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懲悪バスターズ 感想

 

期間:5月19日~22日(東京)、28・29日(神戸)

劇場:東京芸術劇場プレイハウス、新神戸オリエンタル劇場

あらすじ(公式サイトより):

思わずクスッと笑っちゃう悪霊たちの騒動記―――。
間もなく真夏を迎える大都会の片隅で、今日も今日とて悲鳴が響く。
毎夜毎夜続く悲鳴の正体は、悪霊たちによるイタズラのせいだった・・・!?
そんな中、悪霊退治に立ち上がったのは、ある一人の天才科学者!
――人間(天才)vs悪霊(落ちこぼれ)――
悪霊(落ちこぼれ)たちが巻き起こす、なんちゃってポルターガイストに人間達の背筋が凍る・・・のか!?
悪霊も天才も踊り狂う!サイエンス×ホラー×アクション活劇!!

 

 

さて感想です。

まず、場内アナウンスから悪霊(という名の大樹っちゃんと土屋さん)がしゃべりだすというまるでホーンテッドマンションみたいな演出。プレイハウスは赤い座席とレンガ造りの壁がおどろおどろしい雰囲気とマッチしていて、本当にアトラクションに乗り込んだみたい。

幕が開けば、色鮮やかな光とポップでかっこいい音楽が彩る楽しい世界がそこにはありました。

子どもが観てもわかりやすくて楽しい舞台、それに加えて、大人が観ると子どもに戻れる舞台だなあとも思いました。あれこれ考えるのではなくて、ただ楽しむことだけに集中できる。でも観終わったあとに何も残らないわけじゃない。

テーマパークで遊んだあとみたいな充足感に包まれて、悪霊や人間やロボットの記憶が私たちの日常を支えてくれる。

懲悪バスターズはそんな舞台です。

 

 

この舞台に出てくる悪霊はだめなやつばっかりで、息を止めてる間しか電気を消せないし鍵かけは遅いし憑依できるくらい有能なのに不思議くんだしエリートぶってるのにできることは地味だし。だけど、だからこそ愛おしい!

悪霊だからもう死んでるはずなんだけど、彼らがいちばん必死に生きていた気がする。笑ったり怒ったり悲しんだり悔しがったり、表情が豊か。試験に落ちたくない!ってその一心で試行錯誤するけれど、結局仲間は見捨てられないし自分のことより他人を優先しちゃう。だから落ちこぼれなんだろうけど、優しさを強さに変えることができる悪霊たちがチャーミングで大好きです。

教官はいちいち面白くてとてもずるい。こんにちはー!って叫ぶところ、わかってるのに毎回笑っちゃう。指導者としての愛が根底にあるしすぐ機嫌が態度に出ちゃう教官だからいいんすよ!!!(ここのアミットが好き)

レイヴンは底抜けにポジティブでやさしくて、落ちこぼれ揃いの悪霊免停組の中でもとびっきりの変わり者。ダンスをふわふわ~っと笑いながら踊るのもおっとりしてるレイヴンらしい。だけど情が厚くて、意志は固くて、他人の悪意に流されないのが強さだなあと思います。個人的にアミットに自撮りかどうかを見極める術を教えてるときのアヒル口が好きです。濃い黄色のツナギにもふもふの手と耳がかわいい。モチーフは狼なのかな、と思ったけど、ツナギに入ってる黒のラインが虎みたいに見えるときもある。

アミットは終始動きがぐにゃぐにゃしてて落ち着きがないし捲し立てるみたいに話すのに、すべてきっちり聞き取れるのは演じている勝吾くんの力量なんだろうなあ。オープニングで出てくる瞬間から歩き方ひとつお辞儀の仕方ひとつとってもめちゃめちゃ優雅。赤の高貴な衣装がぴったり。白塗りの顔で口角釣り上げてるのがめっちゃ怖いんですけど、お調子者なアミットが好きです。思ってることをぶわーっと口に出すし試験と友達を天秤にかけて悩むしある意味「ふつう」の感性と正直さを持ってるんだけど、なんだかんだレイヴンに付き合っちゃうからアミットもお人よしなんだろうと思う。時折しっぽを持って歩いてるのがかわいいです。

モイモンは細かい動きが多くてぼそっと話す言葉が抜群に面白いししぐさがとても可愛い・・・。茶色のミトンみたいな手で口もとを押さえたり、肩を縮こまらせてたり、アミットの手の動きを真似てみたり。でもダンスシーンになれば誰よりも大胆に手足を広げていて、そのギャップにやられてしまう。オープニングでセンターに滑り込んでくるモイモンは何度見てもぞくっとします。役者さんとはまた違った方法で空間を支配することのできる方なんだなあと思う。扉が開いて教官を先頭に悪霊たちが出てくる演出だいすき。あの瞬間、もう観客はみんな舞台の世界に捕まる気がします。モイモンは人間観察が好きなだけあって他人のことをよく見ているし、自由気ままだけどちゃんと舘合とレイヴンの仲違いを心配してる。必死に言葉にしてくれる。レイヴンとアミットといる場所はモイモンにとってすごく大事なのかな、と思いました。

