日々是好日

愛しかない

リバースヒストリカ2016 感想

 

期間:7月27日~31日

劇場:品川プリンスホテル クラブeX

あらすじ(公式サイトより):

戦国時代を舞台にした自主制作映画を撮影すべく集まったスタッフ・出演者たち。
お祓いに現れたのは祈祷師…ではなく霊媒師??
ひょんなことから明智光秀を現世に降臨させてしまい、事態は思わぬ展開に・・・。
光秀に立ち向かうべく、撮影クルーが取った行動が戦国事変に拍車をかける!!

天下を獲らんと暴れる武将!
立ち向かうは撮影クルー!?
敵味方入り乱れる騒乱の行く末は・・・!?

 

 

さて感想です。

まず、このリバヒスは何回も再演されてる作品で私も3種類くらい(映像ですが)観ているので、比較しつつ語っていくのが常套かと思います。でも、公演期間を終えてみて、今回は独立したものとして扱いたいなという気持ちが芽生えました。

ということで、過去のリバヒスとの相違点などは特に語りません!

 

このお話って、観るひとの思想とか好みとか気持ちのタイミングによって感じ方がころころ変わる作品なんじゃないかなぁと思う。

主人公は中島なんだけど、その中島が戦国武将たちにどきどきしながらカメラを構えてこの様子を撮影してる、ちょっと俯瞰的な、観客サイドの人間だからかな。信長が「猿が上か、余の技量が上か・・・楽しみにしておるぞ!」って去っていくシーン、中島が小さく「かっけー・・・」って呟くんだけど、毎回めっちゃわかるって思ってたし、なんなら「あれ?私の心の声が口に出た?」って一瞬びびってた。

 

で、私にとっては、秀吉の物語でした。信長を恐れ憧れて、天下人としてのプライドと虚しさを持ち、お調子者でへらへら笑ってると思ったらふと苦しそうに顔をゆがめる、最高にかっこいいおじいちゃん。

私はもともと秀吉を演じてる佐野大樹さんのファンなんですけど、もし知らなかったとしてもこの作品でファンになってたと思う。それくらい大好きで心揺さぶられる役でした。

秀吉の好きなところは、自分が天下を獲るために光秀を騙したって自覚がきちんとあるところ。その上で、それが最善策だったって思ってるところ。光秀や朋希に責められても信長をただ討つだけじゃだめだったんだって語って「それが戦国の世じゃ」ってぴしゃりと言い放って、でも朋希に「あんたを少しでも凄いやつだって思った俺がバカみたいだよ」って言われたら少し驚いた顔をしたり、中島に擁護されても「事はそう単純ではないわい」ってその場から去ったり、どうしようもなく人間らしい矛盾や心の揺れがあるところ。

百姓に生まれつきながらも戦国時代を生き抜いて天下を獲るために策略をぐるぐると巡らして、複雑な想いをたくさん抱えた秀吉が、相手を良い人か悪い人かっていうシンプルな分け方をする朋希に出会って、その若くて力強くてまっすぐな言葉や姿勢に触れることで、少しでも心がほぐれてたらいいなぁ。秀吉と朋希の関係を、10個も年の離れた大樹っちゃんと高崎くんで観られてよかったなと思う。若い撮影クルー組の中に大樹っちゃんがいる今回のリバヒス、とてもしっくりきた。

「露と落ち露に消えにし~」って辞世の句を秀吉が詠むシーンがいちばん切なかった。儚い栄華であったなぁ、って意味のこの句を、憑依というかたちではあるけどこの世に舞い戻ってきた秀吉が信長相手に詠むのが苦しい。後一歩のところで天下を逃していまだに執着している信長よりも、光秀を騙してまで天下を獲ったのにその夢の儚さを知ってしまった秀吉の方が、もう1度蘇ってしまったという点では不幸というか、抱える苦しみがいっぱいあるんじゃないかなぁ。このシーンでのこの句は天下人になった自分だけではなくて、現代で天下を獲ろうとしてる信長にも向けているのかな。悟ってしまう、ってどんなに絶望するものだろう。

自分のしたことを肯定しながら、でも光秀に対して罪悪感や謝罪の気持ちも持ちながら、そんな秀吉が、「自分の意思でございます」って信長に訴える光秀の声を聞くのはどんな気持ちだったんだろう。信長の力に圧倒されていろんなもの背負って戦って苦しそうに俯いて、でも、本能寺のときも秀吉に騙されたんじゃなくて自分の意思で上様を討ったのだという言葉にハッと顔を上げた秀吉の表情を今でも思い出せる。

「おぬしに泣き顔は似合わん、いつでも笑っておれ」っていう光秀の言葉の厳しさと声の優しさが好きだったし、そこで初日は笑ってたと思うんだけど後半になるにつれて泣いてるみたいな呻き声を漏らしたり顔を伏せる秀吉がすごくすごく愛おしくて。秀吉は救われたんだろうか。許すとか許さないとかそういう話ではないけど、光秀と秀吉の双方の心の奥底にあったわだかまりが、少しでもほぐれていればいいな、と思う。

