ミクロワールド ファンタジア/革命の時が来た

WBB vol.12「ミクロワールド ファンタジア」

期間:7月26日~8月1日(東京)、8月4日~8月6日(大阪)

劇場:紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA、グランフロント大阪 ナレッジシアター

あらすじ(公式サイトより):

男が目を覚ますと、そこはミクロの世界。
虫と話せるファンタジックワールドだった――!?

ツキに見放された一人の男が、ある日、地上1センチメートルの世界へ!
多くの危険が待ち受けるなか、彼は自分と同じサイズの働きアリと遭遇する。
これは夢か現実か…。
戸惑いながらも男は"ミッション”を遂行すべく、アリをはじめとした昆虫たちと
交流を深めていく。
だがその世界には、絶体絶命のピンチが迫っていた…。

笑いとアクション満載で送る、ミュージカル風ファンタジック・コメディー!

 

 さて。

 今年もやってきたWBB side-Bの季節。WBBの主宰のひとり(弟)である推しこと佐野大樹さんは演出を務めています!

 「ミュージカル風」と銘打っていた今回ですが、観てみると想像の300倍ミュージカルでした。オープニングからクライマックスまでがっつり歌うし、踊るし、そこにアクションや笑いの要素もてんこ盛りで詰められていて、満足度がものすごく高い作品です。

 私は「○○らしい」という言い方があんまり好きじゃないんですけど、この作品を観ていると、「ああ大樹っちゃんらしい舞台だなあ」と感じます。とにかくシンプルに楽しくて、キャスト全員に見せ場があってきらきら輝くよう工夫を凝らしてあって、色とりどりの照明と派手な音楽とステージぜんぶを使うアクション、エネルギッシュで、明日への活力になる舞台。

 あとでまた触れますが、今回は豪華なキャストが揃っていて、たくさんのひとたちに注目されていました。WBBという名前を初めて知るひとも多かったと思います。でも、いろいろなものをぜんぶ吹き飛ばす、そういうパワーのあるお芝居でした。

 初日は楽しすぎて、オープニングから泣いてしまった。回数を重ねるごとにみんな本当に楽しそうになってて、クールなビリーが隣にいるアレックスと顔を見合わせていたり、ギルバードがきらきらの笑顔を振りまいていたり。ひとりひとりの名前を呼ぶ紹介ソングにもなっていて、初っ端からそれぞれの個性を掴めるので物語にすっと入りやすいです。真ん中で紹介されてる虫の周りでそれぞれ呆れてたりガッツポーズしてたり盛り上げてるのがかわいい。あと「幻でもない」のときに腰を回すフレッドがめちゃめちゃ色っぽいです。オープニングの時点で最高ということがわかる!!!

 

 

 

■勇者の条件

 まずはアレックス! ジャニーズJr.の松田元太くんが演じていたのですが、ダンスの上手さはもちろん、台詞や歌に感情を乗せるのがとても上手で、熱量の高いお芝居をする方だなあと思いました。特にソロナンバーはパワーに圧倒されて毎回ぼろぼろ泣いてしまう。頭を抱える振りが好き。心を動かす力のあるひとだ。

 勇者を夢見る働きアリのアレックスは、冒頭で「俺は勇者になりたいんだ。いや、俺は勇者なんだと思う!」と高らかに宣言している時点ではまだ「勇者」をただの夢として描いていたんじゃないかなと思います。勇気も力もあったけどスパイダーに立ち向かって殺された兄への憧れ、コンプレックス、そういうものがアレックスを勇者への道に駆り立てて、でもそれって「俺"も"勇者になりたい、ならなくちゃいけない」っていう、本当にお兄さんありきの感情だったんじゃないかなあ。村長たちが藤崎さんを勇者なんじゃないかって囃したてたときは、そういう、義務感とはまた違うけど強迫観念みたいな、「その位置は俺がならなくちゃいけないのに!」って感情が強かった気がする。この時点でアレックスは誰のためでもなく自分のためだけに勇者になろうとしてるから、まだまだ本当の意味での「勇者」ではないんだよな。

 そのあと、「戦いたい」「強くなりたい」ってフレッドに心情を吐露するシーン、切実さがどんどん増していってこっちまで苦しくなってしまう。自分の武器がなんなのかわからなくて、どうしたらいいか迷って、でも気持ちだけは強くてそればかり先行してしまって。実際は違うんだけどスパイダーに怯えて体が動かなくなってしまったと思い込んでるから、スパイダーが去っていったあとスコップを抱きしめながら悔しそうに震えてる様子もつらかったな・・・村長に声をかけられてもその手を振り払って、ぼたぼた落ちる汗が涙みたいに見えた。そのあとのソロナンバーでも葛藤の様子が描かれてるけど、ダンスアンサンブルのふたりが表す迷いや弱さを振り切って「弱い自分にケリつけて」進もうとするアレックスは、このとき初めて本気で勇者になる覚悟を決めたのかなあと思った。

