかっこいいです。

 

ダンスシーンの話。

大樹っちゃんの書く丁寧な物語運びにダンスシーンがアクセントとして嵌っていて、違和感も何もなくすんなりと観ることができた気がします。

舘合と高坂のダンスはきらきらさわやかで、最初の舘合のソロダンスはかっこよすぎて私の中の高坂が「舘合さーん!!」と叫ばすにはいられませんでした。スカした顔で踊っているのがかっこいい。さすが舘合さん。悪霊たちのコミカルなダンスと恋塚さんたちのダークなかっこいいダンスは対照的で、オープニングから価値観をひっくり返される。

オープニングでむすっと無表情で踊ってる舘合が、悪霊たちとの気合い入れダンスではにんまりと笑みを浮かべているのが、この人実はとてもわかりやすくて正直なのではないかと思わされました。何を考えているのかわからない、見ている世界が違う、なんて言われてるけど、興味を持ったら一直線だし自分の行動に嘘はつかないし面白いときはきちんと笑う。それを開放させてくれたのが悪霊たちなのかなぁと思います。この気合い入れダンス、何回観ても元気になるしこっちまで笑ってしまう。楽しそうな人たちを見るとそれが伝染するものなんだよなあ。色とりどりの照明がパーティーみたいで好き。

モイモンとムシュフシュによるセッションは毎回ライブかな!?ってくらいの盛り上がりで、拍手も歓声も起こっちゃうし、目まぐるしく展開していくアクションが本当に気持ちいい!この演出考えたひと天才だな!だれだ!→大樹っちゃんだ~~~!っていう茶番をよくやります。ムシュフシュがエアギターをぶっ壊しながら部下たちを威嚇するシーン何度見ても笑うし、ヘドバンしてノってるの最高だなと思う・・・強い・・・。このシーンのきっかけにもなる床をひっかくところで得意げな顔して笑ってるのも好きです。モイモンの単発的にしか使えない憑依の技をこうも上手く使ってくるか~!と感心してしまうシーン。照明も緑と黄色できれい。個人的ポイントとして、最後の方の花塚くんの飛び上がりながら棒を振りかざすところが大好きでいつも見ちゃいます。

エンディングダンスでは、恋塚とオーメンダンスでいつも胸が熱くなってしまう。恋塚さんに操られるみたいにしてオーメンが仰け反るところが大好きで、オープニングだとそのままステージ後方に消えてくオーメンの後ろ姿にどきまぎするんだけど、エンディングはふたりで踊りだすから*pnish*好きとしても恋塚オーメンコンビ好きとしてもわくわくします。踊りだすときに互いに指をさし合うところ、一瞬だけオーメンの口もとに感情が宿る気がして、人間なのロボットなのってどきどきする!こういうカーテンコールの、キャラクターと役者さんが混じってる感じが好き。でもアミットはずっとアミットで、それも好き。

 

 

長々と綴ってしまいましたが、もうとにかくめちゃめちゃ楽しかったんです。今まで生きてきていちばん楽しい4日間だったのではと本気で思ってます。

私は大樹っちゃんが描く世界の派手さとか、優しさとか、丁寧さとか、でも甘ったるくないところが好きで、懲悪バスターズには「楽しい」がいっぱいいっぱい詰まっていて、また今回も、というか今まで以上に大好きな作品だって心から思えていることがたまらなく嬉しい。

大樹っちゃんが先頭で走りながらたくさんの人と一緒に作り上げてきた舞台を観て、紙吹雪が舞うステージの上に立つ姿を観て、なんて誇らしいんだろうと胸が震えました。こんな気持ちを今まで知りませんでした。また好きになっちゃったなぁと頭を抱えています。とても幸せです。

懲悪バスターズに出会えてよかった!

 

神戸公演ではまたどんな風に観えるのか、とても楽しみです。

引き続き、大成功しますように!