ラストシーンで信長に地面に叩きつけられて「さて、何とするのだ!」って吠えられた秀吉が「お供致します!!」って叫び返すの、最高としか言えない。天下を獲ったことを朋希にばらされて焦って笑いながらぺこぺこしたり、睨まれて縮こまったり、でも信長の体が虚弱であることを知ってがんがん攻撃仕掛ける強かさも見せつつ、最後はやっぱり「上様の家臣」になっちゃうんだよね。いま書いてて思ったけど、あの中で天下人は秀吉しかいないし、「天下人」の顔と「家臣」の顔を両方兼ねてるのも秀吉だけなんだなぁ。信長への呼び名が3種類くらいあって、その中でも「上様」は日本でたったひとりいちばん偉い人にしか使わないんだって話がアフタートークで出ていたけど、秀吉は自身が天下人になって死んだあとも、信長に会えば彼を「上様」とためらいなく呼ぶんだなって刷り込まれた上下関係を感じた。

こんな感じで秀吉に対してはシリアスな面に心掴まれたんですけど、これだけ複雑でかっこよくて苦しいのに自動車に乗りたがって駄々をこねたり見慣れない洋服や靴に目をきらきらさせたり中島の言うこと信じて褒美を取らせようとしたり可愛いところもいっぱいあって、かと思えばまた軽やかに飛び跳ねたりでんぐり返しで受身とったりするからずるいなあと思います! 秀吉おじいちゃん、ずっと背中丸めてるのに光秀と本能寺のときの話するときはグッと背すじを伸ばしててときめきました!

 

 

秀吉だけでめちゃめちゃ語ってしまったんですけど、他の登場人物もみんな大好きなのでひとりひとりコメントしていきます。

 

まず、中島。

小笠原さん、ハマり役だったな~! 秀吉に無礼な態度をとる朋希を必死に庇うのにぜんぜん言うこと聞いてくれなくて「お前、もうっ庇いきれんぞっ・・・切腹しろ!腹を切れ!しねっ!」ってごろごろのたうち回るところと、蘭丸の美しさ伝説を聞くくだりの「だから向こうで座って聞くっつってんだろ!やっちまうぞ!」が好きです。緩急の付け方が上手すぎて何回聞いても笑ってしまう。ツボ。すべてにおいて楽観的だし適当だしなんだか可哀想なんだけど、武将が出てくるたびにテンション上がっちゃうのが可愛いなあと思った。中島が舞台上にいるとほっとする。

信長・大塚。

大塚のときの小動物のような愛らしさから一変、信長めっちゃ怖かった。浜崎(光秀)捜索中に木刀を構えた大塚が肩を固くしてきょときょと周りを窺ってたのと同じ場所で、信長がスッと立ちながら確認するみたいにゆっくり手を握ったり開いたりしてて、数分前とのギャップに目を奪われてしまった・・・。大塚、浜崎に憧れてるというか懐いてる感じがして可愛い。信長も、光秀や秀吉とはまた違った意味でかわいそうで悲しいなぁと思った。たくさんの人に慕われて実力もあってカリスマで天才なのに、部下に「上様から見れば、みな愚か者でございましょう・・・!」って突き放される。必要のないものは壊してきた信長が、律儀さを利用して縛ってきた光秀にそうやって面と向かって歯向かわれるってどんな気持ちだったんだろう。我らの出番はありません、って言われたんだよなあ、この世界に自分は必要ないんだって突きつけられたわけだよなあ。苦しいけど、強くて恐ろしいひとが絶望する状況はとても美しいなあ。「地獄で待っておるぞ」っていう最後の言葉、「あの世」じゃなくて「地獄」なのがいい。

 光秀・浜崎。

秀吉には騙されるし信長には謝り倒しだし勝家には嫌味言われるしひたすら可哀想だなあと思っていたんだけど、蘇ってからは「秀吉に騙された可哀想な家臣」として信長のもとにいたわけで、結構ずるいところもあるのかもしれないな、って友達と話してて気づいた。でも光秀は自分で自分を「可哀想で愚かな騙された男」から脱却させたんだよなあ。自分を殺した農民の生まれ変わり(ってことでいいのかな?)であるところの朋希とまた出会って同じ言葉を投げかけられることで因縁を断ち切る、これも秀吉の言葉を借りれば「果てしなく続く因果」なんだろうなあ。そしてその因果を気づかせるのはいつも朋希なんだな。あと所作の話だけど、腰に差してた刀をすっと抜いてかしずくしぐさが綺麗すぎてまじまじと見てしまった。浜崎のときとは声からして違っていたから、佐川さんすごいなあと思いました!!