 ソロナンバーの直後でビリーに師事して剣の稽古をつけてもらうことになるけど、このときビリーが言ってた「お前は大したやつだ」っていうのはアレックスの剣の才能だけじゃなくて、あの圧倒的絶望の象徴であるサミュエルに向かってこうとする勇気への賞賛が強かったのかな。ビリーは剣の道を極めた天才で、自分でもその実力をわかっているのにサミュエルに従うしかなくて、「お前は剣を振り回すしか能がない」なんて言われても引き下がるしかなくて。そういう悔しさとか、剣士としてのプライドとか、ぜんぶをアレックスに託したんだろうなあ。「俺よりも剣の才能はずっとある。だから・・・!」って声をあげるところ、なんて続けたかったんだろう。と考えたけど、言葉にできない感情があったから飲み込んだんだよね。

 ここで、じゃあなんで圧倒的に強くてアレックスの師匠でもあるビリーが勇者になれなかったのかってことを考えたいのだけど。それはひとえに、勇者っていうのはヒーローと同義だからだと思う。勇気のあるひと、何か偉大な業績を残したひと。勇者って、現状を変えようと行動を起こすひと(この場合は虫?)のことなんじゃないのかなあ。この物語で、いつだって立ち向かう先頭は勇者のふたりだ。サミュエルにいちばん初めの条件を出されたとき、アレックスだけが戦おうとした、終わらせようとした。アジトに乗り込むときは、親友のフレッドを自分のせいで攫われて諦めようとしたアレックスの手を藤崎さんが引っ張った。ビリーも立ち上がることができたけど、それは「勇者」に感化されたからなんだよね。

 村長の予言どおり勇者になったふたりの共通点は、「ひとりでいようとしていたこと」「弱さを受け入れたこと」「それによって周りに影響を及ぼしたこと」なんだと思う。アレックスは群れの中に隠れて平凡という殻に閉じこもる自分を知っていて、それが嫌だから「俺は群れるのが嫌いなんだよ!」って言ってたのかなと思うんだけど、最後、「俺の武器は仲間との絆だ」って言えるようになった瞬間にきちんと勇者になれた気がする。サミュエルを追い払うことに成功したときは「俺だけの力じゃない」って思っていたからきっと自信がなくて、村長やフレッドに持ち上げられても曖昧な返事しかできなくて、それはこの時点でまだ「ひとりで立ち向かわなくちゃだめだ、兄さんみたいに」って思い込んでたからなんじゃないのかなー。その姿勢が虫たちの意識を変えたんだけど。

 藤崎さんは最初スコットさんに「世のため人のために働いてきたんだよ」って言ってることから自分が孤立しているなんて知らなかった、というか知ろうとしてなかったけど、店のスタッフに「迷惑なんだよ」って言われたことでハッとして、でもそのあとサミュエルを倒しに行く理由を「誰か」には求めなかった。誰かのため、っていうのは藤崎さんにとってはただの綺麗事になってしまうんだよな。でもあそこで自分が悔しいからって理由でアレックスを焚きつけた藤崎さんは、それができた藤崎さんは、やっぱりあの世界の勇者なんだろうなあ。

 アレックスは「自分のため」だった勇者になる夢を「誰かのため」に叶えることができて、藤崎さんは「誰かのため」に生きてるつもりだったけど「自分のため」にサミュエルに立ち向かう決心をして。そういう、違う角度からそれぞれの足りない意識を埋めるために、この世界には勇者がふたり必要だったんじゃないかなあ。

 アレックスと藤崎さんのふたりで踊るシーン、心臓に手をドンッと当てて始まったり、背中合わせに見える振りがあったり、かと思えば向き合って目と目を合わせたり、すれ違ったり、引き寄せたり、関係性がここでやっと完成する感じがしてよかったなあ。藤崎さんに腕を掴まれたアレックスがハッとした顔をするのが好き。このふたりが主演というか物語の中心のはずなんだけど、いっしょに行動している場面はあんまり多くなくて、むしろ作品の両端を担ってるというか。働きアリなのに勇者を目指してスパイダーにも向かっていこうとするアレックスと、人間なのにミクロの世界に迷い込んだ藤崎さんはどちらも「異質」で、別に気が合うわけでもないし反発することの方が多いんだけど、みんなと違うからこそできること、みんなと違っていないとできないことがあって、それはふたりの距離が近すぎないから発揮できたのかなあと思う。

 

 

■虫たち雑感

◎フレッド!!