ススス・ムシュフシュは常に片足重心で立ってキメポーズしてるのが腹立つくらいにかっこいい!衣装も王子様みたいできらびやか。プライドが高いのに小心者で長いものに巻かれるタイプだしアミットとは違った意味で調子がいいんだけど、恋塚さんの部下たちにレイヴンたちが襲われてるときは自分が差し向けたにも関わらず「えっそこまでやっちゃうの?あっどうしようどうしよう・・・」って止めることもできずおろおろしてるのが、ムシュフシュの優しくて可愛いところだなあと思います。客席降りのシーンで遊んじゃうのもご愛嬌、で済まされそうなのもまた彼の強いところだよなあ。演出家さんは大変だと思いますが・・・・・・。

こんな悪霊たちと出会って心を通わせていくことになるのが、この物語の主人公でもある天才科学者・舘合。

舘合は知ることに貪欲だし未知こそ恐怖だと言いながらも、わからないことこそ面白いっていうタイプだよなあと思う。「楽しい」と「面白い/興味がある」の違いもきちんとあって、悪霊たちとダンスしたあとは「面白いじゃないか!最高だ!」だけど所長に誘われたときは「それも楽しそうですね」なんだよね。

あいつは俺たちと見てる世界が違う、って評される孤高の天才は、変わり者だって言われすぎてそこへの興味は絶ってしまったのだろうなあと思う。悪霊というオプションが強いにしろ、レイヴンは「変わり者だね」と言いながらも関わることをやめないし、悪霊たちにとって舘合の頭脳はどうでもよくて、「天才科学者」として見なかったことが信頼の第一歩だったのかなと思う。舘合はひとりで生きてきたから、誰かに守られたり信じられたり信じてほしいって思ったこともなかったんだろうな。だからレイヴンたちの存在はきっと革命だったし、終始むすっとしてる舘合が最後自然に笑顔を浮かべてる姿が嬉しかった。

でも!私は!高坂を!応援しています!

舘合さぁん、と頼りないけれど、ひとりでやっていける(と思われるであろう)舘合から離れず、研究を金に変えてしまおうとする所長を身を張って止めようとする強さも持ち合わせているのが高坂だと思う。ただ予想外の言動をするわけではないから、舘合の興味をそそる存在にはなり得なかったのかな。でも、最後に「お前はなぜついてくるんだ?」って聞いた舘合が「助手だからですよ」ってあっさり答えた高坂に対して、今までの認識を少し改めてくれたなら救われる。舘合は自身の研究以外には無関心な反面知ることの大切さは知っている(のか、レイヴンたちと出会って気づいたのか?)から、自分を助けよう守ろうとしている高坂の存在にもきちんと向き合ってほしいです。舘合さんの相棒ポジションは高坂派です。悪霊組に見せる笑顔を高坂にも向けてくれる日が来るといいな。

そして人間サイドと言えば恋塚さん。当て書きかな!?と思うくらい土屋さんの魅力全開の濃ゆいキャラクターで、終盤では恋塚さんが出てくるだけで笑いがこみ上げてきました。紫のコートに金ぴかの靴。このどぎつい衣装をここまでスマートに着こなせるひとが土屋さん以外にいるでしょうか。長いコートの裾を払って歩く姿が気持ち悪くて(褒めてる)、いちいちポーズをキメるのがおかしくて(とても褒めてる)、恋塚さん最高でした。自分では何もできないいわゆる小物キャラなのに、存在感がすごい。100分の間で恋塚さんがなぜあんなにも部下を従えることができるのかというカリスマ性を見せつけられた気がします。しかも舘合の発明を見つけたからオーメンを廃棄してしまうのかなと思ったのに、たとえハイコストでもお払い箱にはしないところに愛を感じました。まあ、ただトドメを刺せるのはオーメンだけだからという理由なのかもしれないけど。部下を「愛くるしい奴らよ」と言ったり、手駒以上に思える情があるひとなのかも。電源が落ちてしまったオーメンの頭を叩くシーンや「オーメンの吐息がすごくて!」ではメタ的な楽しませ方もしてくださって、現実とフィクションの狭間でにやにやしてしまいます。この方に関してはどろどろとした思惑も裏切りも何もなくてただただ金儲けのために突き進んでるさまが清々しくて観ていて気持ちがよかったです。恋塚さんの部下たちも最初から最後までずーっと舞台上で動いていて、いろいろ不憫な目にも合うのに社長のご指示通りにひたすら頑張っているのが和んでしまいました・・・悪者ポジションであるはずの恋塚さんが憎たらしくないのはこの4人組がいたからかも。この舞台のスパイスでもあるし優しさの骨組みを作ってくれてる存在でもあるなぁと思います。

