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スペーストラベロイド 感想

WBB vol.11「スペーストラベロイド」

期間:12月3日~11日

劇場:赤坂RED/THEATER

あらすじ(公式サイトより):

時は2050年代の近未来。
いよいよ宇宙旅行の一般化が現実のものとなろうとしていた。
アンドロイドと行く宇宙旅行【スペーストラべロイド】
開業の一か月前、最終テスト飛行には乗組員四名と総責任者一名、
抽選で選ばれた新婚の夫婦とテレビ取材のクルー達が搭乗。
そのフライトには、見習い船長の昇格試験を始め、
宇宙旅行のPR、ハイジャックへの防犯訓練や故障時への対応訓練などが組み込まれていた。
だが、その詰め込み過ぎたミッションのせいでトラブルが発生。
それは徐々に大きなトラブルへと発展していく。
そしてとある乗組員のポケットには出発前のエンジン整備のときになぜか余ってしまったネジが入っていた・・・
時折ゆれる船体は訓練なのか故障なのか!?
嘘が嘘を呼び、勘違いが勘違いを呼ぶ宇宙船でのワンシチュエーションコメディ!!
彼らは無事に全行程を終え地球に帰ってこられるのか!? 

 

 

さて感想です。

いや火野さんかっこよすぎるだろうが~~~~~~!!!!

ごめんなさい!まずビジュアルの感想から入らせて!!推し演じる火野さんがまさかのツーブロで、ゲネプロ写真見てヒイイって声出しました!!!2016年も残り1ヶ月というところでいきなりワイルドさ出してくる推し、出来すぎじゃない??火野さんはツーブロで行きましょう!って言ったひと頼むから高級な蟹のしゃぶしゃぶとか食べてくれ~~~~~最高でしたありがとうございます~~~~~~~!!!!

毎度のことながら衣装も可愛かったです。ひとつも着崩してない玉地さんとは対照的にちょっとチャラい印象の八木沼は片方だけズボンの裾を折って太い銀のブレスレット嵌めてて、スクールカーストの高い男子って感じだった。火野さんは少し開けたツナギから覗くワイシャツが無地じゃないのがおしゃれだったし、足元は革靴だからきっとスーツ出勤してるんだろうなあって想像がふくらみました。かっこいいなあ。クルーの衣装がみんなオレンジのツナギだから、カーテンコールでWBBが並ぶと宇宙兄弟みたいだったな。

松金さんのスーツ姿も渋くてすてきでした。玉地さんの「スーツ姿めちゃめちゃイケてますね!」って完全に私たちの心の声だった、代弁してくれてた。細見大輔さんはどんだけかっこいい年のとり方をするんだ・・・随所にアドリブがんがん入れてくるから松金さんを観てるだけでもフフッて笑っちゃう。ああいう自分のポリシーの範囲内で自由に遊ぶ役、とてもハマるよなあ。

 

 

冒頭、宇宙船が発射する演出で始まるのがよかったなあ。音で客席が震えて、本当にいっしょに飛び立つみたいだった。場内アナウンスで「シートベルトをしっかり締め・・・」って言われるのも、開演前から楽しかった~!

暗転が明けて、わーわーと騒ぐクルー3人衆とそれを見る火野さんの温度差、それだけで関係性が窺えて面白かった。「ぼくが猟奇的な殺人犯だとして!」って言ってる八木沼たちへの火野さんの視線の向け方が好きでした。何やってんだ、みたいな呆れ顔。この最初のワンシーンだけで関係性とかそれぞれの大体の性格がわかって、お話に入りやすかった気がする。

この冒頭といえば、火野さんの「でも玉地さん。船長になってその先何があります?」だよね。最初はなにを言い出すんだ・・・と思ったけど、2回目からは響き方が変わってくる。「この広大で神秘に満ちた宇宙を相手に、あなたはただの運転手でしかない。でしょ? そんなの宇宙である意味がない。僕は開発者でありたいですね」っていう台詞、船長昇格試験を迎える玉地さん相手にキツすぎでは?と思うんだけど、開発部を追い出されて自分の生み出した技術を奪われて宇宙船のクルーっていう役職を無理やり押しつけられたっていう火野さんのバックグラウンドを知ると悲しくなってくる。この台詞、自分にも向けてるんじゃないかな。