 とにかくスタイルがいい。アリのスタイルじゃなくない?という気持ちと、いやむしろアリのすらっとした感じにハマってるのか?という気持ち。手足が長いのでダンスもきれい。

 「よいしょっよいしょっ」の低音が好き。アレックスとぶつかっちゃってあわあわするアリらしさが好き。「いえーーーい!」ってわざとらしく言いながらギルバードと村長の会話に割り込んでくるのも好き。村長たちが藤崎さんを勇者なんじゃないかって話してるときにアレックスを気にして焦った笑顔を貼り付けてるところと、アレックスの兄がサミュエルに殺されたって知ったとき俯いてぶるぶる震えてるところ、フレッドのやさしさが滲んでるなあと思う。

 アレックスを庇ってサミュエルに脇腹を攻撃されるところからのソロパート、いつも泣いてしまう。フレッドは賢いし柔軟だから、藤崎さんのことも仕事の効率アップに繋がるとわかったらすぐ受け入れるし、「役割」をわかってるから働きアリとしての自分の生き方を疑ってもいなかった。でも、なんでもかんでも現実として処理するんじゃなくて、友達のために動けるし、藤崎さんのおかげで自由を求めるっていう感覚を知ることができたんだよなあ。

 そういえば、アレックスが「戦いたい」ってこぼすシーンで「そんなことしたらお前の命が・・・!」って言葉を切るところ、最初は目の前の友達を弱いって言ってるみたいで傷つけちゃうんじゃないかっていう配慮なのかなと思っていたんだけど、だんだん、その熱に気圧されて声を続けられなくなったのかなーと感想が変わってきた。実際はどうかわからないけど。

 最後、しょんぼり蹲ってるのはやっぱり女王様に振られてしまったんでしょうか・・・。フレッド、絶対にモテるから、やさしいメスアリと結婚してほしいよ。ていうか告白するとかじゃなくてまずプロポーズって発想に至るところが昆虫だなってカルチャーショックを受けました。

 

◎ギルバード!!

 顔がはちゃめちゃにきれいだなあと思っていたらダンスも歌も抜群に上手くて本当に目を剥いた。脚が長い。「こう見えて俺、働くの嫌いなんです~」ってドヤ顔して、村長に叩かれてもドヤ顔を戻すその度胸がほんとうに好きです。ギルバードが笑顔で何か言うたびにきらきらと星がこぼれるようだなあと毎回思います。

 お芝居がとても細かくて、後ろのほうや端でプンプンしてたりニコニコしてたりびっくりしてたり悲しそうにしてたり、表情豊かで素直な印象を受けました。特に、村長が自分が生贄になるって宣言したとき、おなかの前の中途半端な位置で手を結んだり開いたりして、俯いて、そわそわ落ち着きなく、でも顔をぎゅっとして「村長~!」って追いかけていくのが、ギルバードの心根のやさしさを表している気がして好きです。

 最終対決、サミュエルが下手通路に降りて歌ってるときに藤崎さんといっしょに深呼吸してにこにこ笑顔で頷いてるのが可愛い。最後の最後までサミュエルにひとりだけ攻撃しないのも潔くていいよね・・・。昇天シーンのポーズのキメ方もきれいだし、虫っぽくガニ股で階段上がるし、燕尾服の裾をひらひら舞わせながら捌けたりジャンプしたりするし、そういう細部への気の遣い方がすごいなあと思います。

 あと、Mr.マネーにツッコミ褒められて「そうですか?」ってちょっと練習する単純さも可愛いし、「それ寿司屋ー♪」の言い方めっちゃ好きだし、エアバイオリンがきれいすぎるし、最後の暗転間際で隣にいる村長の肩に手回したりして拒否られてもチャレンジし続けるめげないところが愛おしいです。基本的にへなちょこだし役に立つことは少ないんだけどダンスのキレとう歌の上手さが尋常じゃないので毎度びびる。エアバイオリンで弾き語り(?)してほしい。山﨑さん、役のある舞台は2作目と聞いてびっくりしてしまった、スキルも高いし、肝の据わった方なんだなあ・・・。客席降りのシーンも夜中12時までネタ考えてるの愛おしすぎます。

 

◎村長!!