 

 

懲悪バスターズ 前夜祭

 

2015年6月30日、ネバー×ヒーロー東京千秋楽。

ネバー×ヒーローはとても楽しく、楽しすぎて劇中に何回か泣いたし、終演後は周りの女の子たちが「久々にこんな楽しい舞台観たかも」と囁きあう、そんな作品だった。

その日、私は客席で4回目の観劇を終え、充足感に浸っていた。それはカーテンコールでの発表だった。

 

「WBB vol.10が決まりました! 次回もここ東京芸術劇場で、しかもいつもより大きなホールでやります!」

 

大劇場でやってるかもしれませんよー、それはないか!なんて笑っていた声を今でも思い出せる。

私の懲悪バスターズは、あの日あの瞬間から始まった。

 

 

D-roomの初日にタイトルと日程と大樹っちゃんが作演を務めることが発表され、リビング初日にキャスト第一弾が発表され、追加キャストに土屋さんがいて驚き、そうやって少しずつ、このお祭りは目に見えるかたちとして私たちの前にちらちらと現れてきた。

お祭り。公式からもさんざん言われていることだが、今回はWBBの10回目記念公演でありド派手なお祭りなのである。

そんなお祭りの、プロデューサー兼脚本家兼演出家という肩書きを一手に引き受けているのが私の大好きな役者さんだ。

初めての脚本作品でもあるアヤカシ奇譚で、最初は主人公を務めるつもりのなかった大樹っちゃんがそのとき演出を担っていたきだつよしさんに勧められ「そこまで責任を負わなきゃだめだよな」と思い安曇優を演じた、というエピソードがとても好きなのだが、それをふと思い出した。

今回の経緯はわからないが、背負うことにしたんだなぁ、と思った。いま大樹っちゃんの肩にかかっている責任はどれほど重たいのだろう。

 

ロンドンブーツ1号2号田村亮さんがご出演する影響か、製作発表があったり雑誌や新聞やワイドショーに取り上げられたりいろいろな媒体で取材を組まれたりと驚くこともたくさんあった。

特にスッキリに大樹っちゃんと瑞樹さんと亮さんが出たときは信じられなさすぎて夢かと思った。日ごろ私から大樹っちゃんの知識を植えつけられている友達が数名、テレビ画面の写真とともにLINEをくれたりした。まさか「天の声さん!」という台詞を聞くとは。今後ともスッキリを贔屓して生きていこうと思う。

新聞に載ることやテレビに映ること、それ自体も当たり前に嬉しいのだが、それよりももっと、大樹っちゃんの作っている舞台がたくさん期待されていろんな人の目に触れるんだと実感できたことが嬉しかった。

それはとても怖いことでもあるのだけど、ネガティブな私にしては珍しくわくわくした。さまざまな層の人たちがそれぞれの期待を胸に観る舞台、その先頭に立ってキャストさんやスタッフさん、そして私たち観客を引っ張ってくれる存在が大樹っちゃん。この場面で熱くならない方が無理だ。

 

たくさんの人が、大樹っちゃんが頑張っていると言う。私もそう思う。けれど、口にするとこんなにも簡単な「頑張る」がどれだけ大変で、どれだけすごいかということを、私はいつもつい見失いそうになってしまうのだ。

周りに「あの人は頑張っているなあ」と評される働きは、その内側に驚くほどの苦労を伴う。

だから、頑張れるひとはすごい。すごくて強い。どこへでも行けるし、たくさんの人が助けてくれるからひとりじゃできないようなこともなんでもできる。

努力すれば必ず報われるなんて嘘だけれど、努力しないと報われない。そういえば、「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし成功した者はすべからく努力しておる!」が大樹っちゃんの座右の銘だ。

私は大樹っちゃんの「努力の天才」なところを尊敬しているし、ひたすら前を向こうとする姿勢がいつだって眩しい。眩しくて目が痛いのに見ていたいのだから、やっぱり好きなんだろうなと思う。


 

