日々是好日

死ぬまでハッピー!

川崎ガリバー once again/未来はこんなにも明るい

 

WBB vol.17「川崎ガリバー once again」

期間:2020年9月25日~10月4日

劇場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

あらすじ(公式サイトWBB/WATER BIG BROTHERSより):

とある研究室。今まさにタイムマシン装置が完成しようとしている。
父の逝去により大企業のトップに就任した川崎明は、
「簡単に金儲けが出来る!」と有頂天!
開発者、向井公平の制止もお構いなしに、早速タイムスリップを試みる。

無事に成功!!と、安堵したのも束の間。
2人が辿り着いたのは、なんと江戸時代だった!

一儲けを企む若社長。その暴走を監視する科学者。
幕府転覆を目論む浪人。徳川に忠誠を誓う忍。
様々な思惑が絡み合い、2人は刻まれた歴史と対峙することにー
時の奔流に飲み込まれた未来からの珍客を待ち受ける運命とは!?

 

 さて。

 緩和してきたとはいえ、世間はまだコロナ禍の真っ只中で、そんな中、きっと相当の覚悟を持って開催されたWBBの17回目公演でした。

 アルコールでの手指消毒、足裏消毒、検温、各自でのチケットもぎり、フェイスシールド、マスク、離れたステージに一席ずつ空いた客席。ステイホームの先で私たちを待っていたのは、それまでとはまったく違う世界で、いつ公演中止になるのかもわからず、なんだか恐ろしくなったりもしました。

 だけど、幕が開いたら、そこにあったはいつものWBBのエンタメでした。

 明るくポップで華やかなオープニング、くすっと笑ってしまうセリフ回しと小気味良いテンポ感、知れば知るほど魅力的でもっと見ていたくなるキャラクターたち、笑って泣いて胸が熱くなってドキドキわくわくして、カーテンコールが終わるその最後の一瞬まで楽しくって他のことなんて忘れてしまうような、あの爽快感!

 忘れていました。これがエンタメの力なんだって、これがWBBなんだって。私の好きな、惹きつけられてやまない、佐野大樹さんの作る舞台。

 なんだかずっとぼんやり、もやもやして、薄暗かった気持ちを、思い切り晴らしてもらいました。目の前がひらけたような、そんな感覚でした。

 川崎ガリバー、超超超超超~~~楽しかった!!!!!そういう記事です!!!!!ネタバレしかありません!!!!!!!

 

 

■天才シンメ、爆誕

 もともとジャニヲタなので「シンメ」という概念に激烈弱いです。にのあい、ふまけん、剛健、かみしげ。シンメはいついかなる時も至高の関係性。

 WBB、特に今回のような大樹さんサイドでは「バディ」のような、男性コンビを主演に据えた作品が多いように感じます。例に漏れず川崎ガリバーでも、主役である川崎明とその幼馴染で天才科学者の向井公平がコンビとして大暴れします。

 横暴なアキラに振り回される向井は、一見、「わがままな幼馴染に一方的に振り回されているかわいそうなヤツ」なのだけれど、彼がアキラをとても高く評価し、信頼し、大切に想っていることが随所から伝わってくる。

 じゃあ傍若無人に向井を振り回すアキラはどうなのかと言うと、こちらもとんでもなく向井を大切に想っているのだ。

 1回目のタイムスリップから帰ってきて向井と川崎カンパニーが失われた未来にたどり着いたアキラは、「向井は、向井だけは助けなくちゃ」とそう言う。川崎カンパニーを世界一の企業にするんだと息巻いて、そのために向井の制止も振り切り続けた彼が、その会社のことよりも焦って必死になって取り戻そうとするのは向井なのだ。

 江戸時代の抗争に巻き込まれ、さんざん怖い思いをしてきてもお互いを守ろうと身を挺すアキラと向井が、「これを作れるのはアイツしかいねえ」と言い切るアキラと「自分を信じるんだ」と言い残す向井が、いつもの決めポーズで笑うラストシーン、あまりにも眩しすぎる。あの最後の黄色い照明、神なんだよなあ!!??