 博識で、真面目で、ちょっとトボけたところもあるけど、誰より村のことを想ってて昆虫であることにも誇りを持ってる村長だからこそ、村民から慕われるんだろうなあ。ギルバードが町内会費の食料を5ヶ月分延滞しててもなんだかんだ許しちゃう懐の深さすごいよね・・・甘い・・・。あとこれは作品とは関係ないんだけど、いっしょに観劇した友達が終演後に開口一番「荒木健太郎、顔が良すぎない・・・?」って真顔で聞いてきたのが面白かったです。わかる。

 Mr.マネーにショートコントを見せるシーン、芸人スイッチ入れるとスッと顔まで変わるのが面白い。「ショートコント、大衆食堂~」の言い方が好き。「美味しそうでグー」はネタ自体はぜんぜん面白くないんだけどあの劇場内の空気と間の取り方が絶妙すぎて笑ってしまう。耐え切れない。あの場面、ほんと村長心臓強いな・・・って思います。言い方といえば、オープニングソロパートの「どんな危機さえも」の「さえも」の歌い方がめっちゃ好きです。

 サミュエルを追い払う1回目、アレックスじゃなくて村長がセンターに立って「これがミクロワールドの奇跡」って歌うのが好き。虫たちの中心は村長なんだなって思う。てんとう虫っていう大きくて強いわけじゃない昆虫だけど、へっぴり腰になりながらもサミュエルに「ここは昆虫たちの村だぞ、スパイダーが何の用だ!」って立ち向かったり、村長、ほんとうにかっこいい虫なんだよね・・・。あとギルバードへのツッコミのキレがいい。

 最終対決でサミュエルに首根っこ(?)掴まれてバタバタしてるときの動きがめちゃめちゃ虫なのすごい。そのあとスポーンと甲羅(って言うんですか?)が脱げちゃうのもメタ要素に笑ってしまうし、付け直すときにギュギュッと効果音がはいるのも好き。間の取り方といい立ち振る舞いといい、安心安定のあらけんさん。また佐野兄弟といろいろやってほしいな~! カテコのみんなで踊るところで大樹っちゃんと顔見合わせてるのかわいすぎます!!!

 

◎Mr.マネー!!

 圧倒的胡散臭さと風貌からにじみ出る成金感が大好き。Mr.マネーが盛蕎麦のモンブランの後ろからぴょーいと出てきてエアギターかき鳴らすところ、毎回テンション上がる。ギルバードと仲良し(?)なのは楽器をエアーで弾くところにシンパシーを感じるからなんですかね。「みんなはわしをMr.マネ~~~!!と呼んどるがの」ってやるところ、ちょいちょい変えてくるの面白い。東京楽では「マネ~~~!!」のところで耳に手当てて小声で名乗ってたから、いつか観客全員で「マネ~~~!!!」って叫びたい。無理。ここ、戸惑った客席の雰囲気に藤崎さんたちも笑っちゃってて最高だったな・・・。

 マチコちゃんと電話してるときの息の荒さも毎回爆笑してしまうし、藤崎さんに「気持ち悪い虫だな!」ってツッコまれるのも好き。日替わり昇天シーンもきちんと変えててすごいなあ。東京楽でギルバードに「お前も死ね!」って声かけていっしょにWBBのロゴマークのポーズしたの面白すぎた。天才?? 小野さん大好き!

 最後、藤崎さんが冥界に行ってしまうシーンで舞台の端っこの方に座り込んでタバコを床にくるくる押し付けたりしてるのがかわいかった。Mr.マネーは村の住人ではないんだけど、いっしょに命を賭けてサミュエルと戦ってくれたり(自分も恨みがあるみたいだけど)藤崎さんを説得したりと、情深い虫なのかな。なんだかんだMr.マネーもこのまま村に住みそうな感じする。マチコちゃんにも失恋したし。ギルバードといっしょに町内会費の食料を滞納して村長に叩かれてほしい。

 

◎サミュエル閣下!!

 強い!!!!!!! WBBのミュージカル風が想像を越えてミュージカルになっていたのはサミュエル、というか岡さんの力によるところが大きかったと思います。岡さんが歌いだした瞬間にサザンシアターが帝国劇場になってびびった。声量も声の伸びも段違い。すごい。紫!金!黒!っていうわかりやすい悪役の衣装もとても様になっていてかっこよかったです。胸板の厚さに見惚れてしまった。マントが翻るたびに惹きつけられて、あの圧倒的強そうなオーラがあったからこそ、虫たちとの見た目でのパワーバランスが取れて、最終対決の感動を生むのだろうなあと思いました。

 ダンスアンサンブルのおふたりはサミュエルの足を表現していたんだと思うんだけど、最初登場したときに3人が重なって腕をうねうねさせるところ、ほんとうに蜘蛛みたいに見えたなあ。あれも振り付けのひとつなんだろうか。「無理ではないだろう!」のところで絡まっちゃうのも好き。ぐちゃぐちゃってなってサミュエルが厳しい顔でふたりを見るの微笑ましかった・・・WBBの悪役はチャーミングさがあるので愛しくなります。閣下のためにピエールエルメのケーキ買ってきたいでしょ。