懲悪バスターズを明日に控えたいま、私は感謝の気持ちでいっぱいだ。

10回目記念公演で、お祭りでたくさん盛り上げてくれて、大きな劇場でWBBを観せてくれて、期待させてくれて、わくわくさせてくれて、舞台が開幕する前からこんなに幸せな気持ちにさせてくれて。

もう、たくさんのひとにお礼を言いたい。なんなら関係者だけじゃなくて世界中のひとにありがとうを言って回りたいし優しくしてあげたい。

この舞台は、大樹っちゃんの覚悟だとか熱だとかこだわりが詰まった、勝負の作品なのかなと思う。この1年は勝負の年だとお誕生日にブログで書いていたが、懲悪バスターズはその中でも大きな意味を持つ作品なのだろう。

でっかい勝負を仕掛ける大樹っちゃんの、なんとかっこいいことか。そしてそれに携わることができる私たちファンの、なんと幸福なことか。

私はまだまだ新参者で、大樹っちゃんが積み上げてきた歴史を、誰かの言葉や映像によって作られた記録として観たり読んだり聞いたりすることしかできない。実際に体験することは不可能だ。

だけど、明日から始まるこの懲悪バスターズという舞台を、大樹っちゃんが「これが今の自分です」と記す舞台を、劇場に足を運んで観ることはできる。明日抱く感想は私だけのもので、誰の情報や意見にも左右されない。

ほんとうに、いま、佐野大樹さんのファンでいられることがしあわせだと思う。明日、1/800になれる幸せを私はきっと一生忘れない。



WBB10回目記念公演、おめでとうございます。

懲悪バスターズが多くの人の目に触れて、たくさんたくさん愛されますように。

この舞台を構成する全員が、楽しい!って笑えますように。

大大大成功、しますように!

 

舞台『リビング』 感想

期間:3月2日~7日

劇場:赤坂レッドシアター

公式サイトに載っているあらすじはこんな感じ。

主人公・マタロウは、会社を辞めて家に引き籠っている。
不動産屋の営業をしていた彼は、客のクレームに耐えきれず現場から逃げ出したのだ。
しかし、彼が逃げ込んだ筈の家の中も、様々な問題に溢れていた。

無職で呑んだくれの父親、長年付き合っていた恋人、出て行った母、そしてその愛人、 職場復帰を説得しに来た不動産屋の二代目、 クレーマーだった客までやってきて…混乱の極みに達した家族の問題を解決するのは誰か。
喧騒の中で、家族の愛が燦然と輝き始める……かも知れない。 

 

さて、感想です。

作演が荻田浩一さんということで、私の中では「ニジンスキー」のイメージが頭を占めていました。耽美!性!愛!美!みたいな。

でも幕が開けてみると、そんなことはなかった。薄暗い感じはあるし悲壮感漂ってるし視覚的に楽しめる美しいシーンも盛りだくさんだけど、コメディかって言われれば首を傾げたくもなるけれど、私の持つイメージは壊されたかな、と思います。

主人公のマタロウは2階にも上がれず現実から目を背けてリビングで生きているわけだけど、それこそマタロウの生を止めていることになってて。だからその場所を出ることが、時を進めることになる。

このテーマって先日観たポンコツバロンの「回転する夜」にも通ずるものなんだけど、向こうのノボルが「俺の部屋」を出たことによってきちんと生きていく道を選べたエンディングに比べて、このマタロウがリビングを出るってことは結構残酷で、でもまたリビングにいるマタロウを見れるってところで救いを見出せた気がしました。

 

マタロウも、ミヨさんも、ミツオも、あの家族はたぶんみんな逃げる人ばっかりだったんだろうな。と思う。

夢見がちというか、みんな現実から逃げて見たくないものから目を背ける。それで何かを失っても、失ったことさえ認めたくなくて、また逃げる。

でも放っておけない魅力がそれぞれにあるから、ショーちゃんもシズカちゃんもあの家に通ってしまうんだろうなあ。

私はこの話を愛がテーマの話だとは思わなかったけれど、結局は愛に支えられてる話なんだろうな、と思った。行動する原因のまんなかに愛があって、「しょうがないじゃない、愛してるんだから」って言われてる気がした。

愛してるから守る、愛してるから何も言わない、愛してるから隠蔽する。それがどんなに不道徳でも、愛が理由ならそれをやめさせることはできなくて。でもやっぱり、それを正す理由もまた、愛なんだよね。

 

この家族のリビングに入ってくる4人もキャラが濃かった!