 アキラと向井の圧倒的な信頼関係とふたりだけの独特の空気感がとても好きです。向井がたびたびアキラを「川崎明」って呼称するの、推しをフルネームで呼んじゃう限界オタクみたいでめちゃくちゃ良い。

 そして、アキラ・向井コンビとはまた違う魅力を持つもうひとつのシンメ(?)がチュウヤとトキムラですよね・・・・・・・・・・・・。

 目に見えて揺れ動き、自分たちのしていることに本当に意味はあるのか・無用な殺生をしているのではないのかという迷いを隠しきれていないトキムラと、そういう彼を諌め目的に向かって邁進しているけれどそれが立ち行かなくなったときに真っ先に我を忘れて冷静さを欠いたチュウヤ、その対比が美しい。

 2回目のタイムスリップの最後でバーサークしたチュウヤの肩を掴んで止めようとするのがトキムラなの、あのふたりの関係性を表していて好きだなあ。

 剣の実力も頭の良さも持ち合わせていながら徳川の治世で虐げられてきた彼らの、彼らにしかわからないであろう苦しみを感じ取るたびに胸がぎゅっと詰まる。それはジュウゴやライチも同じだけれど。表情のひとつひとつが重たくて好きです。

 

 

■ひとりひとりのお話

・川崎明(山本亮太さん)

 舞台の真ん中がめちゃくちゃ似合うひと。にひ!って笑うあの快活さが好き。わがままで横暴で猪突猛進なアキラをまったく嫌味なく清々しく演じきれるのはやまりょくんの人柄所以だろうなあと思う。

 なんだかんだ、シークレットコードと相対的浮世絵に続いてやまりょくんを観るのは3作品目なのだけど、やっぱりお芝居うまいなあ。ころころと自然に表情が変わっていくし手とか身体を使った動きもナチュラルで、その役として生きていることに違和感を覚えない。アキラは絶対はまるだろうなあと思ってたけど、予想ななめ上でめちゃくちゃ良くてたまげた~~!最高!

 レッツ倒幕!モードのアキラも好きだけど、やっぱり終盤の必死に向井を取り戻そうとするアキラはぐっとくる。息遣いがマイクを通して伝わってきて、こっちも手に汗握ってその動向を見守ってしまうな。アキラは巧みな話術で人を納得させてしまうカリスマだけど、最後、チュウヤたちに向けた言葉に計算はひとつもなかったんだろうな。

 オープニングのダンスも最高だしカーテンコールはめちゃくちゃ愉快で最高!!ステージに居ることが楽しいんだろうなあって思えてこっちまでにこにこしちゃうよ~!!

 

・向井公平(神里優希さん)

 動きぜんぶ面白いしぱったり倒れたときのお顔が美しすぎて「彫刻か??」と毎回思う。アキラの言動に振り回され、倒幕を阻止しようとするけど空回って、その結果タイムパラドックスで存在ごと消えてしまって、めちゃくちゃかわいそうなのに「兄弟みたいにして育ったろ」ってアキラに笑う、この懐の深さがすごい2020受賞。

 向井は初演で大樹さんが演じていたからそのイメージが強かったのだけど、神里くんの向井はぜんぜん違っててめちゃくちゃ新鮮に楽しかった! アキラを見つめる、諦めみたいなアルカイックスマイルがクセになる。。

 基本的におだやかでアキラを生ぬるく見守ってるけど歴史のことになると熱くなったり飛び跳ねたりするギャップとか、アキラに命の危機があれば守りの薄い門を教えてあげちゃったりとか、言われた通りにちゃんと催涙スプレーでアキラを守ったりとか、「向井・・・ッッ!!!!」ってなるシーンめちゃくちゃある。

 カーテンコールだとやまりょくんと仲良しっぽくてにっこりしてしまうね。今回の向井もちょ~好き!

 

・チュウヤ(松井勇歩さん)

 個人的MVPです!!!!!!!!!!!!!!!!!

 め~~~~~~ちゃくちゃよかった最高!まず初日に殺陣がめっちゃくちゃウマ!!となって、その次に表情のお芝居ハチャメチャに良!!!!になった。

 そもそもチュウヤという役自体がかっこよくて観客全員好きになってしまうやろ案件なのですが、彼の中で共存する潔さと執念のバランスみたいなものが松井くんによって裏打ちされて素晴らしい塩梅で表現されているなあと思いました。剣や槍だけでなく、視線でも相手を斬り殺せそうなあの眼光の鋭さが好きです。

 チュウヤは倒幕組のリーダーで、仲間を諌めたり奮い立たせたりするのですが、その反面、並々ならぬ想いでそこに立っていて足もとがぐらついている状態なのだということがセリフや彼の苛立ちから見えてたびたび苦しくなった。先述したけれど、2回目のタイムスリップの終盤で仲間に止められても振り切って力任せに槍を振るう姿がとんでもなく切なくて、胃がねじ切れるかと思った。

 1回目2回目のタイムスリップでのチュウヤを見ているからこそ、3回目の最後で清々しく笑みさえ携えながら連れられていく姿にグッとくるものがあるんだなあ。最後の名乗りがとてもとても好きです。影として生き、影として死ぬ、そういう覚悟をあの場で改めて見せられてしまった。

 本編中ももちろんかっこよくて最高なのですが、ダブルカーテンコールのチュウヤ、好きすぎて客席で毎回ビッグバン起こしてる。倒幕組がみんな手を振っているなか、ひとりだけ腕を組んで、ステージに残るアキラと向井に背を向ける間際だけほんの少し笑う、そんなんずるいだろが~~~!!!!!!2日目は「イイネ」してる回があって心の中で爆沸きしましたが~~~~!?!?!?