 この繋がりでちょっとサミュエルから脱線してダンスアンサンブルのおふたりについて触れたい。冥界の使い(ってことでいいんだろうか)、スパイダー、蟻とさまざまな役を演じて踊って舞台上に華や色を与えてくれていて、ほんとうにこの舞台において欠かせないポジションだなあと回を重ねるたびに思いました。北川さんは冥界の使いのときはやさしく笑っていたりスパイダーのときはにやにや口角を釣り上げていたりと表情豊かで、中林さんは逆に真顔でいる時間が多くてそれがミステリアスさを際立たせていたように思いました。単純にダンスが上手すぎてびっくりしてしまった、何度か「!?」ってなって釘付けになるシーンもあった・・・スパイダーのときの衣装がかっこいいです。ランニングマンのあとはそれぞれビリーやギルバードと絡んでるのもかわいい。

 サミュエルといえば蜘蛛の糸を張り巡らせる場面が印象的です。ゴム(なのかな?)にブラックライトを当てて不気味に、きれいに演出されたあの空間、ひとつでも掛けるところや巻く方向、ジャンプの位置を間違えれば解けないであろう糸の中を虫たちが駆け回るのが単純にすごいと思う。サミュエルとアレックスの歌での掛け合いも大好き。技術的にはもちろん岡さんの方が上なんだけど、それに必死に食らいついて熱で押し通す元太くんの歌声が、役同士の力関係も表してるように聴こえる。「ケリをつけてやる」でふたりの歌声がぶつかるのもアツい。

 最終対決では、それまでのサミュエルがひとりだけ群を抜いて強そうだっただけに虫たちが力を合わせてじわじわ追い詰めていく様子が見てとれて、団結の大切さっていうこの物語の主軸がわかりやすかったなあと思う。それまで自信満々に胸張って立ってたサミュエルが、虫に囲まれて小さくなってくように見えるのがすごい。虫たちひとりひとりが強そうに見えるわけじゃなくて、重なるパワーで勝ってる感じ。そばアレルギーを利用したりはしたけど! 全員が一太刀ずつ浴びせていって最後にアレックスと藤崎さんが剣を突き刺すシーンの盛り上がり、いつもどきどきしてしまう。それぞれの虫に合わせて黄色とか赤とかオレンジとか緑の照明が差し込まれてくのもカラフルで大好きです。照明といえば、舞台の真ん中で誰かがキメるときに白い光がバシッと入るのを観たとき、あー大樹っちゃんの演出観てるなあって思う。なんでだろう、特徴的ってわけじゃないとは思うんだけど・・・漫画の大ゴマみたいな、わかりやすいかっこよさがあって好きです。

 あと、サミュエル関係ないけど、アレックスソロがこの最終対決のときには「弱い自分にケリつけて」から「弱い自分を受け入れて」に、「立ち向かえ この孤独を武器に」から「立ち向かえ この絆を武器に」に変わっているというツイートを見かけて確認してみたらほんとうにそうなってて震えました。歌詞考えたひとと演出家さんが天才です・・・・。

 

◎ビリー・ザ・ワイルド!! 

  殿堂入りの推し(スコットさん)を除いたらいちばん好きです・・・・・・・。オープニングはきらっきらの笑顔で踊って隣にいるアレックスと顔を見合わせたりしてるのに、自分のターンになるとクールにキメるのずるすぎる。全体的にクールなキャラクターなんだけど、ずっと澄ましてるわけじゃなくて煽ったり得意げにしたりする笑みが抜群にかっこいい。原嶋くんのお芝居を観たのは2回目だったんですけど、その表現力の高さにびっくりしました。視線の流し方ひとつ、剣の構え方ひとつ取っても洗練されている・・・。童謡の「ぶんぶんぶん」をかっこよくリミックスしたみたいな曲でマイケル・ジャクソンばりのパフォーマンスを見せるビリー、最高に輝いてました。

 蜂っぽい動きとしてあのジャンプが挙げられると思うのですが、両足を思いっきり曲げてジャンプしてから捌けていくのめちゃめちゃ好きでした。戦ってるときも跳びながら剣で突いたり蹴ったり、あの体の伸縮する感じなんなんですか・・・小柄だからか腕や足をびょんっと伸ばしたときの爆発力がすごい。あと剣の稽古をつける前の試験のときが顕著なんだけど、アレックスと並んでるときは身長がおんなじくらいでコンビ感がかわいい。横にフレッドがいると尚更。「離せよ~~!」「やだよ~~!」って剣を引っ張り合ってるのかわいかったなあ。