ショーちゃんはミヨさんの愛人でミヨさんを愛してるけどそれを通して息子のマタロウにもたぶん愛情を向けていて、これは演じてる大野さんが透けてるのかもしれないけど、所作がひとつひとつ流れるようにしなやかで綺麗。ふと左耳のピアス?を指でなぞるしぐさがセクシーだったなあ。お人好しで、愛することを怯えないひと。最後のタンゴではミヨさんやシズカちゃんを相手にしているときももちろんだけど、存在しない相手を見つめながらひとりで踊ってる姿が美しかった。舞台上でたくさん笑うし場を明るくもするのに、どこかずっと切なくて悲しいひと。白シャツに黒ズボンが大正解すぎた。

シズカちゃんはパワフルでキュート!まさか荻田さんの舞台で聞くとは思っていなかった単語をたくさん聞けて面白かったなあ。セーラー服は丈が短くてどきどきしてしまった。心の中で何回も「かわいい!」って叫んでました。足さばきや体の使い方がダイナミックで見ていて気持ちよかった。そんな大胆で自分に正直なシズカちゃんだけど、マタロウには可愛い100パーセントで接さないのが逆に可愛い・・・。マタロウを救った愛はシズカちゃんのものが強かったんだろうなあ。

ハットリさんは、ずるすぎた!さすがの飛び道具だった!声が大きすぎてびっくりした!神経質で典型的なオタクで見ていて気まずくなる感じが心地よかったです。恐ろしく順応力が高いし、するっとリビングの内側に入っていて驚く。でもそれがたぶん空気を読まないハットリさんの特性で、あの舞台の色を鮮やかにしていたのはハットリさんなんだろうなあ。ノビさんと一緒に中盤から登場して動きを加える、まさにスパイス的存在でした。

そして、ノビさん。やっぱり目で追ってしまったし、意識的に「この人はどんな人かな」と観察してしまったんだけど。なんというか、この7人の登場人物のなかでいちばん「外」の人だなあと思いました。ご近所さんだし元上司だしマタロウとシズカちゃんの元家庭教師でもあるのに、たぶんあの中でいちばん場に順応してなくて状況を理解してない。だから、そういう意味ではいちばん観客に近いんじゃないのかなあ。ノビさんの表情を追ってるとほんとうに隙がなく困惑してて、ずっと楽しいです。ツッコミしてたり巻き込まれたりミツオさんに叩かれたりショーちゃんに叩かれたりわりと散々で、でもすごく良いポジション! でも、ノビさんはドラえもんで言うところの「のび太」だから「しずかちゃん」に恋をしてるんだけど、この舞台において主人公はのび太じゃなくてマタロウだから結ばれることはないんだよね。それをノビさんもわかってて、シズカちゃんに気づかれるような素振りも見せないし、諦めてる。だってあのふたりお似合いじゃん、って笑うことができる。これも理由はきっと愛なんだよなあ。この愛はシズカちゃんへ向けてるものだけじゃなくて、元教え子で部下でもあるマタロウへの愛もあって。マタロウからシズカちゃんを奪えない臆病な人なんじゃなくて、自分の気持ちよりも好きなひとの幸せを優先できる強いひとだ、と思いたいです。

 

長々と綴ってしまったけれど、これからの観劇で感想が変わりそうな気もする。そしたら加筆します。

舞台『リビング』、たくさん考えさせられるしたくさんの感情をもらうことができました。

またひとつ、すてきな舞台に出会えて嬉しいです。