このあと、松金さんに絡まれて「船長だろうが何だろうが所詮はこの船の乗組員。僕からしてみれば何ら大差はありませんから」って刺々しく返すのも、自分のクルーっていう立場を心底嫌がってるからなんだよなあ。それでも仕事はきっちりこなすのが火野さんの真面目さだなあと思います。

 

この作品の肝といえば、超高性能アンドロイド「メイサ」を壊してしまった八木沼が友達を代役に立てたことを発端に、勘違いと嘘が飛び交う点。誰が誰をメイサだと思い込んでるのか、今は誰がどんな意図をもってこの行動をしているのか、それらがごちゃごちゃにならないのがすごいなって思う。一度に複数の事柄が動くのに混乱しなかった。

海野さんにメイサは「国籍がない」って勘違いされて「国際秘密警察なんです」って咄嗟に嘘をついた八木沼に「おい~~~嘘が過ぎるぞ~~~」ってもたれかかるメイサが可愛かったな。このコンビが可愛すぎて、まとめてアクリルキーホルダーにして物販で売ってほしかった。ラストシーンでもシンメトリーで腕組んでちょっとかっこいい感じに佇んでるのが笑ってしまったなあ。メイサ、確かに見た目はインパクト抜群なんだけど観てるうちにどんどん可愛く思えてきてしまって、あの舞台のマスコットキャラクターみたいだった。時折見せる哀愁漂う表情が好きだったな。八木沼はまくし立てるシーンが多いのにぜんぜん噛まないし間違えないのが単純にびっくりした。個人的に好きなのは日菜子にタブレットを勧めるときの「それはそれはもーー感動するんです!」の「もーー」の上がり具合です。

なんでも信じ込んじゃう海野さんって相当アホなんだけど、その頭のゆるさをふわふわっとした笑顔と身振り、喋り方で完璧に演じていた篠田諒くんハタチ、おそろしかったな。玉地さんをメイサだと勘違いしてたびたび話しかけるんだけど、反応を返されるとめちゃめちゃ嬉しそうに笑うのときめきが止まらなかった・・・かわいい・・・。

海野さんといえば、いっしょに行動してる天達さんがしっかりしててその対比もよかったなー。天達さんは冷静沈着だし基本的にツッコミだけど面白い番組作りのために真剣すぎて火野さんがハイジャックを起こしたことにも気づかない、それどころか「あなたなら指でもイケる!!」って拳銃を奪って指鉄砲を促しちゃう。宇宙への憧れを語る玉地さんをまぶしそうに笑ってたけど、この人も「好き」を仕事にしてるひとなんだなあって伝わってきた。最後のシーンでいちばん初めに「いやあこれがぜんぶ訓練だったなんて!」って言い出すのも天達さんだし、やさしいひとなんだよなあ。

天達さん然り、厳しい顔が多いのにシステムのことになると目を輝かす火野さん然り、自分の仕事に愛を持ってるひとが多いのがこの作品だなあと思う。そのなかでも、玉地さんはあの宇宙について語るシーンがやっぱり印象的だった。

宇宙飛行士になったきっかけを天達さんに聞かれて「だって、宇宙ってすごいじゃないですか!」って、ほんとうに少年みたいに目をきらきらさせて語りだす玉地さん、熱が凄まじくて毎回あてられてしまったなあ。好きとか憧れのパワーは強くて、目の当たりにするだけでびりびり心が震える。初回は気づいたら涙が出てきて、自分でもびっくりした。宇宙はどこまで研究を進めても掴めなくて、無限に続いていて、その圧倒的な「わからない」が魅力なんだろうなあ。未知に惹かれる気持ち、とてもわかる。大好きなシーンです。

 

シーン繋がりで、回替わりシーンの話をしておく。

Wサイドでアドリブシーンがあることにびっくりしたし、レッドシアターでの客席降りにもびっくりした。土田さんと黒子さんが頑張ってました。

面白いことをできれば加速、つまらなければ失速っていうシンプルなルールと、「面白いこと関係ないじゃん!!」ってガチで嫌そうな顔をする土田さん、土田さんの代わりに「大丈夫です!」って答えちゃう黒子の花塚くん、ノリノリの八木沼と天達さんと海野さんと日菜子と嘉月くん、そしてその様子を厳しい顔で静かに見ているメイサっていうシュールな空間が面白すぎた。