 先にも触れているけど、ビリーはぜんぶ知ってるんだと思う。自分が最強剣士だってことも、それなのに仲間や家族のためにサミュエルに逆らえないことも、だからって倒そうなんて思えないことも。自分が勇者になれないことを知ってるから、アレックスに託す。「わかるだろ?」ってやさしい声で言うのが切ない。ビリーのオープニングの紹介、「剣の道を極めし天才肌」だけど、天才肌って、天才かと思うような優れた技術を持つひと、天才のように見えるひとのことであって、「天才」ではないんだよね。天才ではないけどそれに近い剣の技術を持ってるビリーは、アレックスの自分にはない天賦の才能を見抜くんだよなあ・・・。きっと何年もかけて培ってきたビリーの剣のノウハウを一夜で自分のものにしてしまうアレックスはやっぱり天才なんだと思う。もちろんそういう単純な戦闘能力だけで勝ったわけじゃないんだけど。

 行動を起こせなくて、プライドをずたずたにされて、サミュエルの登場シーンでも忌々しそうな顔をしていたビリーが、アレックスを動けなくしていた蜘蛛の糸を断ち切る間際にぎゅっとくちびるを噛み締めるのが苦しかった。あのシーン、アレックスを物理的に縛る糸だけじゃなくて、自分を縛りつけるしがらみとかサミュエルの恐怖とか、そういういろんなものもビリーが自分の手で絶った瞬間なんじゃないかなあ。そのあとに「責任取ってあいつを倒せ」って剣を構えるのも、「俺ももう怯えたりしない」ってアレックスにまっすぐな目を向けるのも、最終対決で「後ろがお留守だぜ」って颯爽と現れるのも、ぜんぶ痺れるほどにかっこいい!

 サミュエルへの恐怖と自分への葛藤で苦しい立場にいるビリー、たびたび手のひらをぼうっと見つめるんだけど、「本当の勇気とは自分の弱さを受け入れること」っていう藤崎さんの歌で出てくるときは悔しそうな顔をしているのに、最後、藤崎さんが冥界から虫たちに語りかける場面では同じしぐさをしながらやわらかく笑っていて、ああ乗り越えられたんだって思った。こういう繊細な表情をふわっと届けてくれる原嶋くん、すごいなあ。

 そんなメッチャかっこよくて最高なビリーなんだけど、アレックスに先生って呼ばれたら嬉しくなっちゃったり、剣を簡単に取られたら「まーーだ!!」って駄々をこねたり、最初のバトルで花を見つけて嬉しそうに笑ってから顔突っ込んで蜜吸ってその口を胸元のひらひらで拭ったり、メッチャカワイイとこもいっっっぱいあって!!!もうビリー・ザ・ワイルドの虜です!!!カーテンコールで胸の前で両手を組み合わせて満面の笑みで「ありがとうございましたっ☆」ってする原嶋元久さんずるい~~~!!!!

 

 

■冥界案内人・スコットの存在

 やっと推しの役の話です。この時点で1万字超えてるの気が狂ってる。

 スコットさんって、天使なんでしょうか。真っ白の衣装、銀色の髪、大きな羽根、見た目だけで判断すれば天使なのだと思います。私もゲネプロの画像が上がってきたときは「天使だーーー!!!」と騒ぎました。私の頭がおかしくなったのでもなんでもなく、推しの背に天使の羽根が見えました。でも、作中では一度も天使なんて言われてないんですよね。藤崎さんは「天使みたいなやつ」って表現していたけど、あくまでスコットさんは冥界案内人なわけで。閻魔様は出てくるけど、神様は出てこない。輪廻というワードが出てくるから仏教思想がベースにあるのかなと思うけど、そうなると天使の存在って説明できないんですよね。

 これはただの深読みなのですが。藤崎さんが取り組むことになる天国行きを賭けたチャレンジは、失敗すれば永遠に冥界と地上の狭間を彷徨うことになります。それも、閻魔様にこき使われながら。ということは、もし、スコットさんがチャレンジに失敗した元人間だったら? かつて死んで、藤崎さんと同じようにグレーな判定でチャレンジすることになり、失敗(リタイア)してあの狭間の世界でもうずうっと案内人を勤めているのだとしたら・・・。なんてことを考えていたら、東京公演後半で狭間の世界での仕事内容を聞かれたスコットさんが「24時間書類整理をしたり、釜茹での刑の準備をしたり、舌引っ抜きの刑の補助をしたり~! あれが辛いんですよ」と、この太文字部分を付け足してきて、え!?スコットさんそれ体験したことあるんですか!?とひとりでザワッとなりました。藤崎さんが冥界行きをキャンセルしたことについて「認められるかなあ・・・」と言ってるってことはスコットさんより上の立場に誰かいるということで、それが神様である確証はどこにもないんですよね。天使の格好しながら上司が閻魔様だとしたら、なんとなく皮肉だなと思うんですけど。色とりどりの衣装を着る虫たちの中で、藤崎さんとスコットさんだけが白い衣装で浮いているのも気になるのですが、それは単に世界観を分けたかっただけかなあ。