 松井くんの演じる他の役も観てみたいなあと思いました!またWBBにも出てほし~!!

 

・トキムラ(根本正勝さん)

 リアルに8等身で目を剥きました。根本さんのお芝居を拝見するのははじめてではないのですが、その身のこなしとか声の清涼さに改めて惚れ惚れしてしまった。やっぱり殺陣がめちゃくちゃきれいだなあ。かっこいいというより美しくて、流麗。でも荒々しさもあって、「やさしすぎる武士」がこんなにも似合うひと他にいないと思う。

 トキムラは、敵にも情けをかけてしまうほど情に厚くてやさしい。徳川への恨みやすべてを奪われた哀しみで幕府転覆を図っているのだろうけど、実際は他人の命を奪うなんてしたくないんだろうな。やさしくてかなしい人だ。忠義心が人一倍強いところは武士らしいと感じるけど、つらそうに刀を振るう姿は武士に向いていないのだろうなと思ってしまう。

 そんなトキムラが、チュウヤを逃がすため、本懐を遂げるために敵兵をバサバサ斬っていくあのシーン、めちゃくちゃ好きなんだよなあ。単純に殺陣がきれいでかっこいいっていうのもあるんだけど、苦しそうな声で「すまんな」と言ってから全員を斬るの、もの悲しくて何回も思い出す。刀を鞘に収める瞬間、ゆびさきまで美しい。やっぱり、切なそうなひとって美しいんだよなあ。

 ダブルカーテンコールは見よう見まねでジッと見つめた手のひらを控えめにふりふりするのが可愛らしすぎて100点満点中100000000点です。

 

・ジュウゴ(川本成さん)

 天才なんだわ!!!!!!!!! 成さんが出てくるシーンぜんぶ面白い。ちょっとした動き、おどけ方、セリフのお茶目さとか、ジュウゴの持つ軽やかな明るさは成さんにしか表現できないよなあと思う。初演でも成さんが演じていたし、あてがきなのか???

 刀でゆびさきを切って「血が出ちゃった><」ってするジュウゴちょ~かわいいんだけど、弟のライチがピンチになったら躊躇いなく彼を庇って刺されるところがかっこよくてつらい。トキムラとかチュウヤみたいに腕が立つわけではないのかもしれないけど、男気があって仲間想いで、ジュウゴの存在にみんな助けられているのだろうな。

 ジュウゴじゃなくてサンジュウゴの話になってしまうけど、彼が登場すると絶対笑ってしまうんだよね。あのステップなんなんだ??天才なのか??部下の手にお手したりにゃーんってしたりぶっ叩いたりするの面白すぎて耐えられん。

 大樹さんのファンをしていると必然的に成さんを観る機会も多い気がするのだけど、トークもお芝居も、すごく緻密で面白くてフラットなところがとても好きです。また大樹さんと話しているところも見られたらいいなあ、トークイベントやってほしい~~!

 

・ライチ(水野ライアンビンセントさん)

 天使なんか??????? ライチのあのおっとりした、やさしいけど芯の強い感じがクリアに表れててすてきだった。声めちゃくちゃかわいい。

 アキラが着替えてるシーン、「川崎殿っ、なにしてるんですか・・・敵城内ですよ・・・川崎殿、敵城内ですよ!!」ってアドリブに慣れてない感じがにこにこしてしまう。あのシーン、自分の独壇場にするんじゃなくてあくまで台本上の言葉だけをきちんとつなぎ合わせてるんだろうなって感じられるのが甘酸っぱい気持ちになる。なんなんだろう、そわそわしてホワホワする。

 ライチの正体は終盤にわかるわけだけど(初演を知っているから最初からわかっているのだけど)、どんな気持ちで「チュウヤ殿」って呼んでるのかなあとふと考える。影武者がいる人の気持ちなんてきっといくら考えてもわからないのだろうけど、歯がゆかったりするのかな。

 彼が「未来は明るいのだと」って言うときに晴れやかに笑うのがとても好きです。

 

ハンゾウ佐野大樹さん)

 ハンゾウ様が宇宙でいちばんかっこいいよ~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!