途中から土田さんと黒子さんがコントするようになったんだけど、そのクオリティが高くて毎回笑ってしまったなあ。観客もおそらくキャストさんもどきどきしてて、なんだか一体感のあるシーンだった。加速で終わるとやっぱり嬉しいんだよね。ガッツポーズして帰ってく土田さん、よかったなあ。失速しても面白くはあるんだけど。

2回目までは八木沼がお題を出すんだけど、3回目になると突然「あたしに任せな!!」って日菜子様が出てくるのほんと好きだった!!「しっかりしなよ男子!!」って啖呵切る日菜子様最高だった・・・かっこよすぎる・・・。

 

日菜子と嘉月くんのカップル、しんどいと可愛いの宝庫でした。

嘉月くんって本当に鬱陶しいし空気読めないしイライラするんだけど動きの面白さとチャーミングさで憎めないんだよね! 私のナンバーワン嘉月くんは「でもじゃなくて行ってきて!」って日菜子に言われた直後の「うん!!!」です。悩む素振りがマジの一瞬で、そこからのあの満面の笑みがうざかったなあ(褒めてる)。

日菜子のイライラが伝染して前半めちゃめちゃしんどいんだけど、凄まじいキレっぷりに清々しくもなる。可愛い見た目で全身つかって思い切りキレるし、でも言葉に生々しさがないからきちんと笑えるのが救われました。細かいエピソードがあったり嘉月くんが本物のクズだったらもっとしんどかったんだろうなあ。話がズレるけど、もし日菜子と嘉月くんを根本宗子さんが書いてたらぜったい観ながら心折れたと思う。

マリッジブルー爆発させてすれ違いまくってたふたりだけど、嘉月くんが日菜子を守るシーンはぐっときたなあ。火野さんは日菜子をメイサだと思い込んでるからすっごい顔してたけど(あの顔好きです)、あれは訓練じゃなくてハイジャックなんだって言われた嘉月くんがとてもやさしい声で「ね」って囁くのがずるかった。カッコ悪いけど、情けないけど、日菜子が大切で好きでしょうがないんだなあって伝わってきて、そりゃあ離れられないよねって思った。最後、日菜子から嘉月くんの手を握るのがすてきでした。

 

さて。火野さんの話をします。

火野さんは真面目で、堅物で、自分にも他人にも厳しくて、自分の技術に自信を持っていて、宇宙が大好きで、純粋でまっすぐなひとなんだと思います。

「これ犯罪だぞ、火野の人生が終わっちゃうんだぞ!」って玉地さんに言われて「僕の人生なんてもう終わってるんですよ」って答えてるように、火野さんにとって技術開発はすべてだったんだろうなあ。それを、技術だけじゃなくて研究の場まで奪われて、不本意な役職を押し付けられて、周りは能天気だったり船長になりたくて必死なクルーばかりで。悔しかっただろうな、ほんとうに。

復讐に燃えて、拳銃を宇宙船に持ち込んで、ハイジャックを起こして。まぁそれは防犯訓練だと思われて面白いことになっちゃうんだけど。ぴしっと背筋の伸びた印象の火野さんが「なんでそうなっちゃうのよー!」「見てないじゃああん!」って崩れてくのはだいぶ好きだったけど。意味わかんねえって顔で勢いに押されて指鉄砲構えるところとか可愛すぎたけど。

「僕はただ、この宇宙史に・・・宇宙開発の歴史に名前を残したかった。それだけでよかったんだ」って吐き出すみたいに言う切実な声が苦しくて、自分の人生はもう終わってるって笑うのが悲しくて、なんでこのひとは守られないんだろうって客席でずっと思ってた。玉地さんに「火野だって純粋に宇宙が好きだったはずだろ」って説得されて、お前なら宇宙の端にだって行けるよって希望をぶつけられて、顔をぐしゃぐしゃに歪めながらゆっくりと銃を握る右手を下ろしていく火野さんは、どんな気持ちだったんだろう。今までの技術を奪われたらこれからもっとすごい技術を作ればいいじゃねーかって玉地さんは結構めちゃくちゃなこと言ってるんだけど、それが綺麗事にならないのは心の底から生み出された言葉だからで、それを火野さんもわかってて、信じたいって少しは思ったんじゃないかな。でもここで火野さんがあっさり心変わりしないからこのお話は面白くて、私たちもしらけずに済むんだなって思います。