 最初はスコットさんって生前に徳のポイントつまりTポイントを貯めまくって輪廻から解脱した天界に住まう存在なのかなあと思っていたのですが、そうだとすると冥界案内人なんて仕事任されるのかな、と疑問でもあって。でも上記のようにスコットさんが閻魔様の下で働いた経験があるとしたら、それは辻褄が合わないんですよね。あれ辛そうなんですよね、だったら、案内人としてチャレンジ失敗した人たちの末路を見て言ったのかなとも思うのですが。もし本当に元人間だとしたら、これから先永遠に自分はあの場に留まって生まれ変わりを見ていく立場にあるのだとしたら、めちゃめちゃつらいなあって思います。どんな気持ちで「世界の素晴らしさを知れば生まれ変わることができます」なんて言うのかな。延々と考えていても答えは出ないですね。

 スコットさんが何者かは置いておいて、藤崎さんに情が芽生えたりしたのかな~とそこも読めなくて頭を悩ませてます。最初、藤崎さんが死ぬ場面を見てるスコットさんはそれをただの仕事だと思っているから真意の見えない笑顔を浮かべているし、衝撃音とともに容赦なく台帳をバシンと閉じる。このとき目だけ笑みを消す日があったり、「あーあ」って軽く笑ってる日があったりして最高です。でも、そのあと、ジャッジタイムで「ま、少し見直しましたけどね」って言う一瞬だけは、ほんのちょっと、案内人としてじゃなくてスコットさんとしての顔が覗いてる気がするんだよなあ。藤崎さんが店のスタッフに「迷惑なんだよ」ってキレられて「自分のためにしか生きてねーもん」って諦めたみたいに笑うところ、スコットさんは茶化すでも同情するでもなく、「そうなんですか?」っておだやかに聞くんだよね。ここの声がすごく好きなんだけど、滲んでる感情をどう捉えたらいいのかわからない。そうじゃないでしょう、と言ってるようにも聞こえるし、ただ事実を確認してるだけのようにも聞こえる。やり手の案内人だから公私混同せずにきっちり自分のお仕事を全うしている気もするけど、多少なりとも、スコットさんにも変化があったのかな、どうかなあ。

 さて、数え切れないほどあるスコットさんの好きなところの話をします。まず冒頭、図鑑と世界の説明をしながらゆっくり一回転して羽根を見せてくれるの可愛いし、ストーリーテラーとして物語を進めるときにギルバードやアリコンビが出てくると大きく開いた口を手で隠してそそくさと引っ込んでいくのが可愛いし、歌おうとして止められちゃうのもやっぱり可愛いし、藤崎さんに「当たり強くないですか?」って聞くとき一瞬だけ弟の顔に戻るところも可愛いし、切り株に腰掛けて足組んで「何かっこつけてるんだか」って藤崎さんをからかうスコットさんはこの世のものとは思えないくらいかっこよくて毎回脳みそが沸騰します。あとドラムロールめっちゃ上手い。毎回感動する。ちゃんと太鼓叩いてる手振りするところまで含めて最高。

 これは余談なのですが、藤崎さんに「そんなんだからモテねーんだよ!」って罵倒されるスコットさん、「はああ!?モテるとかモテないとか関係ないでしょお!?」のあとに「というか私少しはモテますから!!」って続けた日はその話をもっと詳しく教えてほしかったし、「そんな目ひん剥いててモテるわけねーだろ」って言われて「そこがいいって言うひともいるんですー!!」って返した日は立ち上がってそうだそうだ!!!!!!!って加勢したかった。そこがいいんだぞ!!!!!!!!!