 思わずデカ文字にしてしまった。ハンゾウ様はアキラたちから見れば敵方でありラスボスポジションなのですが、クールでヒールで恐ろしくて情け容赦などなく強い御方で、でも実のところおちゃめで可愛くて間抜けな部分もあって愛すべきひとなんですよね宇宙一かっこいいです(オタク特有の早口)。

 初回登場シーンから話してしまうのですが、チュウヤを気にかけたふりをしてやさしく話しかけた直後の「で」の声の低さでまず500000点なんですよね・・・・・・あっこの人めちゃくちゃ強いな、っていうのを一言、むしろ一音で表現できるところ、天才?天才なんですが・・・・・・。ハンゾウ様ってチュウヤの顔知ってたのかな、それとも堀の深さを測っている不審な人物ということでこいつがそうだろうと予想したのかな。

 ハンゾウ様は剣の腕も立つし指揮力もあってすごい人なのだけど、ことごとく決め台詞を邪魔されたりと不憫なところもあるのが魅力的。冒頭から「戦いに勝つためなら部下も躊躇いなく斬り捨てる怖い部分」と「アキラに押されて負傷するかわいそうな部分」をどちらも繰り出してくる時点で、ハンゾウ様という人物の層の厚さが窺えてにっこりする。裃を着ているのは冒頭だけだけど、似合っていてすてきだ。和装めちゃくちゃ似合う。なんでも似合うが。

 前述の通りハンゾウ様は情けがなく徳川を守るためにすべて斬れる方なのだけど、倒幕組の江戸城侵入シーンではおちゃめな一面も垣間見える。お酒を飲みすぎてしまったり、よし酒やめようと決めるのに次のシーンではお酒を飲んじゃったり、かっこいいですねと言われて調子に乗ったり(かっこいいよ!!!!!!!!!!!!)、可愛いのエクストラコンボでオタクは全員死ぬ。ハンゾウ様の夢部下だから「内緒じゃぞ??」ってにこにこしながら言われて手招きされたいです。

 そんなおちゃめでラブリーなハンゾウ様、城内に侵入者が入ったと聞けばすぐに「数は?」と冷静に状況判断しようとするところがとても好き。人の上に立つ方なんだよなあとジンとする。残ったお酒飲んじゃうけど。あのシーンいつも笑ってしまう。

 2回目タイムスリップ終盤の殺陣はさあ、ハンゾウ様がかっこよすぎるのと倒幕組が切ないのとでめちゃくちゃ苦しいんだよね。圧倒的優勢で余裕のあるハンゾウ様がチュウヤたちを斬りつけるときにニヤリと笑ってたり、アキラの言葉にいらいらした顔をしてたり、ひとつの戦いの中で感情が動いているさまが見て取れるからすごくドキドキする。ハンゾウ様を中心にして倒幕組がゆらりゆらりと立ち上がるあのシーンの空気感が好きだし、円形にずばりと斬り回すのが時代劇!って感じで高揚する。強い役をやっている大樹さんが好きなんだなあ。

 そして、最後の最後、チュウヤの名乗りを聞いて「丸橋忠弥、最後まで楽しませてくれる」って去っていくハンゾウ様がとても好き。好きばかりだな。いまだ高揚していたり、静かに笑っていたり、その日によって言い方とかこちらの受け取り方が違っていて、ああこれが舞台だと思う。背すじに電流が走るみたいなあのわくわく、久々に思い出しました。佐野大樹さんのお芝居が好きです。

 

 

■未来は明るい

「私は信じます。未来は、明るいのだと」

 この台詞が終盤にやってくるこの作品を、このご時世に観ることができて、本当によかったなあと思います。大変なことはいっぱいあるしまだまだ危険が伴う世の中だけれど、未来は明るいんだって信じさせてくれる川崎ガリバーがとても好きです。

 もやもやした気持ちも、明日への不安も、一時かもしれないけれど思い切り吹き飛ばして前を向かせてくれる作品です。

 ひとりでも多くの人がこの作品に出会ってくれたらいいなあと、ファンとして、勝手ながら願っています。千秋楽は配信もあるので、劇場に来られない方もぜひ!!私もアーカイブ見たさにチケット買お~激エモオープニング100万回観ちゃお~って思ってます!!!!

 

l-tike.com

 

 こんなに面白い作品があるのだから、未来は明るい。私はそう信じています。

 どうか、どうかどうか、川崎ガリバーが千秋楽まで無事に冒険を続けていけますように!!!