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懲悪バスターズ 後夜祭

 

9月下旬、懲悪バスターズのDVDが届いた。

5月末に公演が終わってから首を長くして待っていたそのDVDだったが、実は観るのが怖くもあった。

私はもともと、舞台は生で観たい派である。いや、みんなそうだと思うんだけど、私の場合は、実際に劇場で観た舞台をDVDで観ると拍子抜けしてしまうことが多くて、それが怖いのだ。

この音楽はこんなに綺麗に嵌っていたっけ? このキャラクターはこんなにずっとキマっていたっけ? この色は、この照明は、この台詞は、こんなに遠かったっけ?

本来なまものであるはずの舞台が映像記録として残るのは、素直に嬉しい。何度も何度も観たいという気持ちを満たしてくれるし、リアルタイムじゃ気付かなかった表情や動きを発見できることもある。もう公演期間が終わってしまった過去の作品を追えるのも魅力的だ。

でも、カメラを通して観ると、あの日あのとき劇場で感じた痺れだとか興奮だとか高揚がどこか遠いものに感じてしまって、舞台を観た記憶が思い出や記録に変わってしまう感覚がして、なんだかさみしくなってしまう。

だから、ちょっと怖かった。宅配物を受け取った手は少しだけ震えていて、でもビニールを破るとやっぱり心は疾って、サムライモードの公演期間中だったから控えようと思ってたのに我慢できなくて、つい再生してしまった。

どうかあの日々が風化しませんように、と願いながら、ゆびさきに力をこめる。

 

 

私は、懲悪バスターズのあたたかくてやさしい物語が好きだった。

キャラクターそれぞれがみんな好きだったし、音楽が好きで、セットが好きで、ダンスが好きで、空気が好きで、日替わりの台詞や客席降りの自由さが好きで、カーテンコールで噴射される紙吹雪が好きで、舞う紙吹雪を見上げてるキャストさんたちが好きで、その光景が好きで、なんかもう、ばかみたいに、ぜんぶが好きだった。

懐かしいそれらは、余すことなく隅々まで、DVDの中に生きていた。

私の心配や不安なんて吹き飛ばすみたいに、彼らは鮮やかにそこに立っていた。カメラがあるからなんなのって笑うみたいに、画面の向こうから私を見ていた。

もちろん、映ってなくて悔しいって思った場面もあった。音楽だって当たり前に劇場で聞いた方が迫力があったし、ダンスや殺陣も目の前で観たあの臨場感には勝てない。

だけど、私があの日々に打ちこまれた熱は、絶対に消えてなかった。

オープニング、モイモンの誘導で悪霊たちが出てくるシーン。大好きだったあの場面ではやっぱり鳥肌が立ったし、レイヴンのあひる口は可愛くて笑ってしまったし、高坂の「舘合さーん!」は抜群にのびやかだった。

大好きだったあれもこれも詰まっていて、気づいたら画面を観ながら泣いていた。劇場で何回も泣いたくせに、飽きもせず涙が出た。エンディングダンスを観ながらひとしきり泣いて、エンドロールの「作・演出 佐野大樹」の文字でまた泣いた。明らかに泣きすぎだ。意味がわからない。

笑っちゃうくらいに大好きで、泣けるくらい愛しい作品だった。

 

 

脚本と、演出と、プロデュースと、それに加えてオーメンという役でダンスにも殺陣にも参加していた大樹っちゃんに、このひとは今どれくらいの重さのものを背負ってるんだろうって苦しくなった初日をふと思い出した。

神戸の大千秋楽のあと書かれたブログを、今でもたまに読み返す。

つらかったことや悔しい思いを乗り越えて作られたこの作品は、ツイッターでの評判もよく、たくさんのひとを笑顔にしてくれた、と私は思っている。

そんな笑い声を聞いて、笑顔を見て、「よかった」と大樹っちゃんが思ってくれたことに、私も「よかった」と思った。頑張ってよかったとか、喜んでもらえてよかったとか、たぶんいろんな気持ちが詰まっているであろうこの一言に、なぜか私が救われてしまった。

いちばん先頭で苦労をした作品のカーテンコールで感謝の言葉を滔々と述べる姿に、誇らしい、と思わないはずがない。そういうところが好きだってあの日も思ったし、DVDで観たときも同じように思った。

どうか、大樹っちゃんにとっても懲悪バスターズが大切な作品であってほしい。

 

 

 

DVDを観終わって、やっと、終わった、と思った。

去年のネバー×ヒーローの東京千秋楽から始まった私の懲悪バスターズは、やっときちんと、心のなかに嵌ってくれた。パズルの最後のピースを埋めたみたいな気分だった。

終わるって、無くなるとか置いてくとかそういうことではなくて、これから先いっしょに生きていく覚悟を決めることでもあるんだなぁって思った。その場にとどまるんじゃなくて、歩いていく。

私はたぶん、一生、懲悪バスターズという作品を心のなかに嵌めながら進んでいくんだと思う。

誰がなんと言ってもこの作品は面白くて、かっこよくて、かわいくて、やさしくて、あったかくて、刺激的で、ポップで、元気をくれる、とびっきりの最高傑作だ!

懲悪バスターズに出会えてよかった。出会わせてくれてありがとう。

大好きです、ずっと。