さてオーメン。個人的に、ダークホースでした。こんなに好きになるなんて思っていなかった。演じる大樹っちゃんが作演を務めていることもあり、あまり出番はないのかなと思っていたし、ダンスも少しあれば嬉しいなと期待していたくらいだった、のに!暗転が明けたらそこにいるし、ダンスもがっつり最初から最後までするし、アクションはクライマックスにあるし。オーメンには感情がないから感情移入も何もないのだけど、応援してしまう自分がいました。毎回毎回、今日こそはオーメンが勝つんじゃないかな?と思ってしまう。ロボットであるオーメンは恋塚さんの命令だけがすべてで、それを遂行することを躊躇わないし結果どうなるかなんてことも考えない。だから薬を奪えって言われたら部下を引っぺがしてでも手に入れて恋塚さんに差し出すし倒れても起き上がる。オーメンが壊れてしまいましたーって私も恋塚さんと一緒に泣きたい。登場人物のなかで唯一「モノ」であり、当たり前だけど誰からも情を向けられないオーメンがとても切ない。完璧に強いだけじゃなくて、忠実でプログラミングによって動いているがゆえに少し抜けているところもあるオーメンだからこそ、こんなに愛おしく思えてしまうんだろうか。動きがひとつひとつ大きくて直線的なのが迫力あってかっこいいです。

 

ダンスシーンの話。

大樹っちゃんの書く丁寧な物語運びにダンスシーンがアクセントとして嵌っていて、違和感も何もなくすんなりと観ることができた気がします。

舘合と高坂のダンスはきらきらさわやかで、最初の舘合のソロダンスはかっこよすぎて私の中の高坂が「舘合さーん!!」と叫ばすにはいられませんでした。スカした顔で踊っているのがかっこいい。さすが舘合さん。悪霊たちのコミカルなダンスと恋塚さんたちのダークなかっこいいダンスは対照的で、オープニングから価値観をひっくり返される。

オープニングでむすっと無表情で踊ってる舘合が、悪霊たちとの気合い入れダンスではにんまりと笑みを浮かべているのが、この人実はとてもわかりやすくて正直なのではないかと思わされました。何を考えているのかわからない、見ている世界が違う、なんて言われてるけど、興味を持ったら一直線だし自分の行動に嘘はつかないし面白いときはきちんと笑う。それを開放させてくれたのが悪霊たちなのかなぁと思います。この気合い入れダンス、何回観ても元気になるしこっちまで笑ってしまう。楽しそうな人たちを見るとそれが伝染するものなんだよなあ。色とりどりの照明がパーティーみたいで好き。

モイモンとムシュフシュによるセッションは毎回ライブかな!?ってくらいの盛り上がりで、拍手も歓声も起こっちゃうし、目まぐるしく展開していくアクションが本当に気持ちいい!この演出考えたひと天才だな!だれだ!→大樹っちゃんだ~~~!っていう茶番をよくやります。ムシュフシュがエアギターをぶっ壊しながら部下たちを威嚇するシーン何度見ても笑うし、ヘドバンしてノってるの最高だなと思う・・・強い・・・。このシーンのきっかけにもなる床をひっかくところで得意げな顔して笑ってるのも好きです。モイモンの単発的にしか使えない憑依の技をこうも上手く使ってくるか~!と感心してしまうシーン。照明も緑と黄色できれい。個人的ポイントとして、最後の方の花塚くんの飛び上がりながら棒を振りかざすところが大好きでいつも見ちゃいます。

エンディングダンスでは、恋塚とオーメンダンスでいつも胸が熱くなってしまう。恋塚さんに操られるみたいにしてオーメンが仰け反るところが大好きで、オープニングだとそのままステージ後方に消えてくオーメンの後ろ姿にどきまぎするんだけど、エンディングはふたりで踊りだすから*pnish*好きとしても恋塚オーメンコンビ好きとしてもわくわくします。踊りだすときに互いに指をさし合うところ、一瞬だけオーメンの口もとに感情が宿る気がして、人間なのロボットなのってどきどきする!こういうカーテンコールの、キャラクターと役者さんが混じってる感じが好き。でもアミットはずっとアミットで、それも好き。

 

 

長々と綴ってしまいましたが、もうとにかくめちゃめちゃ楽しかったんです。今まで生きてきていちばん楽しい4日間だったのではと本気で思ってます。

私は大樹っちゃんが描く世界の派手さとか、優しさとか、丁寧さとか、でも甘ったるくないところが好きで、懲悪バスターズには「楽しい」がいっぱいいっぱい詰まっていて、また今回も、というか今まで以上に大好きな作品だって心から思えていることがたまらなく嬉しい。

大樹っちゃんが先頭で走りながらたくさんの人と一緒に作り上げてきた舞台を観て、紙吹雪が舞うステージの上に立つ姿を観て、なんて誇らしいんだろうと胸が震えました。こんな気持ちを今まで知りませんでした。また好きになっちゃったなぁと頭を抱えています。とても幸せです。

懲悪バスターズに出会えてよかった!

 

神戸公演ではまたどんな風に観えるのか、とても楽しみです。

引き続き、大成功しますように!