勝家・高杉。

ギャップ大王だった!!! 眼鏡かけた神経質っぽい可愛い子だと思ってたら鬼柴田を見事に荒々しく演じていて目を剥きました!!! 勝家と言えばやっぱりひとりでの剣舞(って言っていいのかな)のシーンと幸村との殺陣ですよね。腕とかめちゃめちゃ細いのに一撃の重みが感じられて強そうだった。赤い照明をひとりじめしながら刀を地面にドンッて突き立てるところかっこよすぎて鳥肌立ったなあ。いちいち声も動きも大きいのが豪胆で、でもお顔はハイパーキュートだから、たびたび「んん?」って首を傾げるのが可愛らしくて高低差で耳がキーンとなりました。勝家が最初に名乗るシーンが好き。

 蘭丸・幸田。

蘭丸めっっっちゃ可愛かった。目線の高さに気づいて悲鳴あげるところもそうだし、「蘭丸にはこの着物、ふんっ。好みに合いません」の「ふんっ」が可愛かった。幸田のときはチャラくてだるそうで今時の甘やかされた若者って感じなのに、蘭丸が降臨すると涼しげな美人さんになるからどきどきしました。ブスじゃない蘭丸も楽しいなあ。信長・光秀のちっちゃいものクラブと並んだときの蘭丸さんの細長さ、好きです。どんなに落ち込んでいても信長に声をかけられたら一気に笑顔になるのも素直でかわいかったなあ。

幸村・津田と、川上。

名コンビだった~!!ふたりの温度差が絶妙!! 川上が出てくるだけでみんな笑っちゃうからずるいよね。川上に振り回されながらもひたむきについて行く津田が可愛かったし、ハハーッのキレの良さにびっくりした。津田はどこか抜けてて報われないけど、一生懸命でいい子だ。そんな津田を「津田くん」って友達みたいに呼ぶ高根くんもいい子なんだろうなあと思いました。幸村の殺陣も凛として静かでかっこよかったなあ。

由井野さんと師匠。

由井野さんの小ネタはぜんぶ面白いしゴーストバスターズのTシャツが出オチすぎて笑ったし途中「あれ?なるさんの一人芝居観にきたんだっけ?」って混乱するくらい存在感も何もかも濃くて楽しかったなあ。師匠は野生的になりつつも人間としての尊厳を忘れていないのがよかった!!毛布を前掛けにするシーン大好きだった!!あと木の枝から実?を取って食べるお芝居が上手すぎて見つめてしまいました。

そして、朋希!

根が優しくて、素直で、まっすぐで、正直で、とてもシンプルに物事を考えられる朋希だからこそ、秀吉とああいう関係を築くことができたし、光秀にも真正面から立ち向かうことができたんだよなあ。今回、殺陣や所作に力を入れてるだけあって武将たちはみんな動きひとつひとつに無駄がなくて洗練されてる感じだったんだけど、朋希だけ刀を持つ姿がへっぴり腰で慣れてなくて弱そうなのが目立っててよかった~!そんな朋希が「怖いなあ」って言いながらも刀を手放さないのがぐっときた。他人に「あんたのやってることは間違ってる!」ってきちんと言えるのは優しさだし強さだよなあ。「俺の首、はねなくてよかったの?」っていたずらっぽく笑うのがすごく好きだったし、「あんたが悪い人間じゃないってわかってよかったよ」って朋希が言う秀吉を、私も、善人とは言えなくても悪人じゃないって思いたいなあ。私の気持ちの関係もあるんだろうけど、千秋楽が近づくにつれてどんどん朋希の言葉や表情に熱が増していってる感じがしてぞくぞくした。ついに我慢できなくなって最終日にブロマイド買っちゃったもんね・・・。あと、話にはぜんぜん関係ないけど、売れっ子若手俳優の朋希は、正直者すぎるゆえに事務所からツイッター禁止されててインスタだけやってるか、もしくはツイッターやっててたびたびプチ炎上起こすけどそこに悪気は一切ないからファンもその都度許してそうだなあってゆるゆるっと思いました。

 

 

まとめ。

リバヒス、すっごく面白かった~!! 円形劇場だったから位置によって見えるものや感じるものも少しずつ違ってて、新鮮に楽しめました。

このお話はとても演劇的だなあ、と思う。戦国武将(役)が体に降りてきて、特性や普段の性格とはまったく違う自分になるっていうのが。因果とか因縁とかそういう「繋がり」が話の肝となるこの作品が再演を繰り返して、たくさんの役者さんの体を借りて縁や歴史や役をつないでいくっていうのがとてもしっくりくる。これからもいろんなかたちのリバヒスが生まれるといいなあ。

最後に個人的なことを言うと、WBBの前回作品である懲悪バスターズが面白すぎて「今年もうこの感動やわくわくの気持ちを越えるものがなかったらどうしよう」とか勝手に心配だったり不安だったりしたんだけど、本当に杞憂でした。何度でも言うけどリバヒスめちゃめちゃ楽しかった。最高!って思える作品が増えた幸せを噛み締めてます。大好きな役者さんが作るお芝居が面白いっていちばんの幸せですよね。ありがとうございます、これからも大樹っちゃんについて行きます。

この劇場で、このキャストさんで、この配役で、この2016年に最高のリバヒスを観れてよかった!