ハイジャックの最中で船が揺れて、「今のは確実にエンジントラブルだ、それも致命的なね!」って松金さんに向かって吠える火野さんがおしまいを受け入れてて、それがとてもつらかったな。エンジンを作った張本人だからって直すよう頼まれて、そりゃ火野さんも呆れるよね。だって自分の開発した技術ってだけじゃないんだよね、それは「奪われた技術」なんだよね。それにこんなかたちでまた触れろと言われるなんて、屈辱だよ。遠ざけて、許さなかったのはそっちだろって思うよ。「直すと思いますか」って言う火野さんが、ばかじゃないのかって顔で笑ってるのが、もう、ああここで笑うんだそういう表情を選ぶんだって心臓絞られそうになった。

さっき玉地さんに説得されてたときは泣きそうになってた目が、今度はまっすぐ松金さんを見つめて、「君も開発者ならこの条件は飲むべきだ。自分の技術にプライドを持て」って言葉を全身で受け止めるんだよなあ。一度は他人に奪われたものでも、そんな感情なんて殺して、自分の作ったものに不備が生じたなら直さなくちゃいけない。完璧に戻さなきゃいけない。それができるのは自分だけだから、自分の技術でひとを殺してはいけない。どこまでも残酷な正論を、松金さんは自分の命さえ条件に加えて「プライド」って言葉で火野さんの前に提示するんだよね。

軌道を大きく逸れた船体がスペースデブリにぶつかりそうだって話を八木沼から聞いて、選択を迫られた火野さんが、じっと宇宙を見つめる心の内側はわからないけど。会社の不正を証言するために回されたカメラを寸でのところで無理やり下ろして、「時間がないんです、後にしてください!」って叫んでそれから大きく息を吐く火野さんは、感情よりもプライドを取ったんだなあ。カメラを下ろす間際の、歩き出すその一瞬の、決意の表情が死ぬほどかっこよくて、苦しかった。奪われたものを取り返そうって必死で、ハイジャックを起こしても結局火野さんは誰からも何も奪わず、むしろみんなを守ったんだよなあ。でも、それでよかったんだろうな。火野さんの、一度終わってしまった技術開発者としての人生は、あのときまた始まったんだって思いたい。

きっと他のクルーを煙たがる、というか「お前らそれでいいのかよ」って思ってただろうに、エンジンを直して戻ってきて、「これは私個人がやったことで、ここのクルーには何も関係ありません」って頭を下げるのが火野さんの真摯さだよなあと思う。最後まで芯が通ってる。この人がこういう人だから、こんなに愛おしいんだろうな。火野さんはたぶん唯一、一人称が「僕」「俺」「私」って場面によってばらけてる役で、それが尚更感情の揺れを表してていいなって思った。そこに生きてるんだって思うからこそ、観客の心を引き寄せて離さない。

最後、月から地球が出てくる場面を見ながら、火野さんがおだやかな顔をしていて、ああよかった、ってシンプルにそう思ってしまった。火野さんの目に映る宇宙が、憧れたときとそのまま同じに、きれいなものでありますようにって願った。あのひと、幸せにならなきゃだめだよ、ほんとに。なんでここまで感情移入っていうか思い入れ強くなっちゃってるのか自分でもわけわからないけど。

火野さんが大好きでした。大好きです、これからも。

 

 

笑って、泣いて、また笑って、感情が忙しい宇宙旅行でした!

とても楽しい9日間だったなあ。やっぱりレッドシアターが好きだな、と再認識もしました。どこからでも観やすいし。こぢんまりしてて落ち着く。

年末(と言うにはまだ早いけど)にこんなにすてきな舞台に出会えて、幸せだった!またひとつ、推しのお芝居を好きになりました!最高!推しを火野さんにキャスティングしてくれたひとありがとうございます!五体投地

来年のWBBも楽しみです。回替わり特典で配られたカレンダーを眺めながら待とうと思います。