 

 

■奇跡と革命の話

 「革命の時が来た」

 この記事のサブタイトルにもしているのですが、こう歌うアレックスが大好きでたまりません。今まで力のない自分たちから目を背け、群れの中で身を隠し、弱い存在として従属していた虫たちの、革命の時。高らかに歌われるこのフレーズに、物語のもっと奥、バックグラウンドのことまで考えて、初日も千秋楽もぼろぼろ泣いてしまいました。この先、あんまり作品には関係のない話です。

 私がいちばん最初に好きになったタレントさんは嵐の二宮和也くんで、「東のニノ担」として松倉海斗くんのことをふわっと知っていました。松田元太くんのことは、あのニノ担の子のシンメだ、という認識でした。あとは松島聡くんと3人でユニットを組んでいること。それくらいの知識だったので、今回、WBBに出演が決まってから、少しずつ情報を集めてみました。

 ジャニーズJr.を応援したことのない私でも、ユニットに所属しておらず、SHOCKにオーディションを勝ち抜いて大抜擢された18歳の男の子が、外部舞台で、大役で、あんなに堂々と全身にスポットライトを浴びて歌って踊ってお芝居をすることがどんなにすごいか、そして、どんなに彼自身に力があるかってわかります。このままじゃダメなんだ、と呟いてソロダンスを踊りだした初日、あまりのパワーに圧倒されて、気づいたら涙が止まりませんでした。私はファンでもなんでもないのに、目の前で繰り広げられるパフォーマンスに、そこから伝わる熱に心を動かされていて、この子はそういう力のあるひとなんだなあと思いました。その場を用意して、力を最大限に引き出して輝かせているのが私の応援しているひとなんだと思ったら、また涙が出てきて困りました。

 ミクロワールドファンタジアは、夢でも幻でもなく、確かな積み重ねと、カンパニー全体の団結力に支えられた、奇跡みたいな舞台です。私はその内情なんてなにも知らないけど、舞台上からあふれるエネルギーに、革命を見ました。

 元太くんだけでなく、北園くんにとっても、山﨑さんにとっても、原嶋くんにとっても、あらけんさんにとっても、小野さんにとっても、岡さんにとっても、北川さんにとっても、中林さんにとっても、もちろんWBBにとっても、どうかどうか、大きな意味のある、次に繋がる、大切な作品になっていたらいいなと思います。

 今回、まさかのミュージカル(風)だったり、はじめて瑞樹さん以外のジャニーズの方が出演することになったり、それに伴ってチケットとかDVDとかいろんなことが今までと変わって、いろんな意見があって、戸惑うこともあったけれど、舞台を観たらぜんぶ吹っ飛びました。そういう作品でした。あの1時間40分は、何があっても楽しい気持ちでいっぱいになれる。私が生きるのは過酷なリアルワールドだけど、それと地続きの場所で、あんなにもきらきらと広がる世界があって、地上1センチメートルで彼らも生きていて、それは救いでした。

 WBBには、大樹っちゃんには、どうかこれからも、革命のひとでいてほしいと思っています。変わらないでとも、変わってほしいとも願っていないけど、ただ、やりたいことをやってほしい。新しいものに挑戦することを諦めないでほしい。私が観たいのはそういう革命の先に起こる奇跡です。

 

 東京千秋楽でカーテンコールに並ぶ大樹っちゃんを観ていて、そのやさしく笑う顔を見て、ああいいなあって思って。私は大樹っちゃんのお芝居を好きになったから、全身にライトを受けて衣装を着て台詞を喋ってほかの誰かになって舞台上を生きる姿がいちばんかっこいいし、その場所が似合うとも思ってるんだけど、そこにいなくても、舞台のいちばん端っこでも、もしいつか裏側に回ることになっても、いいのかもしれないなあって初めて、すとーんと、自然に思えるようになりました。

 大樹っちゃんは私の世界一好きな役者さんだけど、世界一好きな演出家でもあって、世界一好きなひとでもあって。世界一好きなひとには世界一幸せになってほしいし、やりたいことがあるならそれをぜんぶ叶えてほしくて、自分のために生きてほしいなあって願ってます。それを、ちゃんと心の底から応援したいです。

 この作品が、大樹っちゃんの演出家としての確かな実績になりますように。選択肢を増やす礎になりますように。誠実で、まっすぐで、真面目で、やさしくて、熱くて、楽しいものを作ることに貪欲で、そのために限界さえ越えて頑張ってくれる、本当にすごいひとなので、ひとりでも多くのひとにその魅力が伝わっていきますように。

 

 

 

 最終的にミクロワールドの感想とは少し外れてしまったんですが、ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたらありがとうございます。

 過酷な現実で懸命に闘う虫たちと、人間と、案内人さんの、めくるめくファンタジーのお話です。全世界のひとに観てほしいのですがいかんせんチケットがないのが口惜しいです・・・! WBB次回公演にぜひ!(どさくさ)

 

 引き続き、大阪公演も大成功しますように!!